【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】Relo Redac, Inc. President 七原肇 Executive Vice President 佐々田大樹

Relo Redac, Inc.
1010 Avenue of the Americas, 4th Fl New York, NY 10018
Tel (212) 355-0011

インタビュー動画はこちら>>https://youtu.be/g3kGA-GfEBI

七原肇(左)
栃木県出身。東京貿易へ入社後、 1984年ニューヨーク赴任。駐在中に社内ベンチャーとして日系企業駐在員の社宅管理事業を立ち上げ、86年リダックを創業。92年に社長就任。趣味は水泳、ヨガ。

佐々田大樹(右)
東京都出身。2009年にリログループに参画。新規事業の立ち上げ、法人営業や海外事業の責任者を担当した後、 15年にニューヨーク赴任。17年からリロリダックのCOOとして事業執行を統括(現任)。趣味はゴルフ、水泳。

企業・駐在員のリロケーションを支え全米最大の日系不動産会社に

現在アメリカに13 拠点を構える同社は、日系企業や駐在員に対して不動産を軸に
多岐にわたるリロケーションサービスを提供している。
コロナ禍による打撃を乗り越え、賃貸斡旋事業においては復活を遂げたと語る。

ー リロリダックの創業経緯や事業内容についてお聞かせください。

(七原)80年代半ば、現在のように多くの駐在員がニューヨークに赴任して来ていたのですが、みなさん住宅を探すのに大変苦労していました。当時私は商社の駐在員としてニューヨークで働いていて、取引先だった新日鐵(現日本製鉄)より、「社宅化を考えている。その業務を任せられないか、日本企業に社宅化を提案しながら不動産事業を展開してはどうか」という話をいただきました。そこで1986年に社内ベンチャーとして住宅の社宅化とその管理を行う会社を立ち上げたのがスタートです。その後、駐在員に向けた賃貸住宅の斡旋を中心に行うようになり、サービスアパートメントの運営も検討していました。80年代末から我々より先にリログループがニューヨークでサービスアパートメントを運営しており、ビジネスについて相談をしているうちに親しくなり、リロケーションという事業も一致していたため、 2005年にリログループ参画に至りました。
事業コンセプトは「リロケーション」です。それには人のリロケーション、企業のリロケーション、資産のリロケーションという3つの柱があります。人のリロケーションでは、賃貸住宅やサービスアパートメント、保険や契約の管理などの賃貸に付随するサービスを提供します。企業のリロケーションではオフィスや倉庫の物件手配、そして資産のリロケーションでは日本の投資家がアメリカで不動産投資をして資産を移すことのサポート、不動産管理などを手掛けています。

お客様を追いかけて、
現地でサービスの提供を続けることで全米展開を行ってきました。

創業時から30年以上事業を成長させてきた社長の七原氏。
拠点拡大ができた秘訣は、郷に入れば郷に従うことだと語る

ー リログループの事業内容と海外展開についてお聞かせください。

(佐々田)リログループは、「お客様が本業としないことを、我々が本業としてサポートする」ことをコンセプトに事業展開を行ってきました。1984年に海外転勤者の留守宅管理をスタートし、海外転勤者の自宅を、転勤の間だけ貸し出すことや空き家の管理を行っています。1993年には、企業規模によって受けられるベネフィットの格差が生まれていたことに着目し、福利厚生のアウトソーシング事業を立ち上げました。そして2005年には、日系企業が海外でより活躍出来るよう、海外赴任のアウトソーシングビジネスをスタート。例えば自動車メーカーなら自動車を作ること、売ることに特化してもらえるように、我々が総務、人事などの実務を代行する事を本業として行ってきました。  海外展開につきましては、日系企業が進出している地域に我々も拠点を開設し、日本のリログループから送り出したお客様を現地のリログループがサポートするということをコンセプトに、現在はアメリカ13 拠点、中国2 拠点、イギ リスとインド各1拠点でリロケーションサービスを展開しています。

ー アメリカでは具体的にどのようなサービスを行っていますか。

(佐々田)渡米前はビザ、引っ越しの準備から始まり、健康診断や予防接種などさまざまなプロセスを日本側でケアし、渡米後は物件探しや仮住まいの手配、保険などの付随したサービスを現地でサポートしています。また、帯同してきたご家族の方を含めてサポートできるように24時間の電話通訳サービスを行う「JAN」というサービスも提供しています。弊社で物件を借りたお客様には「リダックくらぶ」という地域のお店の割引や緊急時の通訳サービスが利用できるメンバーシップサービスも提供しています。

ー 急速にIT化が進む中、御社の事業におけるイノベーションとは。

(七原)オンラインでのお客様とのコミュニケーションを進めています。ズーム(Zoom)で日本に居るこれから渡米して来る方に向けて赴任前オリエンテーションを行っており、アメリカ生活のことを説明しています。そして、日本に居ながらオンラインで物件の見学ができるバーチャルショーイング。人によっては渡米前にバーチャルショーイングのみで物件をお決めになります。あとは「奥様広場」というサービスでは、赴任して来たばかりの駐在員の奥様をズームで集めて知り合いを作る機会を提供しています。

ー コロナ禍における影響、収束後の事業変化について教えてください。

(佐々田)コロナの流行が始まった当初は、人も企業も動かなくなり、リロケーション事業は完全にストップしてしまいました。 2020年はとても苦しい1年でしたね。そんな中、企業のニーズはどんどん変化し、オフィスの移転や縮小、サブリースをしたいという企業が増えたのは新しいトレンドでした。その他にも今までのように国外出張ができなくなったのでI-94の管理が必要になり、国内で I-94を延長するサポートへのニーズもありました。また、駐在員やご家族のメンタルケアについてなど、企業もどこまで管理をするべきかと頭を抱えていましたね。  そんななか、正しい情報や、他の企業はどうしているのかという情報への需要が高まり、我々は日系企業3,000社強とのお取引がありますので、企業からヒアリングをして、その情報共有や、ウェビナーの開催に力を使いました。1年で120回ほどウェビナーを行い、企業担当者や駐在員など、 3,200世帯の方に参加いただきました。信頼できる情報ソースとしてお役に立てたのではないかと思います。  コロナ収束後の事業は、あらためて企業のニーズに合わせて変えていかなくてはいけません。単に住宅のサービスというよりも、ソフト面でどれだけ力になれるかが課題になると考えています。なお、 2021年の4月から、赴任してくる駐在員の数が通常期に近いくらい戻ってきており、賃貸斡旋の事業は復活を遂げることができました。アメリカの底堅さを目の当たりにしましたね。

120回ほど行ったウェビナーでは不動産市況やオフィス作りについてなど
企業の関心事の高いトピックを扱ったと語る副社長の佐々田氏

ー 貴社の最大の強みとは何でしょう。

(七原)アメリカに13拠点あり、アメリカを面で捉えられる唯一の日系不動産会社であることです。ニューヨーク、ロサンゼルスの大都市のみならず、アラバマやテキサス、アリゾナなど全米にネットワークがあり、現地でサービスを提供しています。  原則として不動産業は物についています。家を売る、ビルを貸すなど、物が第一です。ただし、我々の事業はリロケーションなので人についています。そのため、人が行くところを追いかけていかなくてはいけない。お客様を追いかけて、現地でサービスの提供を続けることで、全米展開を行ってきました。

ー 不動産業・リロケーション事業における日米の違いとは。

(佐々田)不動産においてはマーケットも違えば法律も違う。家を探すということに関しては日本と空室率も違い、ビジネス自体は全くの別物に近いと考えています。リロケーション事業のニーズに関しても、日米で全くニーズが異なります。日本では海外転勤をする際に、夢のマイホームを持ち続ける文化があります。そのため、空き家の管理やその物件に対するサポートが必要になる。一方でアメリカ人が転勤する際は、不動産を売って、新しい場所で不動産を購入する人が多いので、その売買のサポートが求められます。

ー BGRSのグループ化について教えてください。

(佐々田)2019年にリロケーション業界で世界3位の企業BGRS(Brookfield RPS Limited)を取得し、グループ化しました。北米を中心に世界6ヵ国で展開しており、大手アメリカ企業のリロケーションも行っているグローバル・リロケーション・カンパニーです。例えばマイクロソフト社は年間数万世帯を移動させており、規模の大きさが違います。BGRSのグループ化により、日系企業に限らない世界規模のリロケーション事業に携わることができるようになりました。

ー 今後の展望を教えてください。

(七原)日系企業のグローバル化が進むなか、本業に専念してもらう環境を作っていくことが我々の使命です。そのため、さらにサービスできる地域を拡大していく必要があります。ロンドンの拠点を足がかりにヨーロッパでサポートできる範囲を広げたいですし、アジアでももっと現地の体制を広げていきたい。さらに個人的な意見を申しますと、将来的にはアフリカに進出したいと思っています。最終的には日系企業も、インドの次はアフリカに行くのではないかと。そこまでお付き合いできると良いですね。インフラが整っていないからこそサポートが必要なエリアはたくさんあると思います。日系企業が行くところ世界中どこでもサポートができるよう、サービスを提供できる地域の拡大に努めていきたいです。

ニューヨーク便利帳®︎vol.30本誌掲載

Interviewer:Kaori Kemmizaki
Photographer:Masaki Hori
2021年 8月17日取材