【ニューヨークの治安】結局、「自分の身は、自分で守るしかない」

ー 再び悪くなったニューヨークの治安

コロナ禍以降、再び悪くなった治安が、一向に改善されないニューヨーク。

今年1月には、アジア系女性、ミシェル・ゴーさんがホームレス男性に線路に突き落とされ、侵入してきた電車にはねられ死亡する事件がタイムズスクエアで起り、その翌月には、ホームレス男性がアジア人女性の後をつけ、チャイナタウンの自宅に押し入り、40箇所以上を刺して殺した事件は、ニューヨーク市民を震撼させました。

先週末には、アッパーウエストサイドのレストラン街や、セントラルパーク南にあるプラザホテル前など、これまで安全とされていたエリアで、ランダムに背後から殴られる事件が起こりました。メディアが報道で世間を煽っているのではなく、実際、ニューヨーク在住歴29年目の私が、1993年に移住して以来初めて、いまのニューヨークはマジでヤバい!と治安悪化を身近に感じています。

ー 自分の身に起きた、命の危険を感じた出来事

昨年秋ごろの話ですが、グランドセントラル駅前のバス停でバスを待っていたところ、叫びながら鉄の重いゴミ箱を道路に放りなげるホームレスに追いかけられたり、ユニオンスクエアの駅構内で、黒人男性とすれ違いざまに、すごい形相で中指を立てられ、ひっぱくジェスチャーをされたり、極めつけは、ナイフを持った男が後部車両に乗車している地下鉄に乗り合わせてしまった時のことです。私が乗っていた車掌がいる真ん中の車両に、大勢の乗客が後ろの車両から逃げ込んできて、ガラガラだった車両が一気に満員になり、ナイフの男と窒息死のダブル恐怖に襲われました。命の危険を感じたのは、9.11アメリカ同時多発テロ事件以来、と言っても過言ではないくらい、ホントに死ぬかと思った怖い体験でした。

今年に入ってからも、なにか叫んでるホームレスらしき人が地下鉄に乗車してきたり、地下鉄内や駅の構内でタバコやマリファナを吸っている怪しい人がいたり、とにかく地下鉄の居心地が悪く、最近は地下鉄利用を極力避け、バスを頻繁に使うようになりました。

ー 治安悪化の要因は、コロナ禍前からあった

ニューヨークの治安を再び悪化させた要因は様々です。
新型コロナや人種差別問題による社会的不安、ホームレスの増加だけでなく、警察予算削減、職務質問法「ストップ・アンド・フリスク」の是非による職務質問件数の減少、NY州の保釈関連法の見直し、と新型コロナ以前の問題も大きく関わっています。そこに加え、新型コロナワクチン接種を義務とされているNYPDのワクチン摂取率は極めて低く、ワクチン接種を拒否した警官が現場を外されたことによる、まさかの警察力の弱体化が起こり、状況を悪くさせています。

ニューヨーク州知事とニューヨーク市長は、地下鉄に寝泊まりするホームレスを排除する「地下鉄安全計画」を発表し対策に乗り出していますが、犯罪者の多くは、施設に収容すべき精神疾患者や、複数回の犯罪歴がある者、と必ずしもホームレスとは限らず、地下鉄の安全対策はとても複雑で時間がかかるとされています。警官を増員しパトロールを強化するとも発表されてますが、外出時に警官をひとりも見ない日も何度もあります。しかし、何か起これば、すぐに警官が対応してくれるのがニューヨークです。

ー 「自分の身は、自分で守る」しかない

気をつけていても、いまやどこで何が起こるかわからないご時世。警察が未然に防いでくれることを期待することよりも、常に危険と隣り合わせで暮らしていることを自覚し、「自分の身は、自分で守る」しかありません。護身用にペッパースプレーを携帯したり、何か変だと感じたら、すぐに逃げて安全を確保してください。被害にあったら、すぐに911に通報してください。

ちなみに、いま需要が高まっている護身用ペッパースプレーですが、ニューヨーク州では持ち歩くことは許されていますが、New Yorkの自宅の住所にメールオーダーで届けることは違法となり、Amazonなどのオンラインショップでは注文ができませんのでご注意ください。

 

ー おすすめ防犯アプリ

自分の身を守るため、防犯グッズを携帯するほか、GPS機能を使い、ユーザーの身近で起こっている、強盗、窃盗、傷害事件、デモ活動、火事や交通事故を、リアルタイムで知らせてくれる防犯アプリ 「Citizen(シチズン)」もおすすめです。ユーザーが動画や実況中継をアップロードすることもでき、ニューヨーク市の今どこで何が起こっているのかを、すばやく確認することができます。実際、パトカーの音がうるさいので同アプリを開いてみたら、白昼堂々、ショットガンを持つ男が、オフィスからすぐの国連前をうろついている動画がアップされていて、事件をいち早く知ることができました。


Citizenアプリ

治安が悪化したからといって、過剰に怖がり、行動範囲を制限してしまうのはよくありません。ニューヨーク州もニューヨーク市も、再び安全に外出できるニューヨークにするため、安全対策に本気で取り組んでいます。でも最終的に「自分の身は、自分で守る」しかありません。正確な情報を入手し、安全対策を行い、犯罪に屈せず、これまでと変わらないニューヨーク生活を送りましょう。

【執筆】

編集部
花越 美雪