【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】Georgia Department of Economic Development / Director, Japanese Investment / ジョセフ・ハントマン

Georgia Department of Economic Development
75 5th St NW, Suite 1200, Atlanta, GA 30308

ジョージア工科大学国際関係学部、同大学院国際関係学部卒業。在アトランタ日本国総領事館広報文化センターでデジタルおよび印刷物のマーケティング、イベント企画、管理サポートを担当。2012年からジョージア州商務省日系企業部門マネージャーとして日米間の投資と貿易の支援および促進に従事。21年ジョージア州商務省東京支部所長。同支部には22年4月末着任。

チームプレーで誘致を支援、
日系企業と「息の長いお付き合い」を

400社を超える日系企業が500以上の事業拠点を構え、3万人以上の雇用を創出しているジョージア州。
誘致候補地としての利点と、官民挙げての支援体制について聞いた。

ー これまでに担当してきた日系企業の誘致案件は。

一例として挙げると、大塚化学、リンナイ、ヤハタなどです。大塚化学は自動車のブレーキパッドのセラミック素材をつくっている会社です。瞬間ガス湯沸かし器のリンナイは、以前からジョージア州ピーチツリーシティにアメリカ本社と営業事務所があったのですが製造拠点はありませんでした。工場を誘致するということになり、ジョージア州南東部全般で候補地を検討されました。現在、グリフィンに工場を建設中で、来年から同拠点で本格的に稼働を開始します。

ー 日系企業誘致の今後の方針は。

ジョージア州商務省が日本事務所を開設した1973年当時は製造業を誘致することが最大の目的でしたが、今後はITやソフトウエア開発、先端技術、医療機器関連会社へのアウトリーチに力を入れたいですね。もちろん、今以上に製造業への支援も続けていきます。業種を問わず幅広く日系企業との関係を深めていきたいと考えています。
具体的には、トレードショーやカンファレンスなど日系企業の方々と直に対話できる機会を設けたり、ウェビナーなどを活用してより多くの企業にジョージア州の魅力をアピールしていく予定です。
また、スタートアップ企業や中小企業との関わりを深めるために、日本各地の商工会議所と連携する他、新規進出や事業拡大を支援するアメリカ商務省内の対米投資プログラム、セレクトUSAの日本側担当者やジェトロ(日本貿易振興機構)とも協力しています。

豊富な労働力人口と充実した物流インフラが、
ジョージア州に拠点を置く強みです

ー 日系企業がジョージア州に拠点を置くメリットは。

豊富な労働力人口と充実した物流インフラがジョージア州の強みです。ジョージア州の人口は全米で9番目に多く、労働力人口は500万人以上です。人口成長率も健全なことから今後もさらなる労働力人口の増加が見込めます。また、ジョージア工科大学に代表されるように優れたテクノロジー系の4年制大学があること、企業が求める即戦力を育成する州主導の職業訓練プログラム「クイックスタート」を設けていることも大きな特徴です。クイックスタートでは、先端技術、自動車、航空機、ライフサイエンス、食品、流通などさまざまな業種の訓練を50年以上実施してきました。このような制度を採用したのは全米でジョージア州が初めてです。
パンデミック前のデータですが、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港は1日平均2,700便が離着陸し、27万5,000人が乗り降りする、世界一利用客が多い空港です。直行便はアメリカ国内150都市、日本を含む海外50カ国75都市に飛んでいます。アトランタ空港に拠点を置く航空貨物会社は14社もあります。サバンナ港は、航路数、大型コンテナの寄港回数のいずれにおいてもニューヨーク・ニュージャージー港を追い越していますし、輸出入取扱量は2000年から17年にかけて4倍以上に増加、全米で4位の規模です。ブランズウィック港は東海岸で最も重要な自動車の輸出入港として知られている他、穀物の取扱量も多く、全米で2番目に大きい穀物専用施設を持っています。

 

ネイティブ並みに日本語が流暢なハントマン氏。「この人と話したい、このテレビドラマが観たいなどと何か目的を持つこと。それが上達の秘訣」と教えてくれた

ー ジョージア州における企業誘致のポリシーは。

「チームプレー」に尽きるのではないかと思います。ジョージア州では州商務省が音頭を取って、州の労働省、教育省、運輸省、さらには一般企業や教育機関が連携して企業のニーズに合わせたチームを組んで誘致を進めています。このパートナーシップは計画段階から始まり、誘致が実現して工場やオフィスが稼働するまで、さらにはその後々まで続きます。まさに「息の長いお付き合い」とでも言いましょうか。州商務省には誘致および既存企業支援のスタッフが20人以上もいるんですよ。ジョージア州にはカウンティ(郡)が159もありますが、それぞれの自治体との代表者とも随時協力しています。これほどのチームプレーで企業誘致を支援する州はアメリカ国内でも希少な存在だと自信をもって言えます。

ー ジョージア州が誘致したい企業とは。

コミュニティーの一員としてジョージア州に投資してくれて、パートナーとして長豊富な労働力人口と充実した物流インフラが、ジョージア州に拠点を置く強みです。29く関係を築くことを第一に考えてくれる企業です。日系企業について言えば、日本がどんな国でどんな文化を持っているのか、ジョージア州の人たちにいろんな機会を利用して教えてあげてほしいですね。日米協会やジェトロのイベントなどに参加していただければ、日本についてもっとジョージア州の人たちにアピールできると思います。

ー 日系企業の駐在員とその家族へのサポート体制は。

在アトランタ日本国総領事館、ジェトロのアトランタ事務所、120法人以上が参加するジョージア日本人商工会があります。日本とアメリカの相互理解を深めることを目的に設立されたジョージア日米協会では各種イベントやクラスも開催し、日本人とアメリカ人のネットワークの場を提供しています。アトランタ近郊のメーブルトンには日本語補習授業校があり、2018年にはピーチツリーコナーズに幼稚園年少と小学生を対象にした日・英語のチャータースクールもできました。生活や教育面でのサポートが充実していることから、駐在員とその家族には暮らしやすい場所だと思います。

 

日系企業の魅力は、信頼度が高く、安定感があることです。

 

ー 日系企業の魅力とは。

信頼度が高く、安定感があることです。いったん現地に進出してからは、そこを「居場所」として大切に考えてくれている点です。自然災害が起きたときも率先して現地支援に尽力してくれるのが日系企業の素晴らしいところ。何年か前にジョージア州アデアズビルで竜巻が起きた際にも、現地の日系企業が被災地復興に貢献してくれました。大変ありがたく、深く印象に残っています。南東部の州のなかでジョージア州はまだそういった災害は比較的少ないほうですが、万が一のときに信頼できるパートナーがいると心強いです。

 

ハントマン氏が誘致にかかわったリンナイの瞬間湯沸かし器工場の組立ライン(ジョージア州グリフィン)

ー 日米間を行き来するなかで感じるビジネストレンドの変化は。

誘致案件としてはこれまで、機械や自動車、関連部品などの製造業が圧倒的に多かったのですが、最近は食品、IT、ソフトウエア開発、データ処理、医療機器関連の企業やスタートアップ企業からの問い合わせが増えています。また、日系企業のみならず新型コロナ感染症のパンデミック以降の世界的な傾向として、物流、倉庫、Eコマース関連企業の力が急速に強まってきており、ジョージア州の企業構造もかなり変わってきました。

ー 日本に興味を持ったきっかけは。

大学の寮で同じ部屋に住んでいた友人が日米のハーフで、日本にいる彼のお母さんの親戚から毎月、雑誌や家電品、スナックなどが入った荷物が送られてきたのです。そのどれもが、アメリカ人から見たら「なにもそこまでしなくてもいいのに」と思うぐらい細かいところまで作り込んでいて、完成度のレベルがアメリカの製品と全く違う点にびっくりしたのが日本に興味を持ったきっかけです。日本とアメリカの文化の違いや考え方の違いにも圧倒されて日本のことをもっと知りたいと思い、大学の第二外国語で日本語を勉強しました。日本で半年間インターンをして、卒業後は在アトランタ日本国総領事館の広報文化センターに就職。仕事柄、日本の古典文化や芸能にも親しむことができました。もともと音楽が好きだったせいもありますが、日本の伝統音楽にはものすごく惹かれましたね。箏、三味線、和太鼓などの和楽器は西洋の楽器と比べて楽譜の書き方や読み方が全然違うでしょう?あの楽譜から音楽を奏でられることに驚きと魅力を感じました。

 

ー 日本製品の存在感が薄れている今、日本の技術や製品の良さを知ってもらうためには。

技術、クオリティーともに万全で、経済的パートナーとしても非常に信頼できるのが日系企業です。そこをもっと宣伝してほしい、もっと自信を持って自慢してほしいですね。パンデミック収束にはまだ時間がかかるだろうし、ロシア-ウクライナ戦争からも分かるように世界状況はどんど
ん不安定になってきていますが、日米のパートナーシップは盤石です。この点も強みです。日系企業の存在感を高めるには現地の人との関係を深めることが最重要、それにはアメリカで拠点を構えるのがいちばんです。アメリカ進出を考える際にはぜひジョージア州をご検討ください。

 

 

アトランタ・テネシー・アラバマ・テキサス便利帳 Vol.18本誌掲載

Photographer : Mariko Kajikawa
Interviewer / Editor : Asami Kato
2022 年 3 月 18 日取 材