アメリカの退職年金制度

アメリカの退職年金制度には公的年金の ソーシャルセキュリティーがあり、それを補うものとして私的年金に加入する場合が多い。私的年金には大きく分けて、企業年金 であるQualified Planと個人年金であるIRA (Individual Retirement Account)がある。

Qualified Plan(企業年金)

▶ 401(k)  

401(k) は米国で最もポピュラーな確定拠出型の企業年金制度である。
ポイントは以下の通り。

•税金がかかる前に、拠出金が給料から天引きされる
(税引き前の金額で投資できる)

•会社が拠出金を足し、従業員の残高をさらに増やすことができる

•資金が投資のプロの手により管理される
(退職予定時の西暦に合わせた投資プランもある)
ただし、最終的な責任は従業員 に帰属する

• 投資利益が非課税

• 拠出金、運用利益ともに初めて課税されるのは、
引き出したときである。引き出すのは退職時であることが多く、
その際は給与所得がないため税率も低くなる

• 2019年度の個人の最高拠出金額は1万9,000ドル。
50歳以上は2万5,000ドル

• ロールオーバーと呼ばれる口座の移動が認められている。
次の雇用先の401(k) や、IRA(後述)に移行できるため、継続して投資が可能。
つまり会社を移っても 401(k)を継続できる

 注意点は、59歳6ヵ月以前に年金を引き出す場合は、所得税に加えて
10%のペナルティーを取られること。この年齢以前に日本に戻らないと
いけない場合に注意が必要。ただし、不慮の事故、病気になった場合、
大学などの教育費のために使う場合、初めての自宅購入に使う場合などは
早期に引き出してもペナルティーが発生しない。日本に帰る場合は、
できるだけ早く対処方法を考えなければならない。

企業にとっての401(k) の利点

社員から最も人気なのが401(k)なので、 この制度があると採用活動が有利になる。
401(k)にはVesting 制度というものがあり、こちらも長期雇用を促進する。
Vesting制度とは、勤務年数によって会社の拠出金額における社員の所有割合が
増えるという制度。例えば5年間のVesting制度であると、1年間勤めるごとに、
20%ずつ会社の拠出金額が社員のものになる。5年間雇用関係が継続すると、
会社側の拠出金全額が社員のものとなる。また、その他の利点としては、
企業による拠出金は企業の税務申告で損金算入(必要経費として計上)でき、
運用費用の一部を会社の税金控除に充てることができる。

企業が401(k) を導入する際の注意点

・Department of Labor(労働省)によって管理されている制度であり、
規制が多く、罰則規定も厳しい。特定の従業員だけを有利にすることは許されていない

・規制をすべて理解することはほぼ不可能なので、信頼できる401(k)の
運用を行う会社に運営を委託して、コンプライアンス に留意する

・401(k)自体での税務申告(Form 5500)も必要になる。
こちらも規制が厳しいため、運用会社に作成を委託するのが賢明

IRA(個人年金)

▶ Traditional IRA

IRA の代表的なもの。401(k)と同様、 拠出金と投資利益が、
引き出すまでは非課税。以下が主な特色である。

•投資の最高額が2019年度で5,500ドル(50歳以上は、1万2,000ドル)

•個人年金なので401(k)のような雇用主による拠出はない

•給料の天引きではなく、個人が小切手などで拠出する

▶ Roth IRA

拠出時には課税され、引き出し時には非課税。
自営業者のための退職年金プラン。

▶その他の年金制度

・403(b) プラン
非営利団体用、教育機関などの退職年金プラン

・プロフィット・シェアリング・プラン
その年の利益の一部を従業員と共有しようとするプラン。
さまざまな形態がある

・SEP IRA 
自営業者のための退職年金プラン

・Simple IRA
401(k) の簡易版プラン、DOL(労働省) の管理下にはない

このように多種の年金制度が存在し、さらに保険商品としても
退職年金がある。選択には十分注意したい。

 

(注)ルールや条件は時期や個人の状況により変わるため、実際にルールを適用する際は必ず専門家に相談のうえ、行ってください。内容について質問がある際は監修者まで連絡を
【監修】
藤本 光
CDH会計事務所

米国公認会計士慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、ミシガン州立大学でMBAを取得。イリノイ州にあるジョンマーシャル、ロースクールの夜間コースを卒業し、イリノイ州の司法試験に合格。米国公認会計士として25年間の経験があり、CDHの社長を5年間勤める。現在ハーバード大学のビジネススクールでBusiness Analytics Programに在籍中。これまでの経歴を生かし、米国にいる永住権保持者における数々の問題を解決することに熱意を燃やしている。 kfujimoto@cdhcpa.com   Tel (630)253-0215