ニューヨークで住居を買う

通常、家の購入に際して住宅ローンを組む場合は、事前に銀行またはモーゲージ会社と相談して頭金の額と、自分の収入とクレジット査定から住宅ローンの上限額を調べ、予算を決める。
予算を決める段階から、信頼できるエージェントに条件に応じた物件探しを依頼する。日系のエージェントは日本人が気にするポイントに精通している場合が多い。

購入物件のタイプ

コープ Coop=Cooperative Apartment

ビルを所有する会社の株を購入し、ユニットの賃貸権を得る住居のこと。
コンドミニアムに比べて比較的安価に購入できるが、株の購入、すなわち賃貸権の取得には厳しい審査がある。

ビルの不動産税やモーゲージは所有会社が支払い、各居住者はその分担を毎月のメンテナンス費用とともに支払う。
住民が共同運営しているため、入居希望者への審査は厳しい。
株の所有者(居住者)が選択する管理組合が規律や運営方針に関する決定権を持ち、取り決めを行う。そのためサブレットや売却時に不利になることもあり、一時赴任者にはあまり向いていない。
投資にも不向き。

コンドミニアム Condominium

日本でいう分譲マンション。
コープと最も違う点は、コンドミニアムの場合、所有者が不動産の権利を持つ点。

入居者に関してもコープほどには制約はなく、サブレットや改装、賃貸、売買も比較的自由。数年で日本に帰国する予定のある人や、そこに長く住むつもりのない人は、コープよりコンドミニアムを買った方がよいだろう。
また、近年では投資物件として注目されている。

一戸建て House

基本的に日本と同じだが、日本サイズのものはまずなく、ベッドルームは最低でも3つあり、それと対になるようにバスルームもある。ガレージも1台または2台分、庭付きで地下室のある家も珍しくない。
ニューヨーク郊外は比較的築年数が古い物件が多いが、日本と違ってオーナーが定期的に改装するので古さを感じさせない物件も多い。
学校区のよい地域は根強い人気があり、値段も安定している。

契約手順

交渉

希望物件が決まったら、購入希望価格や支払い方法、クロージング(後述)の日程を売り手に提示する。
トラブルを避けるため、交渉はエージェントを通して行う。とくによい物件を手頃な価格で購入するためには、エージェントの適切な助言が欠かせない。

ホームインスペクション(一戸建て)

売買契約が成立すると、ホーム・インスペクションの業者に依頼し、家の状態を検査する。白アリ、地下の水漏れ、電気配線などは重要なポイントである。
この結果が価格交渉の対象にもなり、また、それによる契約破棄もあり得る。

契約

交渉の末、折り合いがついたら契約の締結となる。これは売り手側弁護士と買い手側弁護士を介して行われる。

契約内容の再検討や一戸建ての場合、ホーム・インスペクションの交渉内容が再確認される。
弁護士は不動産取り引きに慣れた人を雇うように気をつけたい。

ローンの申請

住宅ローンをつけて購入する場合は契約書締結直後、ローンの申請を開始する。
直接金融機関に申請することもできるが、モーゲージブローカーを通じて申請すると、種々のモーゲージ商品のなかから顧客のニーズに合ったものを選び、手続きがスムーズに進むよう、クロージングまでコーディネートしてもらえる。
申請後、銀行のCommitment Letter(貸付承認のレター)が出るまで、1ヵ月半〜2ヵ月かかる。

タイトルサーチ(所有権調査)

弁護士がタイトルカンパニーを雇い、所有権の確認、抵当権の有無を調査する。通常2週間で結果が出る。
調査結果に問題がある場合は売主がクロージングまでに問題解決にあたる。

管理組合の認可

コンドミニアム、コープの場合は、管理組合の認可申請手続きが必要となる。コンドミニアムの場合はよほどのことがない限り却下されることはないが、コープは面接が必要な物件もあり、書類審査、面接審査の内容によっては却下されることもある。一度却下されると再申請ができないため、売り手や売り手エージェントにもアドバイスを求めるなどしたい。

最終インスペクション

クロージングの前日あるいは当日に物件の最終インスペクションを行う。
床や壁の損傷や汚れなど、契約書サイン時からあった状態に関しては“as is(現状)”のままで購入するのが一般的だが、台所機器やエアコンなどの機械類が壊れている場合は一般的には売り手の責任となる。その場合は弁護士に報告し、売り手に修理を依頼するか修理代を支払ってもらうかのいずれかの形で処理する。

クロージング

クロージングとは最終引渡しのこと。これが無事に済んで、やっと正式に持ち主になることができる。
一般的には売り手と買い手の弁護士、エージェント、銀行からの弁護士、タイトルカンパニーの間で行われる。
所有権調査の確認、物件代金および諸々の費用の精算、ローン関係書類の契約、修理必要箇所の確認とその調整、役所への登記手続きなど、すべて弁護士が代行して進めてくれるが、わからないことがあればその都度、説明を求めよう。クロージングが終了した後では何を言っても無効となる。