【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】ワン・コロンバス Senior Vice President, Global Trade & Investment デボラ・シラー

Senior Vice President, Global Trade & Investment
Deborah Scherer(デボラ・シラー)
One Columbus
150 S. Front St, Ste 200 Columbus, OH 43215

2011年1月にワン・コロンバスのチームに加わり、現在はグローバル貿易・投資を担当するシニア・ バイス・プレジデントとして、コロンバス地域の世界的なマーケティングとビジネス開発活動をリードする。民間および公共部門でのグローバルビジネス開発において25年以上の経験を有する。

多様性のある経済基盤と豊富な労働力で、企業を成功へ導く

オハイオ州の中央部に位置し、州都として人やビジネスが集まるコロンバス。開かれた環境であり、成長と発展を続けるこの地域はビジネスに最適なだけでなく生活にも申し分ない場所だ。多様な産業が集まるこの地域で、国内外の企業を誘致するワン・コロンバスの活動内容を紐解く。

 

ーワン・コロンバスの活動内容は。 

 私たちはセントラルオハイオの「コロン バス地域」と呼ばれる11郡を管轄する経済開発組織です。地域および州のパートナーらと密接に協力し、コロンバスへ の進出を視野に入れている世界中の企 業がここで成功できるようにサポートし、 ビジネス拠点のリソースとしての役割を果たしています。

1996年からコロンバスに住んでいるというシラー氏。 ここでの生活は大変充実していると笑顔で話してくれた

ー成長しているエリアは。

 特に製造業においては、フランクリン郡を中心に製造関連のテック企業が集まっています。ただし、他にも発展が見込める土地がたくさんあることから、近年は地域全体で成長が見られます。

 

ー国内外からの投資状況は。

 コロンバス地域には多様な産業が集まり、自動車、運輸・物流、Eコマース、 金融・保険、小売などの企業が本部を置いています。この5年ほどで国内外の両方から投資が増えており、さらなる階層化が進んでいます。半導体や電気自動車、クリーンテクノロジー、食品・飲料、科学などが例に挙げられ、1つの 産業が市場全体の17%以上を超えることがありません。海外投資のなかでも日本企業は常に最大の投資国であり、 40年以上前にホンダがコロンバス地域 に進出して以来それは変わりません。

 

ー具体的な企業や投資例は。

 日本企業ではホンダの他、スタンレー電気、TSテック、第一三共などがあります。最近の投資例だと、第一三共が3 億5000万ドル規模の追加投資を発表しており、新たな製造設備や研究所を建設する予定です。国内企業では、現在インテルが200億ドルをかけて2つの半導体工場を建設しています。インテルのサプライヤーとして多くの日系企業が進出予定です。

 

ーコロンバスに投資する魅力は。

 オハイオ州は製造業が盛んであり、 日本の強みである製造業を長い間惹きつけてきました。まず人口の側面です。オハイオ州は人口が増加しており、 雇用を確保することが難しい昨今のアメリカにおいて、労働力が豊富にあることは以前にも増して重要です。多くの企業が集まることで競争力が生まれるような構造になっていることも、日本企業にとって魅力だと思います。さらに、地理的に物流に有利であり、顧客の元に商 品を速やかに届けられることも重要な側面です。そして最後に強調したいのは、コロンバス地域にはビジネス面においても生活面においても、しっかりとした サポートネットワークが整っていることです。会計事務所や法律事務所、金融機関など、日英両方の言語に対応した専門家とのネットワークを持っているため、 英語が第一言語ではない人々も安心してここでビジネスを興していただけます。 日系またはアジア系のスーパーマーケッ トが充実し、約500人の児童・生徒が 学ぶ全米最大規模の日本語補習授業校や、日本語が通じる医療機関もあります。このように幅広いサポートがあることは、駐在員とその家族にとって非常に重要なことです。

 

ー企業や人をつなげる役割も。

 ビジネス面では、不動産物件の紹介、 人件費の算出、労働力戦略の考案、プロジェクトにかかる費用の見積もりなど、プロセスの最初から最後まで私たちがサ ポートします。生活面では、駐在員同士 の交流を促進できるよう、コミュニティーのなかで企業や個人をつなぐ手伝いもしています。ときにはクライアントから車の給油の仕方や、洗剤の選び方を聞かれることもありますが、彼らがどのような状況に置かれていても私自身が情報のリソースとなり、駐在員のアメリカ生活をサポートできることを誇りに思っていま す。もし私が逆の立場で日本に移住することになったとして、同じようにライフラインとなるサポートがあればとても助かるでしょう。ビジネスのリソースは多くあ りますが、生活のリソースはビジネスほど多くありません。海外生活において同じような経験を持つ人々と交流を持 つことは安心につながります。

 

ー日本との交流促進の取り組みは。

 アメリカ国内での事業拡張またはアメ リカ進出を検討している企業と定期的 にコンタクトを取っている他、JASCO(セントラル・オハイオ日米協会)やCOJAC (セントラル・オハイオ日系企業懇話会)、JETRO(日本貿易振興機構)とも密に連携を取り、交流イベントにも積極的に参加しています。先日行われたJETRO主催のイベントでは、日本企業の代表団約50人にコロンバスを案内し、半導体や電気自動車産業の最新動向について学んでいただきました。また、2023年にコロンバスはミッドウエス ト・US・ジャパン・アソシエーション会議のホストを担当しました。これは中西部の都市と東京で毎年交互に開催されている貿易・投資および相互交流促 進のための会議であり、最終的に400 社以上が集まりました。このときは日本企業の代表団をインテルや第一三共の工場、ホンダのトランスポーテーションセンターなどに案内した他、フットボールの試合にも招待しました。経済動向に触れるだけでなく、娯楽も体験できる絶好の機会になったのではと思います。

 

ー日本企業の魅力とは。

 第一に、私たちは市場が多様化することを歓迎しています。産業的な視点においても文化的な視点においても、外国企業の参入による継続的な多様化は重要です。私たちは、文化的な多様性があれば個人が今までになかった新しい考え方を持つようになり、それが新しいアイデアとなり、コミュニティーに多くの価値をもたらすと信じています。また、日本企 業は世界でも精力的な企業が多いと思 います。日本企業には市場で優れたリー ダーになっていただきたく、彼らが私たちのコミュニティーに参加していただけることに魅力を感じています。ホンダを筆頭に、ここに進出している日本企業は慈善活動を通してコミュニティーに多大なる貢献をしています。彼らがコミュニティーのために費やす時間とお金は、他の外国企業の追随を許しません。

 

ーコロンバスの経済成長予測は。

 私たちの経済指標では、ライフサイエ ンス、自動車、半導体、食品・飲料など多様な産業の成長が続いています。人口においては、2050年までにさらに100万人増加し、310万人に達する見込みです。コロンバス地域はまさにオハイオ州の成長スポットといえるでしょう。 また、30年までに6万人の新規雇用と33億ドルの賃金、さらに100億ドルの資本投資を創出する見通しです。既存企業には継続的に投資をしていただきた く、賃金が上昇して人口も増えれば新たな雇用が生まれ、市民のキャリアアップにもつながります。

 

ー人口増加の要因は。

 経済成長とともに雇用の機会が増えると、人々はそれを求めて移住してきます。私たちは国内だけでなく海外から もコロンバスに移住する人々をたくさん見てきました。また、コロンバスは手ごろな価格で住める都市であることも魅力です。全米で家賃や人件費が上昇していますが、コロンバスの生活コストは全米平均以下であり、まだ手ごろな価格で住める都市です。各メディアのランキングでも常に上位に食い込んでいます。

コロンバスが会議のホストを務めた2023年のミッドウエスト・US・ ジャパン・アソシエーション会議にて、非営利団体コロンバス・ パートナーシップのCEOケニー・マクドナルド氏と(提供写真)

ー経済活性化のための取り組みは。

 1つ目は既存のビジネスを確実に守 ることです。2つ目は新しいビジネスを誘致することです。衰退する分野を新しい分野に置き換えることで経済成長を促し、そうすることで多様性のある雇用や税基盤を確立し、競争力のある市場づくりに貢献することができます。3つ目は起業家および成長の著しい企業をサポートすることです。コロンバス地域には多数の企業があるなか、スタートアップ企業や成長が著しい企業もあります。コロンバス地域はコストパフォー マンスの面でも起業に最適な場所であり、スタートアップ企業向けのサービスも多く提供しています。4つ目は将来のためにコミュニティーの準備を整えることです。全米で最も準備が整った地域になることを目指しており、そのためには企業が検討できる用地や建物を確保し、道路やインフラを整備することが求められます。また、駐在員のための住宅も確保しておく必要があります。5つ目はコロンバス地域を世界的にマーケティングし、プロモーションすることです。私たちはビジネスやキャリアの拠点として、 国際的に認知されることを目指しています。これら5つが、経済成長を促進し続けるために取り組んでいる施策です。

 

ー投資を検討している企業へ。

 コロンバス地域は活気にあふれ、進化を続けるビジネスハブです。私たちには 多様性のある経済基盤と豊富な労働力があり、企業を成功へ導くシステムが整っ ています。1日以内にアメリカの人口の 14%以上にアプローチできる好立地に加え、ビジネスに適した環境、有利な税制、そして広大なインフラを備えたコロンバスは、企業が成長し、革新するための理想的な場所だといえます。コロンバスは革新的かつ開かれた環境であり、そして共に協力して豊かな未来を築くことにコミットしたコミュニティーがあります。この地に投資することで、私たちのコミュニ ティーの一員となれるでしょう。

Interviewer: Miho Kanai
Photographer: Shizuka Hirano
2024年11月22日取材

▼本誌掲載
オハイオ・インディアナ・ケンタッキー便利帳 Vol.19