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2006年4月東洋ゴム工業株式会社 (現TOYO TIRE株式会社) 入社。09年5月まで中南米の営業を担当。09年5月~ 14年2月ドイツ・デュッセルドルフへ赴任、欧州代理店への営業を行う。14年3月日本に帰任し、中南米営業を担当。15年2月〜 17年4月、アメリカ・サンディエゴに駐在、メキシコ・中南米営業を行う。2017年5月~メキシコシティーに赴任し、オフィス立ち上げ、メキシコ・中南米の営業を担当。2019年8月~現職。
メキシコ特化のタイヤ開発TOYO TIREだからこそ
2017年、メキシコシティーにオフィスを設立。TOYO TIREのグローバル事業としてメキシコと中南米市場でタイヤを販売するNT Mexico社長にビジネス戦略を聞いた。
ー事業内容を教えてください。
メキシコと中南米全土で自社のタイヤ製品の販売を行っています。メキシコに工場はなく、主に日本とアメリカの生産工場からタイヤを輸入して、メキシコ国内のタイヤ卸売業者に販売しています。一般的にタイヤの取引は大きく2つに分かれ、自動車メーカーに納めるものと、消費者がタイヤ交換時などに利用する街のタイヤ小売店に納めるものがあります。弊社は後者のリプレイスメント(補修)市場に特化して取引を行っています。また、小売店に直接販売するのではなく、そこにタイヤを卸している大手の卸売業者と取引をしています。取り扱っているタイヤは約40種。サイズを含めると約1,000種に上ります。
ーメキシコ進出の経緯を教えてください。
1987年に、日本からメキシコへのタイヤの輸出を始めました。そして2002年にアメリカ・サンディエゴに会社を設立し、そこからメキシコ市場を管轄。その後、2017年にメキシコシティーにある現オフィスを開設しました。メキシコシティーを拠点に選んだ理由は、地の利が良く、お客様の声を聞くために実際に中南米市場にも訪問して営業活動を行いやすいからです。
ー社長自身も中南米を訪問されましたか。
社長になってからはオフィスに居る時間も増えましたが、営業をしていたときは1ヵ月の半分ほどは中南米に出張していました。メキシコから中南米は近く感じますが、例えば大きな市場であるブラジルはメキシコシティーからフライトで10時間ほどかかります。
ーNT Mexicoという社名の由来を教えてください。
当社はTOYO TIRES(トーヨータイヤ)とNITTO TIRES(ニットータイヤ)の2つのブランドを持っています。NITTOTIRESは北米を中心に展開しているブランドになります。NTとは、NITTOの「N」とTOYOの「T」の頭文字です。
ーメキシコでの主なターゲット層は。
メキシコ全体を見ると小型車が多い市場です。小型車用タイヤは熾烈な価格競争が起こり、非常に厳しい環境にあります。一方で、当社が得意としている大きなピックアップトラックやSUVなどのプレミアムセグメントに一定の需要があり、これらのユーザーをメインターゲットにしています。
ー御社の強みを教えてください。
当社はアメリカのタイヤ専門誌であるタイヤビジネスが発表した2018年のグローバルタイヤメーカーのランキングで11位にランクインしています。規模的にそこまで大きくない分、柔軟性や機動力があり、きめ細やかな対応ができることが強みです。その強みを生かして、メキシコ向けの商品を開発・販売しています。私の知る限りでは、メキシコに特化して商品開発をしているタイヤメーカーは他にありません。メキシコ人に好まれる機能性とデザインを追求し、現在4商品を開発・販売しています。
ーメキシコ人に好まれる機能性とデザインとは。
機能性の面では、メキシコの中部から南部は雨季があり、メキシコシティーも雨季には毎日夕方にスコールのような雨が降ります。道路の水はけが悪く、水が溜まりやすいため、雨に強いウェット性能を強化しています。デザインにおいては、メキシコ人が好むのは躍動感がある、目立つデザイン。車自体は多少古くても、タイヤは新しくて目立つものに変えるのが人気です。そのため、タイヤの溝の切り込みがV字になっているデザインを採用しています。
ー改革していることを教えてください。
サンディエゴの会社では日本人が主に業務を行っていましたが、2017年のメキシコシティーオフィス開設にあたり、少しずつメキシコ人のローカル採用を始めました。2019年下半期からメキシコ人のマネージャークラスの採用もスタートしました。メキシコ人社員は文化の違いを感じることもありますが、正直予想以上によく働いてくれています。率先して最後まで仕事をやり抜く姿勢を見て、非常に社員に恵まれていると思います。
メキシコシティーオフィスを立ち上げ、中南米を飛び回って営業活動に奔走した村瀬氏
ーメキシコ人社員のマネジメント成功の秘訣は。
自主性を持たせることが一番ですね。やれと言ってやってもらうのは簡単ですが、押し付けられた仕事は面白くない。いかに主体性を持って自分から仕事をしてもらえるような指示の出し方や話し方をするかという点を意識しています。あとは、少数精鋭でメキシコと中南米という広範囲の市場をカバーしているため、1人あたりの裁量が大きく、やりがいを感じてもらえているのではないかと思います。
ー新型コロナウィルスが蔓延する中、どのような働き方をされていますか。
当社はオフィスのみ構えており、工場を持っていないこともあり、在宅勤務で仕事をしています。3月末に非常事態宣言が発令されて、メキシコは感染者も増えているので(2020年5月時点)、しばらくは在宅勤務になる可能性が高いと考えています。
ー自身の経歴を教えてください。
営業として入社後、日本で3年間働き、ドイツに5年間駐在。その後日本に1年弱戻り、次はサンディエゴに赴任。2017年からメキシコシティーオフィスの立ち上げを経て、2019年8月に代表に就任しました。10年以上海外生活を送っています。ドイツは自動車産業の本場なので競合メーカーが多く、かなり競争が激しかったのですが、その中で営業活動をした経験が、私のベースになっていると思います。
ースペイン語の習得はいかがですか。
学生時代にスペイン語を勉強していまして、スペインへの留学経験があるので、スペイン語は喋れます。ただし、スペインで話されているスペイン語とメキシコで話されているスペイン語は全然違う。スペインのスペイン語をメキシコ人に話すと気取っているように思われて、スペインでメキシコのスペイン語を話すと田舎者扱いされます(笑)。アクセントや単語が違うのです。最初はその違いに驚きましたが、今は私もメキシコのスペイン語を話しています。お客様や社員とも直接コミュニケーションが取れるのはとても便利ですね。
ーメキシコで御社のタイヤが購入できる場所は。
当社のウェブサイト(toyotireslatino.com)に取扱店が掲載されています。「Encuentra tu Distribuidor」をクリックして、住所を入力すると最寄りの取扱店が表示されますので、ぜひご利用ください。
ーこれからメキシコに進出する企業にメッセージを。
メキシコはよく親日国と言われ、メキシコでは日本製品への信頼が非常に高く「メイドインジャパン」の製品はそれだけでも価値があります。日本人がお客様のところに営業に行っても喜んでもらえますし、日本企業が成功しやすい土壌がある。これからの自動車産業の発展を考えても、非常に有望な市場であることは間違いありません。メキシコ人もよく働き朗らかな人が多く、非常に働きやすい環境ですよ。
Interviewer:Kaori Kemmizaki
Photographer:Cristian Salvatierra
2020年5月20日取材
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