アメリカの教育事情

アメリカでは現在、約2万5,000人の児童・生徒が学んでいる。
しかし、日本の文部科学省が認可する全日制の日本人学校はニューヨーク近郊とシカゴの2地域にしかないため、多くの日本人子弟は現地校に在籍している。
アメリカの現地校は地域により選択肢の幅や教育レベルが異なるので、その点を考慮したうえで居住地域を選ぶ必要がある。また、全日制日本人学校と現地校のいずれかの選択は子どもの進路に大きく影響するので、慎重かつ家庭に合った選択をしよう。

英語を母国語としない日本人児童・生徒にとって家庭での教育サポートはとても重要である。教師と連絡を取り合うなど、教育への参加を心がけよう。

アメリカの教育

アメリカの教育省は、日本の文部科学省のように一括して教育を統括しておらず、運営を各州に委託している。
教育省では主に、基本的な教育方針(コモンコア)の制定、補助金の交付などを行う。それを基に、各州の教育局で教育方針が決定され、各カウンティーの教育局、または複数の学校を含む学校区(スクールディクトリクト)の教育委員会でカリキュラムなどが決定される仕組みになっている。

義務教育期間

アメリカの義務教育期間は5歳から始まり、16~18歳までと、各州で異なる。小・中・高の学制も各州で異なり、日本のように全国統一されているわけではなく、6・3・3制や、5・3・4制、6・2・4制、4・4・4制などさまざまだ(下の図参照)。
新学期が始まる時期は、8~9月。学年を区切る誕生日(カッ ト・オフ・デー)も9月や12月など各学区で異なる。誕生日によっては学年をひとつ下げて入学させることが可能な州もあるので、希望の場合は各学区へ問い合わせを。

アメリカの学制

幼児教育

アメリカでは義務教育以前の教育は各家庭の方針で始めることになる。
早期教育や芸術系に力を入れる施設、独自の教育法を取り入れている施設など、教育方針やカリキュラムは各校さまざまだが、幼児教育は子どもにとって影響が大きいので、学校訪問や体験入学など、実際に足を運んでみることをすすめる。  

ナーサリー(プリ)スクール(2~4歳児) は、そのほとんどが私立で、2歳児から入園できる。開始時期は相談することができ、通園回数は通常週2、3回半日のみから始め、学年が上がるにつれて、または希望により週5回全日になる。ただし、人気の施設ではウェイティングリストに登録が必要な場合もあるので、事前に確認し、所定の手続きを行うこと。有名私立プレスクールでは、受験が必要な場合もある。
 
4歳児のためのプリキンダーガーテン(PK)は、郊外の学校では公立学校に併設されている公立PKもあるが、数は多くない。ニューヨーク市5区では、Universal Pre-K Program (UPK)と呼ばれる無料の公立プリキンダープログラムがあり、公立小学校に併設されているものと、私立のナーサリー(プリ)スクールや地域の幼児教育施設に併設されているもの、教育局直営の施設などがある。通園時間はどちらも週5回半日か全日。  

キンダーガーテン(5歳児)は公立小学校に併設されており、実質的な小学校入学1年目となり、小学校教育の準備期間という位置付けになっている。カリキュラムには、基礎科目を取り入れている場合もあり、宿題を持ち帰ることもある。  

チャイルドケアセンター(デイケア)と呼ばれる保育施設は、2歳前の子どもを対象とした長時間の保育を行っているが、本来は共働きの両親のための託児施設としての色合いが強い。日本の保育所のように、働く両親向けのサービスを無料あるいは低価格で提供するヘッドスタートと呼ばれる施設もあるが、これらは所得などの制限がある。

公立校

公立校は、地域住民の固定資産税や、連邦政府や州の補助金から運営予算を得ているため、住民の格差によって教育にも大きな違いが出てきてしまう。当然ながら、富裕層が多く集まる居住区は、公立校のレベルも高い。
公立校では教育費の個人負担はなく、通学区(スクールゾーン)内に住んでいることと、児童・生徒の生年月日、規定の予防接種完了の証明があれば入学を拒否されることはない。  
公立校の形態には、一般校にくわえ、非営利団体の評議や、保護者自身が学校経営や教育に携わるチャータースクール、スクールゾーンを超えて通学が可能なマグネットスクールがある。
また、義務教育年齢の子どもが何らかの理由で登校できない場合には、家庭で教育を行うホームスクールという選択肢も、日本人にはなじみがないがアメリカでは一般的である。

私立校

私立校は、連邦政府や州から補助金を受けることなく独立して運営されているため、教科や指導内容が大きく変わることは少なく、安定した教育環境が保証されているというメリットがある。  
また、私立校のなかには教会が母体の宗教的色合いが強い学校も多い。ほとんどの学校は信仰者でなくても入学できるが、宗教の授業やミサ、礼拝の参加を必修科目としている場合があり、一般的に学費は高い。

英語の特別指導

英語の特別指導は、ESL(English as a Second Language)、ELD(English Language Development)などと呼ばれ、英語を母語としない児童・生徒に対して、1960年代よりアメリカの公立校で行われている。この指導については州ごとにガイドラインが設けられているが、対象となる生徒の在籍人数や人種構成によって学校区ごとにカリキュラムは異なる。
また、英語を第2言語とする児童・生徒には入学時に言語評価テストを行いレベル分けをする場合もある。
主な指導方法は以下の通りである。

1. センター校(Core School)方式

英語の特別指導クラスが設置されている学校で行われる。英語を母語としない児童・生徒をひとつのクラスにまとめ、終日、すべての科目をわかりやすい言葉で指導する。
クラス内を英語のレベルごとにグループ分けし、複数の教員が指導にあたる学校もある。

2. プルアウト(Pull Out)方式

英語の特別指導クラスを持つ学校で行われている指導方法。週に数時間、メインストリーム(通常のクラス)の代わりにESLクラスで英語の集中指導が行われる。美術や音楽、体育などは、通常のクラスで行われる場合が多い。

3. デュアルランゲージ (Dual Language)

2ヵ国語を同時習得させることが目標の指導法。日本語を目標言語とする公立校はアメリカに数校存在する。英語を母語とする子どもと、日本語を母語とする子どもがひとつのクラスで生活し指導を受けることで、最終的に多文化・多言語を習得する。

アメリカにおける大学進学

アメリカの大学は、2年制と4年制を合わせると、全米で約4,500校ある。
進学する場合は、日本の大学入試のように1回きりの試験で評価されることはなく、生徒は多面的、総合的に評価される。高校の成績や統一テスト(ACT、SATなど)、卒業検定試験の結果だけでなく、課題の提出状況、生活態度、学校内外での活動(たとえば生徒会活動、スポーツやボランティア活動など)が、評価の対象となる。
英語を母語としない生徒は、TOEFLなど英語能力試験のスコアも含まれる。  

高校入学時点からガイダンスカウンセラーと定期的に面接を行い、将来の進路に関するアドバイスを受けながら履修科目や志望校を決める。
12年生になると、秋の終わりから願書の提出が始まる。 その際、推薦状や成績証明書、統一テストのスコアなどの必要書類も一緒に提出する。その後、書類選考や大学から委託された卒業生による複数回の面接(学校によって異なる)を経て、数ヵ月後に入学許可が通知される。
また、学費に関しても、進学先の州立大学が自分の居住している州内か否かや、永住権の有無で大きく違ったりする。私立大学の学費は4万から5万ドルと高額だ。資金の積み立てや、ファイナンシャル・エイド・リサーチも、アメリカ大学進学を成功させる重要な要因である。  

2017年度より、ニューヨーク州は全米で初めて、州在住者で一定所得以下の家庭の学生に対し、すべてのニューヨーク州公立大学(州立、市立)の授業料を無料にするExcelsior Scholarshipを開始した。この奨学金が適応される年収の上限は3年計画で上昇し、初年度の2017年度は年収上限10万ドル、2018年度は11万ドル、2019年に上限12万5千ドルまで引き上がる予定だ。ただしフルタイムの学生であること、卒業後一定期間州内に留まって働くことなどの条件がある。

日本人のための教育機関

全日制日本人学校

義務教育年齢の日本人生徒を対象に、日本の公立学校と同等の教育を受けさせる目的で海外に設置された学校である。  

文部科学省が認定し、かつ教員を派遣する全日制日本人学校は、アメリカではコネティカット州グリニッチ(Greenwich)、ニュージャージー州オークランド(Oakland)、イリノイ州シカゴ(Chicago)にある。
そこでは文部科学省から派遣された教員が中心となって検定済み教科書を使用し、文部科学省の学習指導要領に基づいた指導が行われている。 現地の学期制に関係なく4月から翌年の3月までの3学期制で、授業日数は、年間約200日。一部、現地理解教育や英会話クラスはアメリカ人教師によって指導され、ホームステイや各種行事など、現地校や地域社会との交流も積極的に行われている。
そのほか、私立の全日制日本人学校がある地域もある。  

全日制日本人学校に在籍すれば、日本語での学習力や日本人としてのアイデンティティー、価値観などを失うことがなく、帰国後の適応も容易であるというメリットがある反面、異文化体験が十分でない、英語力が身に付かないというデメリットもある。なるべく週末や夏休みなどを利用し、現地のサマーキャンプやボーイスカウト、ガールスカウト、野球などの各種スポーツに参加し、アメリカでの生活体験を豊かにするよう家庭のサポートが必要である。

補習授業校

補習授業校は、文部科学省の検定済み教科書をもとに、基礎教科を日本語で指導する学校である。
主に週末のみ開講されるので、現地校に通うことを選択した場合に、日本語や日本文化の保持、他の現地校に通う同じ立場の友人との交流、帰国後のスムーズな編入などの目的で通う子どもたちが多い。
しかし、週末のみなので、ほとんどの学校では年間授業日数が40日ほどと限られている。よって、帰国後に向けて学力を保持できるかどうかは家庭学習によるところが大きいため、保護者のサポートが重要となる。
補習校がない地域や、そのほかの理由で通学が困難な場合、時間や科目を選べる塾や通信教育で不足を補うこともひとつの方法である。最近ではインターネットを使用したオンライン塾なども利用可能だ。しかし、あくまでもメインスクール(現地校)できちんと学習し、居場所を作ることを忘れてはならない。日本語保持は必要ではあるが、現地の生活への負担になりすぎないよう注意したい。