ニューヨークで輝く人にスポットライトを当てる、 “ニューヨークで活躍する日本人”シリーズ。
今回ご紹介するのは、ダンサー、振付師、ダンス講師の小川由佳(Yuka Ogawa)さん。
パフォーマーとして舞台に立つ一方、インストラクターとして後進の指導にも携わる彼女のキャリアと、ニューヨークでのさまざまな出会いを通じて培ってきた学びや価値観、そしてダンスへの思いについて伺った。

Dreamer Dance NYCのショーケース「Live the Dream」にて
―現在どのような活動をされていますか?
ニューヨークを拠点に、ダンサー、振付師、ダンス講師として活動しています。ダンススクール・Peridance Centerに所属し、プロフェッショナルダンサーとしてのトレーニングを続けながら、オーディションを受ける日々を送っています。また、Broadway Dance Centerでは山田知央(CHIO)先生のアシスタント兼講師を務め、Dreamer Dance NYCではヒップホップ、ストリートジャズ、K-POPのインストラクターや、ショーケースなどの振付を担当しています。
―これまで、どのようなプロジェクトや舞台に携わってこられましたか?
リンカーンセンターで開催される『テーブル・オブ・サイレンス・プロジェクト(The Table of Silence Project 9/11)』には、2年連続でダンサーとして参加しました。150人以上のダンサーや音楽家が参加する大規模なパフォーマンスで、2回ともオーディションを経て出演することができました。そのほか、『国際エミー賞キッズアワード授賞式(International Emmy Kids Awards)』のエキシビジョンダンサーや、アメリカのシンガー・Kyleeさん、韓国のシンガー・YOYOMIさんのバックアップダンサーなども務めました。

国際エミー賞キッズアワード授賞式にて
―さまざまな分野のプロジェクトに携わっているのですね。中でも印象に残っている現場はありますか?
ダンスを学んでいた学生時代に師事していたDerek Michell先生のフラッシュモブですね。コロナ禍以前にニューヨークをはじめ世界で流行ったサプライズ企画で、公共の場でダンスや音楽をパフォーマンスして、プロポーズやお祝いなどを演出するイベントです。ブライアントパークで行われたプロポーズ・フラッシュモブは、当時ニューヨーク中で話題になり、メディアでも紹介されました。シンガーのCarrie Underwoodさんがそのフラッシュモブの動画に感動して、ご自身のミュージックビデオ「See You Again」に起用されたりもして。私もこの映像に映っています。
お誕生日や結婚式など、たくさんの方々の人生のビッグイベントにダンサーとして関わって、人が感動して涙を流している姿を目の前で見たことで、「人に感動を与えられる仕事にも関わっていきたい」と思うようになりました。
―ダンサーを志したきっかけを教えてください。
ダンスを始めたのは9歳の頃で、本格的にプロを目指したいと思い始めたのは高校3年生の時です。進路を決める際に、この先の自分の人生で「何を辞めたくないか」について考えたんです。ほかのことを切り捨ててでも、ダンスは続けていきたいと思いました。
―初めての渡米はいつでしたか?
初めてアメリカに来たのは、中学2年生の時のホームステイプログラムです。ダンスとは関係のないプログラムでしたが、その頃から、将来的に海外に行くことを意識し始めました。ニューヨークを選んだのは、ダンスをもっと学べる環境だったことと、高校時代の恩師であるDon Charles先生のアドバイスがきっかけです。ニューヨーク出身の彼が現地でダンスをしていた頃の話を聞いているうちに、「ニューヨークで踊っている自分」の姿を想像するようになり、実際に来ることになりました。

OPENHOUSE DANCE FESTIVALにて
―渡米した当時の心境はいかがでしたか?
当時は英語もまだそんなに話せなかったので、なんとなくノリで友達はできても、言葉で意思疎通をすることが難しくて、ホームシックになったこともあります。ですが、ダンスができる環境に行くと、言葉が通じなくても周りの人たちが盛り上げてくれたり、感動してくれたりして。自分の想いが伝わって、周りに受け入れてもらえていると感じました。それで、「やっぱりダンスは最高だ!」と思ったんです。
―ニューヨークだからこそ得られた刺激や経験はありますか?
現地で出会ってきたプロのダンサーたちが、どんなジャンルでも踊りこなせる、ということですね。私は19歳まではストリートダンスしかやってこなかったので、「この遅れを取り戻して追いつかなければ!」と正直焦ったこともありました。その経験が、バレエやモダンなど、さまざまなジャンルのダンスの世界に入り込むきっかけになりました。ヒップホップダンス発祥の地でもあるニューヨークで、パイオニアとして活躍してきたダンサーの皆さんから直接指導を受けたり、交流したりする機会があることは、ニューヨーク以外では考えられないし、今でも感動しながらクラスを受けています。未だに学びが尽きないです。
あとは、さまざまな国や文化を持つ人たちと交流できること。ニューヨークで友達になった人たちの出身国を数えてみたら、なんと30カ国も!日本人としての自分とは違う価値観や文化を知ることで、自分自身も多様な考え方ができるようになり、人生をもっと楽しめるようになったと思います。

Dreamer Dance NYCのキッズクラスの様子
―インストラクターとして、ダンス指導もされています。
キッズクラスで指導をしていますが、ニューヨークは人種や文化が多様な街なので、それぞれの国によって子どもの教育方針や価値観が大きく異なることがあります。生徒一人ひとりの文化的背景を理解した上でコミュニケーションを取り、「子どもたちがダンスや音楽を楽しむ環境をつくる」ことを軸に、指導するよう心がけています。
―インストラクターを通して学んだことは?
クラスの事前準備から構成、生徒とのコミュニケーションや進め方まで、現地で25年以上の指導経験を持つCHIO先生から学んだことが、今の自分の指導力につながっています。また、彼女のクラスの生徒さんの中には、プロのダンサーだけでなく、さまざまな業種のビジネスプロフェッショナルも通っています。そうした方々から英会話を教えていただくこともあり、教育者としての英語力の成長にもつながっています。

CHIO先生と小川さん
―影響を受けたダンサーはいますか?
今の自分のダンススタイルや活動に至るまでに大きな存在となったのは、日本人ダンサーの和田マリアさんです。和田さんはBritney Spears、Katy Perry、Madonna、Taylor Swiftなど、著名なアーティストと仕事をされてきた方で、今はヨガのインストラクターとしてロサンゼルスを中心に活動されています。10代の頃、ニューヨークのBroadway Dance Centerで初めて出会った時から、彼女のダンスのスタイルやパフォーマンス、考え方など、さまざまな面から刺激を受けました。一度日本に帰ってからは、彼女の動画を見て練習したり、髪型や服装までよく真似していました(笑)。私にとって、当時の模範となる存在でした。
もうー人は、ヒップホップダンスのパイオニアとして世界的に知られるアメリカ人ダンサーのBrian Greenさん。この方にも10代の頃にニューヨークで出会ったのですが、タップ、ジャズ、バレエ、モダン、アフリカン、ハウス、ヒップホップ…何でも踊れる方で、初めて彼のダンスを見たときは衝撃を受けました。「こんなダンサーがこの世界にはいるんだ!」って感動したのを、今でも覚えています。その日から、週5日、彼が関わるクラスやワークショップ、セッション、イベントすべてに参加して。私はもともとバレエとは縁のないダンサーでしたが、彼をきっかけにバレエのトレーニングも始めました。私のダンス人生を変えたアーティストの一人です。

「自分の人生が終わるその直前まで、踊り続けていくことがテーマ!」と語る小川さん
―ダンスのパフォーマンスとインストラクターの両方で活動する小川さんですが、「演じる」立場と「教える」立場では、どのような違いを感じますか?
「演じる」ことも「教える」ことも、私にとってはコミュニケーションの一環なので、その点では同じだと思います。ただ、演じる立場では、自分が作り上げたものをダンスを通して相手に伝えて、どう受け取るかは相手に委ねます。一方で、教える立場では、まず相手のことをある程度理解した上で、その人に何を伝えられるのかを考えます。自分が先か、相手が先か。その違いなのかなと思います。
―今後、挑戦したいことを教えてください。
ダンスのお仕事で各国を回ることです。アーティストのツアーやダンスカンパニーのツアーなど、長期のプロジェクトを経験してみたいですね。先日までオフ・ブロードウェイのプロジェクトが決まっていましたが、残念ながら公演が中止になってしまいました。ニューヨークならではの「劇場」という舞台で一度はお仕事がしたいです。たくさんの方々とダンスを通して触れ合える時間や場所に、もっと積極的に参加していきたいと思っています。もしどこかで見かけたら、ぜひ声をかけてほしいです。
《小川由佳さん|Yuka Ogawa》
福島県出身のダンサー、振付師、ダンス講師。9歳から地元・福島市のダンスファクトリーKマニフィックでヒップホップとジャズを学ぶ。高校卒業後、プロのダンサーを目指して渡米し、Broadway Dance CenterやPeridance Centerの留学生プログラムで研鑽を積む。これまでに、Carrie Underwood「See You Again」のミュージックビデオ、Kylee、YOYOMIとのパフォーマンス、国際エミー賞キッズアワード授賞式(International Emmy Kids Awards)のエキシビション、Boston Japan Festivalなどに出演。現在は、師事してきた山田知央(CHIO)氏のアシスタント兼講師としてBroadway Dance Centerで指導に携わるほか、Dreamer Dance NYCでもレギュラークラスのインストラクターを務めている。2026年には、オフ・ブロードウェイ作品『Breakin’ NYC Season 3』のオーディションに合格し、プロジェクト初の日本人キャストに選出されるなど、活動の幅を広げている。
Instagram:@itsyukaogawa

