帰国前の慌しい準備のなかでも決して忘れてはならないのが、医療に関すること。
ここでは、現地で受けている医療行為をそのまま帰国後も継続する場合の注意事項や、日本に持って帰ることのできる医療品に関する事項、帰国後に必ず受けておきたい健康診断の項目について、その代表的なものを説明する。
帰国時に確認すること
医療関係の準備で早めにスタートしたいのが、現地の医師から入手する必要のあるもの。
手続きの時間も考えて帰国の1、2ヵ月前から始めるとスムーズだろう。
現地で予防接種を受けた場合は、「予防接種証明書(予防接種の種類・接種年月日・医師の署名が必要)」、現地で病気にかかり、帰国後も治療を受ける場合は、「病状経過診断書」を発行してもらう。ただし、海外で使用していた医薬品が日本では未認可なこともある。
その場合は帰国後、医師の判断で類似した医薬品を使うか、別の治療を新たに施されることになるが、当座のものとして医薬品を持ち帰る必要があるかどうかも現地の医師に相談しておくと安心だ。ただし、日本へ持ち帰れる医薬品の種類・数量には規定があるので、前もって確認をしておきたい。
また、海外赴任用の保険や海外旅行保険、日本の健康保険に加入していれば、赴任先で治療を受けて現地で医療費を負担した場合でも、のちに規定の範囲での還付を受けとることができる。
請求手続きには治療に要した費用の額がわかる書類「領収明細書」や「診療報酬明細書」などが必要で、いずれも日本語の翻訳文を添付することが条件となっている。日本語対応可能、または日本人医師がいる医療機関では、日本の健康保険手続きや必要書類の発行に柔軟に対応してもらえる。
医薬品・医療機器などを持ち帰る
一般の個人が自分で使用するために海外から医薬品などを持ち帰る(いわゆる個人輸入に当たる)場合には、原則として、地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)に必要書類を提出して、営利目的の輸入でないことの証明を受ける必要がある。
しかし、以下の範囲内については特例的に、税関の確認を受けたうえで輸入することができる。
個人輸入できる医薬品・医療機器などの数量
▼医薬品または医薬部外品
- 外用剤(毒薬、劇薬および処方せん薬を除く)
・標準サイズで1品目24個以内
・外用剤(※1):軟膏などの外皮用薬、点眼、薬など
・処方せん薬(※2):有効で安全な使用を図るため、医師による処方が必要とされる医薬品 - 毒薬、劇薬または処方せん薬…用法用量からみて1ヵ月分以内
- 上記以外の医薬品・医薬部外品…用法用量からみて2ヵ月分以内
▼化粧品
- 標準サイズで1品目24個以内
▼医療機器
- 家庭用医療機器(電気マッサージ器など)1セット
- 使い捨て医療機器(生理用タンポン、コンタクトレンズなど)2ヵ月分以内
- 体外用診断薬(排卵検査薬など)2ヵ月分以内
※1 日本の薬事法では、養毛剤、浴用剤、ドリンク剤など、人体への作用が緩和なものについて、医薬部外品とみなされる場合もあるが、個人輸入に関しては医薬品と同様の取り扱いとなる
※2 外国では食品(サプリメントを含む)として販売されている製品であっても、日本では医薬品に該当する場合がある
健康診断で検査しておきたい項目
【身体計測】身長、体重、視力、聴力
【内科診察】問診、聴診、血圧
【肺機能検査】 スパイログラム、胸部
【X線】 大角1枚、喀痰(かくたん)
【胃部X線】 直接平均12枚
【胃・大腸内視鏡】、【腹部超音波検査】 肝臓、胆のう、すい臓、ひ臓、腎臓、その他
【尿検査(6項目)】 蛋白、糖、ウロビリノーゲン、ビリルビン、潜血、沈査
【血液学検査(7項目)】 赤血球、白血球、血色素、ヘマトクリット、血小板数、血液像、赤沈
【免疫血清反応検査】CRP、ASO、RA、TPHA、ガラス板法
【血清ウイルス学検査】HBS抗原、HBS抗体(B型肝炎)、HA抗体、HCV抗体(C型肝炎)、HIV抗体 (※希望者のみ)
【肝機能検査】 総蛋白、A/G、ZTT、GOT、GPT、ALP、γ-GTP、LDH、総ビリルビン、アミラーゼ、コリンエステラーゼ
【脂質検査】 総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール
【腎機能検査】 尿素窒素、クレアチニン、尿酸、ナトリウム、カリウム、フロール
【糖尿病検査】 血糖、HbA1c
【心電図検査】
【眼底カメラ・眼圧】
【便潜血・寄生虫卵検査】
【婦人科検診】 子宮頸がん、乳がん など
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