ものづくりの生産性・品質向上を実現させるソリューションを提案しています。
1920年に創業し、当初はモーターの販売や修理を主に手がけ、高度成長期には日本の産業の柱となった自動車産業を支えてきた明治電機工業。
自動車産業の海外進出に合わせて事業のグローバル化を推し進めるために1987年、イリノイ州にMEIJI corporationを設立。
2017年、同社が創立30周年を迎えた節目の年に社長に就任した、佐合俊治氏に話を伺った。
自動車メーカーをはじめとする生産現場の課題を解決しています。
貴社の沿革を教えてください。
2020年に創業100周年を迎える、明治電機工業が本社です。
創業当初は繊維機械のモーターの販売と修理が主な事業でした。そして、戦後、高度成長期に「自動化」という言葉が日本産業を取り巻きました。我々もその波に乗ろうと、さまざまな電機メーカーや機械メーカーと手を組んだのですが、なかでも自動車産業は高度成長期の大きな柱でしたので、自動車メーカーの機器の調達や生産の支援に力を注いだことが今の事業につながっています。
MEIJI corporationは1987年に設立し、2017年に創立30周年を迎えました。
アメリカに進出したきっかけは、1985年にアメリカで「プラザ合意」が発表されたことです。それにより、円高が進み、貿易摩擦の問題で輸出が制限され、日本の産業界が空洞化していくことが予測されました。顧客である自動車メーカーや自動車関連企業、工作機械メーカーが次々にアメリカに進出していき、我々も日本で行っている協力を北米でもしていきたいと立ち上げた会社です。
ここシカゴ近郊には、名だたる自動車メーカーや工作機械メーカーが進出しましたので、ここに本社を構えることになりました。
主な事業内容について教えてください。
いわゆるファクトリーオートメーションという、工場の自動化を行うことで、お客様の工場の維持や管理、問題の改善、生産性や品質向上のためのソリューションを提案しています。
具体的な事例を挙げますと、あるクライアントが、生産効率を上げたいがどこに問題があるのかが分からないという課題を持っていました。そこで我々が工場の現場を調査し、工程内にある不良製品流出を防ぐための製品検査に時間がかかっていることが要因だと特定。それを改善するために、画像検査装置の導入を実施しました。その結果、検査スピードが上がり、品質を維持しながら生産効率を上げることに成功しました。
主に扱っているのは、自動車や工作機械を製造するための生産設備です。直接車に搭載する製品や工作機械そのものではなく自動車を作るための生産設備に使われる機器や、生産設備そのものをエンドユーザーに納入しています。
社員数は約70名。日本からの出向者は私を含めて5名です。残りは全員現地採用で、なかには日本語と英語のバイリンガルの日本人社員もいます。
いちばん力を入れていることは何ですか。
北米市場も日本同様、人手不足、労働力低下が深刻になると思います。我々はそれを自動化で解決したいと考えています。
日本も、高齢化によって働ける人口が減少します。ですから、機械にできることは機械に任せて、人はもっと高い次元のことをやっていくということを今後も提案したいです。
現在、人工知能などもますます発達してきています。我々が提案する機電一体装置(機械技術と電子技術を駆使した装置)と人を組み合わせることで、もっと効率的な生産や、より良いものづくりを実現させる環境づくりをしていくことが私たちの使命だと思っています。
物流の自動化においては、お客様の製品を工場内や倉庫内で機械が搬送するAGC(Automatic Guided Cart)システムの納入に力をいれています。さらに、幅広く生産・物流・全体管理システムのソリューション提案を行っています。
工場全体の最適化を我々が提案することで、人間はもっと次元が高く、付加価値の高い仕事ができるようになると考えています。
シカゴ近郊に競合他社はありますか。また、貴社の強みを教えてください。
競合他社はたくさんあります。私たちのように日本から進出してきた企業もあれば、同じような事業を行っている米系企業もあります。
そことどう差別化していくかは、モノを左からおろして右に売る、いわゆるQCD(クオリティー、コスト、デリバリー)だけでなく、さらにお客様のご要望、課題は何なのかを見極め、その課題を解決させる製品を我々がしっかりお納めするということであり、そこに我々の付加価値があると思っています。
さまざまなメーカーのものを我々がシステムアップしたり、なにかを加えたりすることで新たな価値が生まれます。お客様の課題解決を目的として、サービスを提供できることが我々の強みだと思います。
佐合社長の経歴について教えて下さい。
1983年に新卒で明治電機工業に入社し、現在に至ります。
最初は愛知県知立市にある営業所に配属されて、トヨタ自動車さんをはじめとするトヨタグループの営業担当になり、自ら営業をしながら、営業の管理なども行ってきました。
そして、2017年5月にMEIJI corporationの社長に就任し、アメリカに赴任して来ました。
いずれ今のような立場になることを見据えていたのですか。
いえ、全くそんなことは意識をしていませんでした。ただ、お客様に対しては、脇目も振らず一生懸命やってきました。今の立場があるのは、その積み重ねの結果だと思います。
もちろん、いつも上手くいくことばかりではなく、失敗もたくさんしてきました。でも、社員時代も会社を辞めたいと思ったことは一度もありませんでした。それは支え合える仲間たちがいたからだと思います。
経営者になって感じる、苦労や喜びはありますか。
厳しいところは、経営者には迅速な判断が必要だということです。そして、何においても最後は私が決めるということ。その責任の重大さはやはり感じますね。
あとは、社員にいかに働きやすい環境を作ってあげられるかということも常に考えています。
喜びは、たくさんの方々と知り合えることです。これは私の人生観でもあるのですが、常に新しい方々と出会い、日々勉強させていただけることに喜びを感じています。
好きな言葉は“一生勉強、一生青春”。新しいことをやれば、前進します。
座右の銘を教えてください。
一生勉強、一生青春。これは、詩人の相田みつをさんの言葉です。
まずは、「やってみよう、聞いてみよう」と、臆せずに一歩踏み出すことを、歳を重ねても続けていきたいと思っています。新しいことをやれば、新しい感動もありますし、新しいときめきもあります。常に新しいことをやろうという意識があれば、前にも進みますよね。
リーダーシップを取るうえで、意識していることはありますか。
日本の親会社があって、我々の会社があるので、社員には明治電機DNAをまず学んでもらうようにしています。具体的にどういう商売をやってきた会社なのか、どんな価値観で事業を行っているのかを、共有することが大事だと思っています。
とくにアメリカは日本のように新卒の入社式が一斉にあるわけではなく、新卒からさまざまなキャリアを積んだ方々までが入社してきます。それでも、入社時には同じプログラムの社員教育を行います。同じプログラムを受けることで、同じ知見や価値観を持って活動できるチームを作っていきたいと思っています。
アメリカでビジネスをするうえで大切だと思うことを教えてください。
場所はアメリカであっても、やはり我々は日系の会社ですから、日本のおもてなしの心は大事にしています。
茶道の世界に、「用意」と「卒意」という考え方がありますが、そのふたつを兼ね備えることが大切だと思っています。用意は、客人をもてなすために主人があらかじめ準備すること。卒意は、その主人のおもてなしに応えるために、客人に求められる心構えや行動のことです。
おもてなしというのは、主客一体となって、主人と客人の相互作用で成り立つもの。ビジネスにおいても、自分の考えでどんどん突き進むのではなく、日本のおもてなしの心、思いやりや謙虚な気持ちを大事にしていきたいと思っています。
今後中西部に進出する日系企業や駐在員の方にアドバイスをお願いします。
今のアメリカの状況を考えると、まだまだ進出を考えている日系企業や、アメリカでの事業を重視している企業は多いと思います。ここには、30年40年と続いている企業もあるので、たくさんの企業から話を聞いて、ひとつでも多くの情報を自ら足を運び取ってくるのがよいのではないでしょうか。
私も営業で、ずっと自分の足で稼いで仕事しています。自らの経験から言えることは、トップの立場の者が企業へ出向けば、その企業のトップと話せます。その話はとても参考になりますし、やはり経営者ではないと聞けない話もあります。進出時にはそのようにして情報収集をすることをおすすめします。
最後に、今後の展望を教えて下さい。
私たちの仕事は、お客様を取り巻く環境次第で変わります。
例えば、自動車関連会社においては、自動車が今後どうなっていくのか、そのなかでどう支援をしていけるかを考えていかなくてはいけません。自動車は、今までは速く走れる車、燃費が良い車、安全安心な車が求められていましたが、これからは車を使う価値がどんどん変わっていくと思います。いわゆる安全安心という点では、今までは乗っている人や同乗者だけ守ればよいという発想でしたが、今後は外の歩行者も守る、対向車も守るなど、もっと広い意味での安心安全を実現させる車が求められます。ほかには電気自動車のように、いわゆる大気を汚さない、環境に優しい車はもちろん、逆に二酸化炭素を排出しないばかりか、走ることで大気をもっとクリーンにする車などがさらに開発されるでしょう。また、日本は自然災害が多いですから、例えば災害で停電したときに、電気を起こせるという車もあります。
我々は何をすればそういった車を製造するための支援ができるかということを、業界の動きを敏感に察知し常に考えていきたいと思っています。これから技術の革新によって、自動車産業だけでなく、さまざまな産業に変化が起きます。そういったものづくりの移り変わりに、我々がどこよりも早く対応できる企業でありたいです。
代表取締役社長 President
佐合 俊治 Shunji Sago
1983年、明治電機工業(株)に入社し、現豊田支店に配属。トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループの営業を約30年間担当し、同部署の課長、部長を務めた。2011年4月に執行役員第一営業本部長、2014年4月に取締役ソリューション事業本部長を歴任。2017年5月にMEIJI corporation社長就任。
Interview:Kaori Kemmizaki
※2018年11月28日取材
ご意見箱フォーム