【メキシコで活躍する日本企業インタビュー】フジタ工業株式会社 メキシコ支店支店長 南口 聡

100年を超える歴史を誇る総合建設会社、株式会社フジタ
2004年にメキシコ支店を創設し、マツダ、日産自動車をはじめとする大手自動車関連企業の工場建設を主に手がけてきた。現在もトヨタ自動車の新工場を建設中だ。
ピーク時には支店創設時の10倍以上の売り上げを記録し急成長を遂げた、メキシコ支店の支店長、南口聡氏にお話を伺った。

現在のメキシコでの事業は、9割以上が日本から進出されている自動車産業関連の建設工事です。

メキシコでのフジタの沿革を教えてください。

当社は基本的にはODA(政府資金で行われる、開発途上国などに対する援助・協力。政府開発援助)の仕事を請け負うことで、中南米のマーケットを開拓してきました。
メキシコはODAの仕事がなかったため、進出したのは比較的最近のことです。中南米では今から56年前の1962年のペルー進出を皮切りに、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、ドミニカ共和国、エクアドルなどさまざまな国でODAなどの仕事を数多く手がけてきました。具体的な内容としては、病院、空港関係、学校、在外公館などの工事です。現在も在ペルー日本国大使館の工事を行っていますが、中南米のODAの仕事は以前に比べると減少しました。とはいえまだまだ政府関係の工事はありますので、継続してチャレンジしています。

メキシコにおいては、2004年に事務所を開設し、今は国内8ヵ所に拠点を設けています。ここメキシコシティーの事務所は法的な届出や会計経理の部門を置き、主要な拠点はアグアスカリエンテスとケレタロの2ヵ所です。
事業内容としては、9割以上が日本の自動車産業関連の建設工事です。

競合企業の入札が激しい自動車関連の工場建設で、フジタが信頼を勝ち取った秘訣を教えてください。

もともと当社は、自動車関連の建設を得意としているゼネコンです。もちろん自動車関連に限らず、物流倉庫や病院、ホテル、事業所などすべての建設に対応可能なのですが、とくに自動車関連事業は古くから力を入れており、実績があります。
社内にも営業・設計・工事・積算のすべての部門で自動車関連に特化した社員を集めた「グローバル自動車ユニット」という専門集団もございます。ここには全世界の自動車関連工場の実績、ノウハウなど、過去から積み上げてきた非常に数多くのデータを集約しており、それに基づいてお客様に技術を提供できるのが当社の強みです。その過去のデータは必ずしも成功した事例ばかりではなく、失敗事例もあり、工事が終わるごとにその過程で起こったことを登録するようにしています。そうすると、例えば自動車の樹脂を扱う工場の建設依頼を受けたとき、データベースを検索すればすぐに全世界の樹脂工場の事例を読み込むことができます。
過去の事例を生かした設計ができるということが、当社を選んでいただけた理由だと思っています。

メキシコで今まで手がけた代表的なプロジェクトを教えてください。

3大自動車一貫工場の建設プロジェクトです。サラマンカのマツダをはじめ、アグアスカリエンテスのCOMPAS(日産自動車とダイムラーの合併会社)、そして現在グアナファトでトヨタ自動車の工場を建設中です。

大きな組織の一貫工場を手がける際に苦労された点などをお聞かせください。

実はマツダのお仕事をいただいたのは2011年で、2010年まではまだメキシコに日本の自動車関連企業は多くは進出していませんでした。2011年にマツダが進出されてから、メキシコの日系自動車産業に勢いがついたような状況です。売上ベースでいきますと創設当初は20億円くらいだったものが、2011年以降ピーク時には300億円ほどまで一気に拡大しました。そのため2011年からは、技術者や、設計者、総務など日本から数多くの社員をメキシコに送り込みました。そういった意味では、2004年に事務所を設立したとはいえ、実質的に大きな事業が始まったのは2011年からです。
海外勤務も初めてで、メキシコの土地も言葉もわからない、どのように施工を進めていくかもわからない、という社員をたくさん日本から連れてきましたので、彼らを指導することに関しての苦労は多かったです。ただ、長年中南米で仕事をしてきた社員たちがそのような社員を支え、アドバイスをしてくれていたので、ノウハウを共有しながら2011年から急成長することができました。

メキシコでビジネスを展開するうえで苦労されたことはありますか。

私どもは日系のゼネコンとして、日本品質をお客様に提供する使命を全うしたいという思いがあり、それを実行するうえでさまざまな苦労がありました。具体的には、ローカルスタッフや資材の問題です。
ローカルスタッフにおいては、現場における日本の高い安全・品質管理に末端の作業員が戸惑いを見せることや、納期の問題もありました。メキシコの方は比較的のんびりしていますので、約束の日に完全に施工を終えてお引き渡ししたいという我々の思いに反して現地の作業員の意識がともなわないこともあり、完成予定の日に8割程度しか作業が終えられていなかったこともありました。
資材においては、日本製品のような優れたものが調達しづらいということが挙げられます。そのため、お客様の要望の高いものは日本から取り寄せるなどの工夫をしています。あらゆる困難がありましたが、中南米での長い経験を活かして乗り越え、今ではノウハウとして蓄積しています。

同社が建設したサラマンカにあるマツダの自動車一貫工場

これから当社が誇る日本クオリティーをメキシコの企業様にも提供していきます。

ご自身のことをお聞かせください。メキシコに赴任されて何年になりますか。

2011年以降、出張で度々メキシコを訪れておりましたが、駐在員となってからは約5年です。非常に楽しくやっています。
私はもともと広島出身で、入社してからも大半を広島で過ごしました。マツダの工場進出にともなって広島の企業もたくさんメキシコに進出されました。そして私は広島の企業のメキシコ進出が落ち着いた段階で駐在員になりました。

今後どのように事業を展開されていくか、展望を教えてください。

いままでは日系自動車メーカーの工場建設がメインの業務だったのですが、これからは自動車関連企業だけでなく幅広い業種の日系企業のメキシコ進出サポートを行っていきたいと考えています。
また、これまでは99%が日本の企業からのお仕事だったのですが、現在はメキシコ現地の企業やアメリカの企業からの仕事にもチャレンジしています。昨年よりトランプ政権の影響を受けていますが、静観していても仕方がないですから、これを機にメキシコで培った実績・ノウハウ・人材を生かして日本クオリティーをメキシコをはじめすべての国のお客様にも提供したいと思っています。

日本人社員の人数はこれからも同水準で推移していく予定ですか。

事業規模に合わせ、人員、体制は柔軟に変更していきます。
これだけ日系自動車企業が集約していますので、メキシコ進出を視野に入れている企業はたくさんいらっしゃいます。日本でも規模や費用、進出にあたってのエリアなどのご相談はたくさん受けています。

また、現在私どもはさまざまな企業からアメリカ進出のご相談も受けており、アメリカでどのようにサービスが提供できるかを模索している最中です。

最後に、これからメキシコに来られる方にメッセージをお願いいたします。

メキシコは距離的には日本から極めて遠い国ですが、それが故に日本企業にとって未開拓のビジネスチャンスが多く残され、可能性に溢れた国だと感じています。しかし、アジア諸国などと比較すると日本企業を受け入れるためのプラットフォームがまだまだ不足しているというのが現状です。
この状況を改善して、より多くのメキシコに進出される企業のお役に立ちたいという思いから、私どもは建設事業以外の分野においてもさまざまな活動を行っています。

ケレタロでは大浴場を備えた日本人向けのホテルと長期滞在型のサービスアパートメントの複合施設の開発、サンミゲル・デ・アジェンデの近郊では工業団地の開発を行っています。さらに、メキシコにおいて貴重かつ高価である水のリサイクルや排水処理に特化した専門会社も運営しています。

メキシコは、今後も益々成長を遂げていく国であると確信しています。“情熱の国”メキシコで、ともに夢を実現していこうではありませんか。

フジタ工業株式会社 Fujita Corporation 
メキシコ支店支店長 Mexico Branch Manager
南口聡 SATOSHI NANKO

1963年広島県生まれ。1986年フジタ工業株式会社入社。2005年に広島支店建築部長に、2011年に広島支店副支店長に、2014年メキシコに赴任し、2015年よりメキシコ支店支店長を務める。
※2018年5月インタビュー時点

Interview:Hisashi Abe
Photo:Cristian Salvatierra