【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】Miura Boiler México, S.A. de C.V. 伊東久暁

President
伊東久暁
(いとう・ひさあき)
1982年愛媛県新居浜市生まれ。2005年国立新居浜工業高等専門学校機械工学科卒業、同年三浦工業株式会社に入社。日本各地の拠点でボイラ営業、水処理営業に従事。23年ミウラ・ボイラ・メキシコに出向し、25年4月から現職。妻、娘、息子の4人家族。米州市場でのプレゼンス拡大に挑戦を続けている。

Miura Boiler México, S.A. de C.V.
Blvd. Manuel Ávila Camacho No. 685 Fracc. Industrial Alce Blanco, Torre Norte, Oficina 302, 53370, Municipio de Naucalpan de Juáre, Edo.de Méx
Tel (55) 5360-5939

次の成長軸へ、
グループ連携で挑む事業拡大

2024 年、北米の産業用ボイラーメーカー大手クリーバールックス社を買収し、米州での事業拡大に本格的に乗り出したミウラ・ボイラ・メキシコ。強固な販売網ときめ細かなサービスを強みに、新たなステージへと歩みを進めている。メキシコ国内で高まる製品評価と導入実績を足がかりに、さらに広い市場の開拓を視野に入れる構えだ。

 

ー メキシコ進出の経緯は。

2011年にメキシコに進出し、現在15年目となます。そまではアメリカを拠点として北米おび中南米の商品販売に対応していましたが、需要が拡大したのをきっかけにミウラ・ボイラ・メキシコを設立し、メキシコ国内にオフィスと工場を構えました。

 

ー メキシコでの事業内容は。

産業用ボイラーの販売が主な事業です。ボイラーの販売に付随してメンテナンスサービスも提供しています。また、産業用ボイラーを使用する際に必要となる薬品や水処理設備、それをコントロールする電気盤などの販売も、メキシコならびにブラジルを除くスペイン語圏の中南米で展開しています。
一般的にボイラーというと、お湯を沸かす機械をイメージすると思いますが、産業用ボイラーはお湯を沸かすというよりも蒸気をつくり出す用途で使われます。蒸気をつくる過程において、ボイラー内では不純物が発生し、そのまま取り残されます。それを除去するために薬品を添加しながら機械を適切に保全しています。この薬品は、元々は自社機械向けのものでしたが、現在メキシコ国内で生産した薬品をアメリカやカナダに輸出する計画も進めています。

 

メキシコの魅力や今後の事業拡大について熱く語る伊東氏

 

ー 主力製品と販売先は。

主力製品は、いわゆる蒸気熱源をつくり出す蒸気ボイラーです。弊社のボイラーは、必要なときに必要な分だけ蒸気を供給できる「多缶設置方式」を採用しており、省エネ性と運転効率の両立を実現しています。さらに、装置の立ち上がりが早く、限られたスペースにも設置可能なコンパクト設計も特長の1つです。
業界別の主な販売先は、上位から順に、食品・飲料、化学、自動車、繊維、製薬。飲料のなかでもテキーラを例に取ると、販売量世界1位のホセ・クエルボや、メキシコで高い人気を誇るサウザを含む、蒸留酒メーカーの約6割が弊社のボイラーを使用しており、世界で流通しているテキーラの約4割は弊社の製品を介して製造されています。その他にも、ABインベブやモデロといったビールメーカーや、コカ・コーラやペプシといった飲料メーカー、さらにミネラルウォーターの工場でも弊社の機械が使われています。食品・飲料と化学関連だけで頭客全体の約半分を占めています。
メキシコに進出した当初は、日本での実績があった関係でお客様の8割が日系企業でした。それが今は逆転し、8割がメキシコ企業、2割が日系企業となっています。ボイラーは燃料を使って蒸気をつくり出すため、自動車と同じように、燃費を抑えることがコスト面で大きなメリットになります。弊社のボイラーは、他社製品よりも少ない燃料で稼働できるのが特長で、実際に使っていただいたメキシコ企業のお客様にもその効果を実感していただき、導入企業が徐々に増えてきました。当初私たちの技術は日系以外のメーカーにはほとんど知られていませんでしたが、工場見学やカタログ、チラシなどを通じて、メキシコ国内の大手メーカーの間でも少しずつ認知が広がっています。「メイド・イン・ジャパン」の 高性能な機会として評価されていることを、誇りに思います。

 

ー エネルギー問題や水処理問題へのアプローチは。

北米や中南米では、いまも昔ながらのボイラーを使っている企業が多くあります。そうしたボイラーを弊社製品に置き換えることで、最大約30%のCO2削減が可能です。また、工場で年間を通して使用されるガスやディーゼル油、設備運営にかかるコストも最大30%削減できるため、導入企業にとって大きなメリットがあります。メキシコは環境対策がやや遅れている面もありますが、環境負荷の観点からも、弊社製品の性能がメキシコ政府から認められています。さらに、ボイラーは水を使って蒸気をつくり出す装置のため、水の消費を抑えることも重要な課題です。使用した水を再利用したり、少ないエネルギーで効率良く熱を生み出したりする技術を採用することで、弊社は水処理の分野においても、アメリカやメキシコのメーカーと比べて優れた数値結果を出しており、優位性があると考えています。

 

ー 競合他社との差別化については。

弊社はメキシコ国内に4カ所、自社のメンテナンス拠点を設けています。メキシコの蒸気ボイラー市場では、「売ったら売りっぱなし」が一般的ですが、私たちは日本と同様に、販売後のアフターサービスまでしっかり対応しています。これは現地メーカーにはあまり見られてない特徴であり、明確な差別化ポイントだと考えています。
さらに、弊社のボイラーにはAI機能を搭載した独自の通信システムが組み込まれています。ボイラーに異常が発生すると、その情報が自動的に出力され、メキシコシティー郊外ナウカルパンにあるオンラインセンターに一括で集約されます。お客様が異常に気づく前に、私たちが先に察知してお知らせする、いわばセキュリティー会社のようなサービスです。また、AIは異常検知だけでなく、ボイラーの運転状況を分析し、省エネ面でも最適な使い方を提案します。お客様が気づかないうちに非効率的な運転が行われていることもあるため、AIが集めたデータに基づき、最適化を図ります。これらのサービスは、競合他社にはない弊社独自の取り組みであり、大きな差別化要素になっています。

 

ー メキシコ市場での動きは。

自動車関連分野では、ありがたいことに、すでにメキシコ国内に進出しているほぼすべての日系企業に弊社の製品を導入いただいています。加えて、アメリカ・中国・韓国の自動車サプライヤーからの引き合いも、徐々に増えてきている状況です。メキシコ国内企業では、乳製品やパンなどの加工食品メーカーによる設備投資が続いており、さらに日系食品メーカーの工場新設も続いています。それに伴って蒸気の需要もこれまで以上に高まると見込まれます。こうした動きをいち早く捉えることが、事業拡大において非常に重要であり、今後も市場は上向きに推移すると考えています。
この他、アメリカの飲料メーカーをはじめとした業界再編の動きも見られます。例えば、既存のお客様である大手グループに中小企業が参加し、彼らの資本や技術が入るタイミングで弊社の製品を新たに導入していただけるというケースも増えています。

 

ー 今後の目標は。

コロナ禍を除けば、ここ数年は毎年105~110%のペースで安定した成長を続けてきました。さらに成長を加速させるべく、2024年にはアメリカの産業用ボイラーメーカーであるクリーバーブルックス社を買収。同社は出荷台数ベースで、北米および中南米市場において私たちの約2.5倍以上のシェアを持つ大手企業です。メキシコ以南のスペイン語圏、具体的にはチリ、コロンビア、ドミニカ共和国などには、すでに彼らの販売網が確立されており、今後は協業を通じてこれらの国々への展開を進めていきたいと考えています。チリとコロンビアではすでに具体的なプロジェクトが始動しており、中長期的には中南米全体で市場を拡大し、私たちの製品をお届けしていく計画です。
また、クリーバーブルックス社は、カンクンを含むメキシコのリゾートエリアにおいて、ホテル向けボイラー市場のシェア約60%を持っています。ホテル事業では、シーツや枕カバーなどのリネンを洗濯するため、大量の蒸気が必要とされます。私たちはこれまでこの分野に未参入でしたが、今後は同社の販売網を活用し、自社製品の導入にもつなげたいと思います。
短期的な目標としては、さらなる体制の強化です。メキシコに進出した当初は、わずか5~6名の体制でスタートしましたが、現在では約30名規模にまで成長しました。営業やメンテナンスも、現在は一部を除きほぼ自社で対応できるようになっています。私が帰任するまでには、100名規模まで組織を拡大させたいです。

 

誕生日を迎えた伊東氏を囲み、笑顔で祝福するスタッフたち。温かな職場環境がチームの原動力となっている(提供写真)

 

ー メキシコ駐在の醍醐味とは。

メキシコに駐在して2年目になりますが、結論から言うと、メキシコが本当に大好きです。食べ物はおいしく、人も明るくて魅力的。渡当初に研修で滞在したグアナファトの雰囲気もとても気に入り、すぐにメキシコという国に惹かれていきました。当初はスペイン語が全く話せませんでしたが、英語と違って発音が多少悪くても案外伝わるので、スペイン語がどんどん好きになりました。今はもっと会話力を高めて、現地の方々と深くコミュニケーションが取れるようになりたいです。そして、もっと長く住んでいろいろな経験をしたいとも思っています。雨季を除けばほとんど雨が降らず、湿度も低いメキシコの気候はとても快適です。今のところネガティブな点が見当たらないほど、メキシコでの生活に満足しています。この国で働けることを、心からうれしく思っています。

 

Interviewer: Hitomi Sugisaki
Photographer: Cristian Salvatierra
2025年6月23日取材

▼本誌掲載
メキシコ便利帳 Vol.10