アメリカのビザの種類と概要 〜短期滞在ビザ・学生/研修者ビザ・企業研修ビザ〜

アメリカのビザの種類は非移民ビザ(Nonimmigrant Visa)と移民ビザ(Immigrant Visa)の2種類に分かれます。非移民ビザとは、アメリカ に短期滞在することを目的に発行されるビザのこと。一方、移民ビザは、アメリカに永住する目的のビザのこと。
本記事では、アメリカの就労ビザについて説明します。

査証とI-94

非移民ビザの取得においては、査証とI-94の両方が重要となる。

査証は、アメリカ大使館や領事館から発行されパスポートに貼付されるビザスタンプまたはステッカーのことで、狭義ではビザを示す。入国移民審査官はこれを基に、入国する外国人の滞在目的と滞在期限を判断する。査証を取得するには、アメリカ国務省のサイトでDS-160をオンラインで記入し、その確認証とその他必要書類とともにアメリカ大使館や領事館に申請し、面接を受ける必要がある。

I-94は、アメリカでの出入国許可記録のこと。以前は、アメリカ入国時までに事前配布される用紙に記入していたが、入国プロセスの簡易化のために2013年5月以降、例外を除いて廃止された。渡航者のパスポートに入国審査官が入国スタンプを押し、滞在資格を証明するためにI-94のコピーが必要な場合は、I-94ウェブサイトから取得が可能である。この記載された滞在期限を過ぎてアメリカに滞在した場合、違法滞在になるので要注意。

非移民ビザの種類

主な非移民ビザの種類は下記の通り。

Aビザ:外交官、各国政府職員
Bビザ:短期商用、出張、観光者
Cビザ:通過者 (Transit Visa)
Dビザ:船舶、航空機の乗務員
Eビザ:貿易商や投資家
Fビザ:留学生
Gビザ:国際機関に勤務する職員
H-1Bビザ:特殊技能、専門職保持者
H-2Bビザ:季節労働者
H-3ビザ:企業研修者
I ビザ:報道機関関係者
J-1ビザ:交換訪問者、職業研修者
Kビザ:アメリカ市民の婚約者
L-1ビザ:企業内転勤者
Mビザ:職業訓練校への短期留学生
Oビザ:科学、芸術、ビジネス、スポーツの分野で卓越した能力を有する者
Pビザ:芸能人、スポーツ選手
Qビザ:国際文化交流に参加する者
Rビザ:宗教関係者

ビザウェイバー(ビザ免除)

日本国籍保持者は、観光や出張を目的にアメリカに滞在する場合、90日以内の短期滞在であればビザがなくても入国が認められる。ただし、事前に渡航認証(ESTA=Electronic System for Travel Authorization)を取得しなければならない。ESTAは、こちらのウェブサイトから申請可能。申請料は14ドル。ESTAは2年間有効だが、2年以内にパスポートが失効する場合は、パスポートの有効期限日までの承認となる。特定の場合を除き、アメリカ国内で滞在資格の変更や延長は不可。

短期滞在ビザ

Bビザ

観光や出張で90日以上アメリカに滞在する場合は、B-1ビザ(短期商用ビザ)もしくはB-2ビザ(観光ビザ)の申請が可能。B-1ビザの商用目的には、会議出席、市場調査や個人研究、契約交渉、短期研修、修理技術の実演などがある。いずれのビザもアメリカ国内で報酬を得ることはできないが、滞在資格の変更や延長が可能。申請には、往復航空券を所持しているなど本国に帰る意志があることや、アメリカで就労しなくても十分滞在できる資金があることを証明する必要がある。

学生/研修者ビザ

学生および研修者ビザには、大学や語学学校に留学する場合のF-1ビザ、職業訓練校や専門学校に留学する場合のM-1ビザ、交換訪問者に発行されるJ-1ビザがある。J-1ビザに関しては、企業研修ビザの項で述べる。

F-1ビザ

申請には、学校から発行された入学許可証であるI-20を、ビザ申請書類とともにアメリカ大使館や領事館に提出する。入国時、I-94にD/Sという滞在有効期限が記載される。D/SとはDuration of Statusの略で、学業を続ける限りアメリカに合法的に滞在できることを認めるものである。つまり、ビザの有効期限が切れても、I-20の有効期限が更新されればアメリカに延長して滞在できる。

プラクティカルトレーニング

F-1ビザ保持者が学校外で就労するには、❶CPT(Curricular Practical Training)、または❷OPT(Oprional Practical Training)というプラクティカルトレーニングを移民局に申請する。申請するには、フルタイムで学校に9ヵ月以上在籍していなければならない。ただし、語学学校の学生は該当しない。

❶CPT

就労内容が大学での授業の一環とみなされる場合に与えられる就労許可のこと。それゆえに、その就労内容が学位取得のための単位につながる、あるいは学位取得のコースワークとして必修でなければならない。CPTで就労するには、就労前に学校のDSO(Designated School Official)の許可を得る必要がある。

❷OPT

F-1ビザの学生が、自分の専攻分野において実践的経験を積むことを目的に与えられる就労許可のこと。卒業後にOPT取得を希望する場合は、卒業の90日前から卒業後60日以内に移民局に申請する。 申請前に、学校の留学生アドバイザーに雇用主情報と職務内容を報告する必要がある。

OPTは最長で合計12ヵ月まで取得でき、学期中は週20時間、夏休みや冬休みなどの休暇中および卒業後は週40時間まで働くことが可能である。2008年度の法改正により12ヵ月のOPT期間中に合計で90日以上非雇用状態になった場合、OPTが失効してしまうので注意が必要である。なお、OPTは学位ごとに申請可能。たとえば学士号を取得後にOPTを取得した場合でも、その後修士号、博士号を取得する度にOPTを申請できる。

F-1ビザでのOPT終了後もアメリカに引き続き滞在し、就労を希望する場合は、OPT期間中または、OPT終了後60日以内にほかの就労ビザを申請する必要がある。
OPT期間中にH-1Bビザを申請した学生は、たとえOPTの期限が切れても、H-1Bビザでの就労開始日である10月1日までOPTの期限が自動延長される。これは、アメリカ国内でF-1ビザからH-1Bビザへ滞在資格を変更した場合のみ該当する。自動延長された期間は、H-1Bビザが却下または取り消しになった時点で終了する。

M-1ビザ

F-1ビザと同様に、申請には留学先の学校から発行されたI-20を添えて、ビザ申請書類をアメリカ大使館や領事館に提出する必要がある。M-1ビザ保持者はアメリカに最長1年の滞在が認められ、延長申請をした場合の最長滞在期間は3年である。M-1ビザ保持者は、F-1ビザ保持者のように校内で就労したり、CPTを申請することはできない。学業終了後にOPTを申請することはできるが、期間は最長6ヵ月である。プログラムによってはさらに短い場合もある。なお、M-1ビザからF-1およびH-1Bビザへ滞在資格を変更することは、原則的に認められていない。

企業研修ビザ

J-1ビザ

交換訪問者や職業研修者に与えられるビザのこと。大学や大学院に学生として留学する場合と、職業研修を受けるためにアメリカを訪問する場合のふたつがある。ここでは職業研修プログラムについて説明する。J-1企業職業研修プログラムには、インターンシッププログラムとトレーニングプログラムの2種類がある。申請には、J-1ビザ発行団体からDS-2019という書類を取得し、アメリカ大使館や領事館で面接を受ける。ビザ取得後は、その団体から紹介された企業でインターンやトレーニングの経験を積む。

インターンシッププログラム

アメリカ国外の大学や短大、専門学校に在学中の学生、もしくは卒業後1年以内の人が対象で、最長12ヵ月までその専門科目に関連する分野での研修を行うことができる。

トレーニングプログラム

アメリカ国外で大学や短大、専門学校を卒業後1年以上の関連職務経験を有する人、または高校卒業以上でアメリカ国外で5年以上の職務経験を積んだ人が対象で、最長18ヵ月まで関連分野での研修を行うことができる。観光、レストランおよび医療・介護などホスピタリティーに関しての研修は、最長12ヵ月となる。

J-2家族ビザ

J-1ビザ保持者の配偶者、および21歳未満の子どもが対象。配偶者は、移民局から就労許可証を取得すればアメリカ国内で就労可能。

H-3ビザ

企業で研修する人に与えられるビザである。J-1ビザのようにアメリカ国外の学校を出ていなければいけないという条件はなく、最長2年間の研修を受けることができる。ただし、受け入れ先企業が、研修指導者や研修内容を記載したプログラムを作成する必要がある。 研修を受ける本人は、アメリカで研修を受けた後、必ず本国に帰国する意志があり、本国で研修に関連した業務に就くことが決まっていることが条件である。また、研修はアメリカ市民の業務を奪うものであってはならない。申請には、受け入れ先企業がアメリカの移民局に申請書を提出して、ビザの許可を得る必要がある。