リロ・リダック 不動産エージェント
岡畠伸江(おかはた・のぶえ)
大阪府出身。ニューヨークの不動産業界で20年以上の実績を持ち、マンハッタン、クイーンズ、ブルックリンを中心にニューヨーク市全体の賃貸・投資・売買まで扱う。
ニューヨークの不動産業界歴20年超、あらゆる顧客のニーズに応える物件探しのプロフェッショナルとして活躍する岡畠伸江さん。「住」を通じた出会いを笑顔に変えるのが喜びだという。多くの顧客から信頼を得ている理由は、明るくパワフルな人柄だけでなく、この仕事への情熱があるからに他ならない。
ーニューヨークに来たきっかけは。
元々は歌手志望だったんです。歌が好きな父の影響で自然に歌に親しむようになり、歌手になるのが小学生のころからの夢でした。本気で歌手を目指して、オーディションを受けたり地元大阪・北新地のライブハウスでジャズを歌ったりしていました。ニューヨークのジュリアード音楽院で音楽と英語を同時に学べるESLプログラムがあり、参加したのが渡米のきっかけです。たった一度の人生ですし、「本場のR&Bは現地でしか学べない」と思い切って仕事を辞め、20代後半でニューヨークに来ました。

歌手を目指し、ライブハウスで歌っていた当時の岡畠さん
ー勇気がいったと思います。
ジュリアードの寮に住み、リハーサルルームを使ってボイストレーニングを受け、ジュリアードの学生とも交流できる最高の環境でした。ダンサーや歌手、ブロードウェイ俳優もたくさんいて、私もそんなアーティスト志望のひとりでした。日本では「歌手になるには若くなければ」「コネがないと無理」などと言われることが多いですが、ニューヨークは誰でも受け入れてくれます。度胸と運があれば大丈夫。人に何と言われようと、歌がうまくなくても、人前で歌い続けて道が開ける。実際にそうやって有名になった方もたくさんいます。
私が渡米するころの日本はまだまだ女性のキャリア形成が難しく、30歳手前で結婚ラッシュもあり、ちょうど「負け犬」という言葉が流行していた時期でした。そんな社会で働いて、自分で稼いだお金で来たからには、英語も歌も真剣に学び、大好きな音楽に思い切り触れ、3カ月の留学期間を全力で満喫しようという気持ちでした。
ー不動産業界に入ったきっかけは。
友人の部屋探しで訪れた日系の不動産会社「JCSA」で、急募採用の広告を見かけたのがきっかけです。3カ月の留学が終わったら帰国する予定でしたが、興味本位で面接を受けたところ、ぜひ来て欲しいと説得され、人とのコミュニケーションが大好きだった私は、それが活かせる仕事かもしれないと思い、この世界に飛び込んだのです。その直後に9.11が起きました。帰国を決める人が多いなか、私は逆に、ニューヨークに残りたいと思いました。その後の5年間は仕事にも恵まれ、毎日ニューヨークの音楽シーンを肌で感じ、好きなライブに通い、家族の精神的なサポートもあり、人生で一番楽しい時期でした。不動産エージェントのライセンスもそのころに取得しました。その後、ご縁がありRelo Redac, Inc.(リロ・リダック)に入社しました。
ー担当されているエリアや物件は。
ニューヨーク市全体をカバーしていますが、主にマンハッタン、クイーンズ、ブルックリンで、賃貸・投資・売買すべてを扱っています。賃貸は駐在員の方が多いですが、留学生や永住者の方など、あらゆるご依頼に対応しています。
ー賃貸は岡畠さんに頼むと1日、遅くても2日で決まるとか。
ニューヨークでは、良い物件は即日で無くなってしまいます。特にクレジットヒストリーがなくても契約できる物件はごくわずか。私たちはそのなかでもベストな物件をご紹介していますが、即決できなければその物件はすぐに他の方に取られてしまうという、日本の不動産市場との大きな違いがあるので、常に迅速な対応を心がけています。
「リロ・リダック」では、短期滞在アパートのご用意から賃貸住宅の契約・入居まで、各専門チームが手厚くサポートいたします。不動産エージェントの私は内覧と相談に専念し、生活関連の手続きは専門のアフターケアチームが対応することで効率を図っています。私はとにかく“即レス”で有名(笑)。すぐにお返事することが、お客様の安心につながると考えるからです。返信が遅れるのは、飛行機か地下鉄に乗っているとき、あるいは病院にいるときくらいですね(笑)。
ーお客様との信頼関係を築く秘訣は。
たとえばお子様がいらっしゃる場合、学校情報も気になるところですが、実は不動産業者は学校の評価についてお伝えできません。「誘導」と見なされてしまうからです。ただし、その代わりに学校の評価の調べ方をまとめた独自の資料をお渡しするなど、お客様のニーズに応える工夫をしています。人間にとって最も基本的な「衣・食・住」のうち「住」を扱っているわけですから、家を見つけるには、まずお客様のニーズを知ること、つまり「お客様自身を知ること」が大切です。どれだけ短時間でその人の本質に近づけるかがカギとなります。
また、私は普段は大阪弁で明るい性格ですが、初対面のときはそれをあまり出さず、会話が進むに連れ徐々に自然な自分を出していくようにしています。少しずつ打ち解けて会話が弾むようになると、そのうちクスクスっと笑いが出て、その瞬間、ゆっくり膨らませてきた風船がパンと割れるように一気にお客様との距離が縮まります。私は本当にお客様と話すのが大好きで、お客様に喜んでいただきたくて、この仕事が大好きで…そんな気持ちがお客様にも伝わっているとうれしいのですが、自分を飾らずに出すことが、信頼関係を築く助けになっているのだと思います。

リロ・リダックYouTube動画より
ーこれまでのキャリアで印象に残っていることは。
ある売買契約で買う側の代理人を担当したときのことです。クロージング過程で弁護士、会計士、オーナーたち全員が集まり、最後に鍵の受け渡しをするときに、売り手の方が号泣されたのです。びっくりして、どうしたのか聞いたところ、その家はお母様のために初めて買った家で、お母様が亡くなられたため売ることになり、家族の思い出が詰まった家の鍵をいざ渡すとなると感極まってしまったのだそうです。その場にいた全員が思わずもらい泣きしてしまいました。そのときに、「不動産エージェントはお客様の人生の分岐点に立ち会う仕事なんだ、人の人生の1ページに存在するすごい仕事なんだ」ということに気づき、「お客様も人生の重要な場面に岡畠という担当者がいたことを忘れないだろう」と思うと、ますますこの仕事が好きになりました。
ーニューヨークでの物件購入について
経済的に余裕があれば、不動産投資されることをお薦めします。今は円安なので投資する人は減っていますが、長期的に見ればニューヨークの不動産価格は上がり続けています。これまでも9.11、リーマンショック、新型コロナで一時的に価格は下がりましたが、いずれも最終的には上がっています。
物件はとにかくロケーションが第一です。セントラルパークの近くや、自由の女神が見える場所など、ロケーションが良ければ、最終的には売れます。自己使用目的で物件を購入し、数年住んだ後に賃貸に回すことも可能です。もちろん、自宅用の不動産購入も取り扱っています。
ー今後の目標は。
この仕事が大好きなので、ずっと続けていきたいですね。そして賃貸、売買、投資すべてにおいて、最終的にはお客さまをハッピーにしたい、一緒に笑いたいというのが、私の目標です。不動産の街ニューヨークにいるからには、歴史に残る不動産取引を成功させたいと思っています。「リロ・リダック」のYouTubeチャンネルでは、私も出演してさまざまな情報を発信していますので、ぜひチェックしていただき、お気軽にお問い合わせください。
Relo Redac, Inc.
1010 Ave, 4th Fl, New York, NY 10018
不動産エージェント
岡畠伸江(おかはた・のぶえ)
✉️ nokahata@redacinc.com
☎️ (646) 901-7155
リロ・リダックYouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/@reloredac
Interviewer: Sonoko Kawahara
2025年5月20日取材