H1Bなど短期就労ビザに制限【2020年6月22日大統領令】

2020年6月22日、トランプ大統領は新たな大統領令に署名。これにより、一部の就労ビザに制限が加えられます。
アメリカでは新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響で失業者が急増。今回の大統領令は、職を失ったアメリカ人労働者の雇用を守るための措置だといいます。

大統領令 〜短期就労ビザの制限〜

2020年6月22日に新たに大統領令が発表されました。この声明は2020年6月24日午前12時1分から施行さ れ、2020年12月31日まで有効となります。今回の大統領令により、H1B専門職ビザ、H2B季節労働者ビザ、J-1交換留学・研修ビザ、L-1関連会社間転勤ビザ申請者及び、これらビザ申請者の家族のアメリカへの入国制限が設けられます。

J-1交換留学・研修ビザには14種類ありますが、その中の企業研修、学校の先生、キャンプカウンセラー、オペア、大学生のインターンシップや夏のワークプルグラムが対象となります。これらのビザ申請者は最長でも年末まではビザが申請できなくなります。

幸い日系企業によく使われている国家間の条約により設けられているEビザは対象とはなっていません。

対象となるのは、(1)大統領令発効時点で国外に滞在していた人、(2)大統領令発効時点で有効な非移民ビザスタンプを保持していない人、且つ(3)大統領令発効時点で有効なビザスタンプ以外の旅行許可証(トランスポーテーションレター、ボーディングフォイル、臨時入国許可書等)を保持していない人、あるいは大統領令発効以降に発給された米国への入国を許可する証書を持たない人です。

以下の者は対象外となります。(1)アメリカの永住権保持者、(2)アメリカ市民の配偶者や21歳未満の子供、(2)アメリカ国内で食品サプライチェーンに不可欠な業務に従事する人、(4)国務長官と国土安全保障長官あるいは指名された者によりアメリカの国家利益になると判断された人。

アメリカの国家利益とはアメリカの防衛、法執行、国 家安全に重要な人物;新型コロナウィルス感染者の治療従事者;新型コロナウィルスの医学研究者;緊急且つ継続的にアメリカの経済回復を促進するために必要な人を指します。

なお、これらのビザの一時発給停止により、同伴家族としてビザを申請できる年齢を超えてしまった子供に関しては、法の適用外とします。各国領事館のオフィサーが上記の例外に該当するか判断することになります。

今後、国家安全保障長官、国務長官、労働局長などはこれらの声明を受けて、さらに適切な措置を構築し施行することになります。これら政府機関の今後の課題として下記の項目があげられます。

  • H1Bの年間枠の効率的な割り当てを再検討し、H1B保持者の存在がアメリカの労働者に不利にならないように、適切な措置をとる。可能性としては高所得者を優先するなど考えられる。
  • アメリカ国内でH1B申請者や第2と第3優先枠による永住権申請者がアメリカ人の職を奪うものではない
    ことを再確認するために規定を設け、必要に応じて調査する。
  • H1B雇用主のLabor Condition Application (LCA)の違反がないか調査する。
    永住権申請者は本人の経歴情報、写真や指紋などの生体認証情報を登録するまでは永住ビザの申請やアメリカへの入国はできないように確認すること。
  • 強制退去命令を受けている者、入国拒否や退去処分の対象者、逮捕や有罪判決を受けた者がアメリカ国内で就労できる資格を阻止する措置を取る。

新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延のため2020年3月19日より各国でのアメリカの非移民ビザ面接が中止しており、未だ再開の目途がたっておりません。現時点では緊急面接と郵送による延長申請ができる人のみビザが審査されています。

さらに、4月22日には大統領の声明が発表され、新規の永住ビザの申請を60日間暫定的に停止しました。これにはアメリカ市民の配偶者や21歳未満の子供、米軍従事者、米国法執行を助成する者、米国の国家利益になると判断されたものなどが対象外とされています。

今回の声明を受け、国外での永住権申請の一時停止は年末まで引きのばされることになります。国土安全保障長官は国務長官と労働長官と共に6月24日から30日以内、其の後60日毎に状況を検討し、必要に応じて訂正を助言することになります。

なお、色々な情報が出回っていますが、常に新しい政府の方針が発表されているので、必ず最新情報を確認し、専門家の意見を求めてからアクションを取るように心がけたほうがよいでしょう。

本ニュース記事に関する注意事項(DISCLAIMER)
本雇用・労働・移民法ニュース記事は弁護士として法律上または専門的なアドバイスの提供を意図したものではなく、一般的情報の提供を 目的とするものです。また、記載されている情報に関しては、できるだけ正確なものにする努力をしておりますが、正確さについての保証はできません。しかも、法律や政府の方針は頻繁に変更するものであるため、実際の法律問題の処理に当っては、必ず専門の弁護士もしくは専門家の意見を求めて下さい。テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所および筆者はこの記事に含まれる情報を現実の問題に適用 することによって生じる結果や損失に関して何ら責任も負うことは出来ませんのであらかじめご承知おき下さい。

 

【執筆】
弁護士 大蔵昌枝(Masae Y. Okura, Esq)
Tel (678) 426-4641
mokura@taylorenglish.com
https://www.taylorenglish.com/
Taylor English Duma LLP
1600 Parkwood Circle, Suite 200, Atlanta, GA 30339