【スポーツの秋!スペシャルインタビュー】 理学療法士 / 小崎裕也先生

スポーツの秋到来!
アウトドアアクティビティが気持ちのよい季節がやってきました。気温の低下に伴い、身体が温まりにくいこの時期は、なにかと体調不良を起こしたり身体を痛めてしまいがちです。そこで今回は FuncPhysio Physical Therapyの小崎裕也先生に、理学療法による怪我の防止や痛みの治療についてお話を伺ってみました。

理学療法士:小崎裕也 Hiroya Kosaki, PT, DPT, PN1, CSCS, CKTP

プロフィール
2018年に日本の理学療法学校卒業後、2年間クリニックで臨床経験を積んだ後、より質の高い理学療法士を目指すため、2020年にジョージア州のエモリー大学にて理学療法博士課程(Doctor of Physical Therapy) プログラムに入学。より幅広い知識を得るために、栄養、ストレングスコンディショニング、キネシオテーピングの資格をアメリカ在学中に取得。2023年5月に卒業、理学療法免許取得後、FuncPhysio Physical Therapy に入職。

自身のサッカーの経験を活かし、運動時の身体の動かし方、けが防止などのアドバイスを得意としている。また、整形外科、スポーツ分野に興味があり、徒手療法や運動療法のクラスを受講し、多方面からのアプローチに取り組んでいる。


ー フィジカルセラピー(理学療法)は整体、カイロとは違うのですか?整体との違いや施術内容、効果、目的など、具体的に教えてください。

整体、マッサージ、カイロは全て硬いところを柔らかくすることや、左右非対称をもとに戻すことを目的としています。一方理学療法士は、運動のスペシャリストと言われています。理学療法の治療の目的は歩くこと、走ること、仕事をする、腕を挙げる、などの動作を痛みなく、適切な動きでおこなえるように手助けすることです。その痛みを取る過程で、柔軟性を獲得するために整体やマッサージと似た手技を行うことがあるので、みなさん混同されるのだと思います。動作を分析してどこが原因で痛みが出ているのかを探り、必要に応じて徒手療法、運動療法、動作練習を行うのが理学療法士の強みです。

ー 自身の経歴について教えてください。

私はもともと学生時代サッカーをしていて(今もしていますが)、サッカーになんらかの形で関わりたいと思い、ケガで悩む選手の手助けをしたかったので、理学療法士を選びました。日本で埼玉医科大学理学療法学科を2018年に卒業し、その後2年間大学病院付属の外来クリニックで勤務していました。働きながら英語の勉強や大学院出願などをおこない、2020年春にアトランタのEmory University D P T(Doctor of Physical Therapy) programに入学しました。試験や臨床実習を経て、国家試験にも合格し、今年の5月にプログラムを卒業しました。もともと留学を考えていたときから相談に乗っていただいていた、クリニックのオーナーの高田先生にお誘いをいただき、今年の6月からFuncPhysio Physical Therapyで働かせていただいております。

ー 渡米のきっかけを教えてください。

留学準備の決心をしたのは大学4年生の春でした。学生の立場で実習をしたり、ラクロス部のトレーナーをしたりしていた時に、自分の理学療法士としての未熟さに気づき、このままではいけないと思いました。また、より多くの患者さんの痛みを軽減できる、レベルの高い理学療法士になるためには、普通に就職して他の人と同じ道を進んではいけないと思いました。そこで、もっと勉強できる環境がないかと悩んでいました。自分で調べたり、大学の教授に相談したりした結果、よりレベルの高い勉強ができて、自分の知らないことがたくさん眠っていそうなアメリカ大学院という道を選びました。英語は当初は全くできなかったので、一から勉強して、そこから合格通知が来るまで3年間かかり、なんとかここまで辿り着きました。

ー 日本とアメリカでは理学療法士の違いはあるのですか?

日本では4年制大学の学士(または専門学校)、アメリカでは約3年制大学院のドクターと、学位に違いがあります。実際に私は両方経験しましたが、アメリカ大学院のプログラムは日本より学ぶ量が多く、また実習期間が約8ヶ月と長いので、非常に忙しい3年間でした。

法律に関しては、日本は必ず医師の下で働かなければいけないのに対して、アメリカではdirect accessといって患者さんが医師を介さず理学療法士の治療を受けることができます。そのため、アメリカの理学療法士には診断するための知識が必要で、自分で治療可能なのか、またはレントゲンで骨折の確認が必要かなど、日本では医師が行う初期の対応を理学療法士がやる必要があります。

治療内容に関して、アメリカではどちらかというと運動療法がメインの理学療法になることが多いです。これはエビデンスが運動療法で確立されているのと、一度に複数の患者さんを見ることがあるので、一般のクリニックでは運動療法が多くなりがちです。一方日本では、徒手療法が盛んで、痛みの原因を理学療法士の手で治療していくことが多いのではないかと思います。その点、FuncPhysioでは、マンツーマンでしっかり時間を取れるので、その人に応じて徒手療法と運動療法を組み合わせることができます。

ー フィジカルセラピー(理学療法)はどんな人におすすめですか?

理学療法士は運動のスペシャリストなので、痛みがある人にも、ない人にも、効率の良い運動、痛みの出にくい運動をできるように治療することができます。そのため、身体のどこかに痛みのある方はもちろんですが、疲れやすい、またスポーツのパフォーマンスを上げたい、という人にも、理学療法は有益だと考えています。

私が理学療法を提供したい人について
クリニックで働いていれば、痛みがあって困っている人が自分の足で来てくれます。しかし、実際には、クリニックの理学療法士には見えないところで、痛みがありながらも我慢して働いていたり、スポーツをしていたりする人がいます。私は、そういう自分から一歩踏み出せない方達に対して、理学療法士の方からクリニックから飛び出して交流をしていくことが大事だと考えています。セミナーを開いたり、実際にスポーツ現場に行ったりすることで、困っている人がクリニックに行くことなくセラピストに直接相談できるようになります。このような環境を作れれば、より多くの人が理学療法を身近に感じ、利用することができるようになると思います。

ー 施術の頻度はどのくらいが一般的ですか?またはおすすめの頻度を教えてください。

一般的には患者さんや予約の都合上、週1回が多いですが、手術後は週3回必要な人もいますし、メンテナンスやアドバイス目的で来る人は月1回の場合もあります。一つ重要な要因をあげるなら、患者さんが自分でエクササイズができるかどうかです。セッションで向上した柔軟性や筋力を維持するために、セラピストはいくつか患者さんご自身で行うエクササイズを宿題として出すことが多いです。エクササイズが苦手で不安のある方や、クリニックに来た方がしっかり運動ができるという方は、週2回きてアドバイスを受けながら、というのも必要になるかもしれません。

ー 今後の展望や目標などありましたら教えてください。

夢は日本のプロサッカーチームの理学療法士になることです。いつかチャンスがあれば、地元で、自分自身ファンでもある浦和レッズで働きたいと考えています。しかし、そのゴールを達成するまでに、私自身理学療法士としての腕を上げなければなりません。日本で働いていた時と比べると、何倍も成長しましたが、まだまだ納得していません。ここからさらに勉強して、経験を積んで、大きくなって日本に帰って立派な理学療法士として活躍したいと考えています。

痛みを見るときに大切なこと、また理学療法士の重要性
痛みが出ているからといって、その部位が原因になっているとは限りません。肘の痛みが首や肩甲骨の動きの悪さが原因の可能性もありますし、首の痛みが片脚のバランスが悪いことで起きている場合もあります。痛みの原因を探るためには、全身の動きをみて判断、治療していく必要があります。仮に痛みのある部位のみの治療で良くなったとしても、根本原因を絶たなければ、数ヶ月後にまた痛みが再発してしまうかもしれません。また、そのような評価は、自分自身でおこなうのはなかなか難しいと思います。ささいな痛みや違和感でも、理学療法士の治療を受けることで、長期的な健康維持につなげることができます。痛みの根本原因を見つけるためには、身体の専門家に診てもらうことが必要だと思います。

小崎裕也
Hiroya Kosaki, PT, DPT, PN1, CSCS, CKTP
FuncPhysio Physical Therapy
◎ミッドタウン
2 W. 45th St, Suite 1600, New York, NY 10036
Tel (917) 388-2031
◎ウエストチェスター
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Tel (917) 388-2031
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【取材構成】
編集部 花越美雪