【メキシコで活躍する日本企業インタビュー】SHONAN MEXICO S.A. DE C.V. President 石田 宏行

Gregorio Ruiz Velasco 206 B Cd. Industrial, 20290, Aguascalientes, Ags

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2000 年、杏林大学社会学部卒業。2001 年、湘南造機株 式会社入社、横浜営業所に配属。2015 年、湘南造機初の 海外子会社設立のためメキシコに赴任。2016 年より現職。 現場を理解するため、普通・大型・けん引・大特免許、床上 運転式(天井)クレーン免許、フォークリフト、小型移動式ク レーン、玉掛、溶接など、さまざまな免許を取得。

 

湘南造機、初の海外子会社 設立4年目で社員数が約10倍に

高い技術力で自動車製造設備の設計、製造、修理を行う湘南メキシコ。2016 年アグアスカリエンテスに拠点を設立し、 2019 年 11 月にはケレタロ支店を開設。勢いよく成長を遂げる同社の石田宏行社長にその秘訣を聞いた。

─湘南メキシコの沿革を教えてくだ さい。

湘南メキシコは日本の親会社、湘南造機 (神奈川県横浜市)の完全子会社です。 2016 年に初の海外子会社として設立し、今 年 で 4 年 目。 当 初 は 社 員 4 名 で スター トしましたが、売り上げが順調に増え、現在は 37 名になりました。

─なぜ初の海外進出にメキシコを 選ばれたのですか。

こ れ ま で は 、人 材 、資 金 面 の 問 題 で 、海 外進出に対応できていませんでした。タイ、 インドネシア、中国、韓国などは、もう成熟 した市場ができ上がっているので、進出の タイミングを逃しているのが実情です。し かし、メキシコや南米はまだまだ進出の余 地がある。そこで特にお客様からの要望 が多かったメキシコに進出を決めました。

─アグアスカリエンテスを拠点に選 んだ理由とは。

我々は自動車産業設備に特化した事 業を行っており、日本では日産自動車の 工場メンテナンス、移設や据え付け工事 を主に行っています。日本の売り上げの 80% 以上は日産自動車の仕事。アグアス カリエンテスには日産自動車の工場があ りますので、その近くに拠点を置くことで 日本同様のサポートをしたいという思い からここを拠点に選びました。

─拠点設立後はすぐに軌道に乗り ましたか。

最初は会社の登記をしながら、業務の受注も行っていたのですが、初年度から 「これだけニーズがあるのか!」と、驚くほ ど で し た 。 ち ょ う ど 我 々 が 進 出 し た タ イ ミ ン グで、日産自動車とダイムラーの合弁工場が据え付け工事を行っていて、納期遅 れや、品質不良のトラブルに見舞われて いました。そこで我々に品質・進捗管理 を任せていただけたのも、早く軌道に乗 れた大きな要因です。 当初は日本で取引のある企業のメキシ コ法人から仕事をいただくことを想定し ていましたが、日本とメキシコでは互いに 別会社となるため一筋縄にはいきません でした。しかし、逆に日本では今まで関わ りのなかった企業への販路を新しく築くこ とで、事業拡大ができました。実際、現在 のクライアントは 99% が日系企業ですが、 親 会 社 と の 取 引 が あ っ た 会 社 は 5 % ほ ど 。 あとはすべてメキシコで新しく関係を築 いた日系企業です。メキシコで取引が始 まったことにより、日本でもその企業から 仕事をいただくなど、親会社にも利益をも たらすことができました。

─順調に事業を拡大されています が、成功のポイントとは。

弊社は日本の親会社で、一緒にものづ くりをしていた日系人や外国人社員をメ キシコに赴任させて、日本人社員とメキシ コ人社員の中間ポジションに置いていま す。具体的には日系ブラジル人、日系パ ラグアイ人などです。そうすることで、自 動車産業設備の専門用語も正確にメキ シコ人に伝わり、教育ができます。メキシ コでは通訳を頼んでも専門用語を知らな いことが非常に多いです。また、外国人 労働者は日本では責任あるポジションで 働けるチャンスが少なくても、メキシコに来 れば役職に就ける。そういったメリットを 説明して、私が口説いてメキシコに来ても らっています。この取り組みが非常にう まくいっています。 あとは、やはりコミュニケーションが重 要だと思います。日本人とメキシコ人がコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を き ち ん と 取 り 、一 丸 と な ることが大切です。私 1 人の力では成し遂げられません。私の側にいる3人、日本 人社員の代表、メキシコ人社員の代表、日 本人とメキシコ人の間に入る代表の、3 人とのチームワークが、この会社の成功 の 秘 訣 だ と 思 い ま す 。

─社内では何ヵ国語に対応してい ますか。

弊社は日本語、スペイン語、ポルトガル 語 、英 語 の 4 ヵ 国 語 に 対 応 し て い ま す 。 その 4 ヵ国語のなかではどのような組み 合わせでも通訳・翻訳が可能です。日 本語とスペイン語の通訳だけでなく、スペ イン語とポルトガル語の通訳もできるという の は 大 き な 強 み で す ね 。 社 員 は 1 人 3 ヵ 国語を話せる人が多いです。

─立ち上げから特に苦労したこと はありますか。

設立当初、社員は技術者 4 名のみで、 ローカル企業のなかに入って、企業を育 てながら仕事をするというコンセプトでし た。しかし、自社ではないためさまざまな 弊害があり、最も重要な「品質の維持」と「納期を守ること」ができないという壁に ぶつかりました。メキシコでは12月に工 場がメンテナンスのため休みに入るので すが、12月は我々にとって一番の繁忙期。 初年度の12月は本当に大変で、メキシコ 人の納期遅れに我々が対応し、工場で年 を越し、家にも帰れず徹夜か駐車場で寝 る 、と い う 日 が 3 、 4 日 続 き ま し た ね 。 そ の ときにローカル企業のなかに入るやり方 では、品質・納期が守れず、日系企業のお 客様からの信頼を失ってしまうと思いまし た。それからは、すべてを自社で行えるよ う社員を増やし、自社工場を持って、営業 から設備の据え付け完了まで、社内で完 結できる体制を確立。そのように一から 体制をつくり上げることには苦労しました。

 

石田社長と、その右腕となる佐藤照光氏(右)、営業部長のヘズス・マヌエル・レジェス・ルイス氏(左)

─納期の問題はどのように解決しま したか。

まだ実施している段階ですが、教育で す。最初の5年間は教育の年だと思って います。まずは計画表を作る意味から教 えて、スケジュールの立て方、管理の仕方 を教えています。今 4 年目ですが、全員 新入社員ということもあり、まだまだ教える のに時間がかかりそうです。また、今月の 目標を書き、今月が終わったらその結果、 そして来月の目標を書くということを全員 にやらせています。これができるようにな ると、予定表が作れるようになる。自分の 今月の目標も書けなければ、予定表も作 れないのです。そして、その結果の振り 返りがないと、予定表を作っただけになっ てしまう。やはり基本的にメキシコ人はス ケジュール管理が苦手だと思います。でも、やる気と実力は持ってる。日本人は、 技術はあるがコストが高い。メキシコ人 はコストは低いが、納期が守れない。日 本人の良いところ、メキシコ人の良いとこ ろを合わせるとより良いものができます。

─社長ご自身について、メキシコで の生活はいかがですか。

今回初の海外赴任なのですが、アグア スカリエンテスは大変住みやすいです。 やはり田舎というのは否めませんが、娯楽 は少ないけれど人の温かみを感じられる 町。特にメキシコのなかでも治安が良い のもポイントです。あとメキシコは日本に 比べて気候が良く、湿気が少ないところも 過ごしやすいですね。 住まいは私の右腕で、日本語、スペイン 語 、ポ ル ト ガ ル 語 、英 語 の 4 ヵ 国 語 が 話 せ る日系ブラジル人社員の佐藤照光と、日 本人社員の 3 名で 4 年間同居しています。 365日、寝る時とトイレの時以外は一緒に 居て、仕事の相談や様々な話をしていま す。一般的に職場で社員とともに過ごす 時間の 3 倍以上は一緒に過ごしているの で、コミュニケーションが非常に密です。 共同生活は社員教育の一環でもあります。佐藤は日本で現場の作業員でしたが今はスーツを着て、お客様に営業をしています。最初はスーツの着方を教えるところから始まりました。右も左も分からない なか、事業を軌道に乗せられたのは、この ようにともに歩んできたからというのが大 きいですね。しかし、今はやっと体制が 固まってきて、拠点の展開も行っていくの で、これからは各自のプライベートを守れ る環境に変えていきます。

工場内で社員たちがラジオ体操を行う様子

─今後の展望を教えてください。

お 客 様 に 支 え ら れ 、お 陰 様 で 2 0 1 9 年 11 月にケレタロに支店を出すことが決まり ました。ケレタロにはこれからトヨタ自動 車が進出してきます。 私が設立当初から目標としているのは、 メキシコ全土でサービスを提供できる体 制を整えること。ここにメキシコの地図が ありますが、今まで仕事をしてきた場所を マークしています。このマークでメキシコ の地図が描けるようにと目標を立てて、メ キシコ人社員たちとも進捗状況を共有し ています。このマークを付けて地図を完 成させることが、事業拡大の指標になっ ています。 5年後の目標は、メキシコを足掛かりに 南米進出を果たすこと。ブラジルに拠点 を設けることを考えています。メキシコのみならず、南米の日系企業に対して、我々の強みである「品質・納期」の面でサポートを行っていきたいです。

Interviewer: Hisashi Abe
Photographer: Victor Hugo Zarate Fernan
Editor: Kaori Kemmizaki

2019 年 5月20日取材