【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】MEPC Engineering Mexicana, S.A. de C.V. President 刈谷好英

President
刈谷好英
(かりや・よしひで)
1975年、高知県生まれ。高校卒業後、関東の輸入・輸出関連会社に就職。自分自身を試すため、バックパッカーとしてオーストラリアを旅する。帰国後は建築設備を学び、地元の設備会社に就職。1人の女性との出会いをきっかけに渡英。バーテンダーをしながら英国ポーツマス大学土木工学科を卒業。日本の準大手ゼネコンに就職し、メキシコに駐在。2017年にMEPCを立ち上げ、現在に至る。

MEPC Engineering Mexicana, S.A. de C.V.

Sendero de las Haciendas No. 111, Hacienda la Huaracha 37685, León, Gto
Tel (477) 557-6789

 

ないものは自分で作り出す。
工夫と挑戦を重ね、ニーズを形に

2017 年、メキシコで日本人にって設立さた建設会社のMEPC。決して完璧とはいえない労働環境のなかで顧客のニーズに近づけられるよう日々工夫を重ね、コロナ禍でオートメーション会社を吸収合併するなど、常に攻めの姿勢で新たな挑戦を続けている。

 

ー 事業概要は。

弊社は2017年にメキシコで設立しました。大きく分けて2つの部門があます。メインが建設部門で、レオンとケレタロに拠点があり、メキシコ全体で事業を展開しています。もう1つがオートメーション部門で、アグアスカリエンテスを拠点に、生産設備などのオートメーション化を主にメキシコ全体でサービスを提供しています。クライアントは約8割が日系の自動車関連会社、約2割は欧米およびメキシコ企業で、業種としては農業や化学薬品関係など多岐にわたります。

 

ー メキシコで起業した経緯は。

英国の大学卒業後に各国で仕事を探していたところ、日本の準大手ゼネコンに就職する機会を得ました。はじめは派遣社員として渡墨をし、その後は正社員として駐在することになりました。そして、この会社での経験を生かして独立することを決めました。独立と言うと格好良く聞こえますが、実際はそうではなく、必要に迫られて独立したと言ったほうが正しいかもしれません。建設業はプロジェクト進行中、非常に多忙を極め、土日に働くことも珍しくありませんでした。当時の私は自分ががむしゃらに働くことで家族も自分も幸せになと信じており、妻と子どもがまだ寝てい間に家を出て、2人が寝てか帰という生活を送っていました。仕事はやり甲斐があった反面、家族との時間がほとんど取れず、家族と話し合った結果、この生活を続けることが難しいと判断し独立の道を選んだという経緯です。

 

ー 設立当時のエピソードは。

最初は小さな社宅兼オフィスで、前職で一緒にプロジェクトに関わっていた建築家のパオラ・ロモさんと2人でMEPCを立ち上げました。大変優秀な人物なので、独立を決めたときに一緒にやらないかと声をかけたところ快く承諾してくれ、MEPCに参加することになりました。彼女の地元であるアグアスカリエンテスからレオンの事務所まで車で2時間かかるため、家族から離れてこちらに来て、会社の立ち上げを手伝ってくれました。最初は机も椅子もなく、段ボール箱を机代わりにして床に座って仕事をするという今思えばとんでもない環境でしたが、それでも文句を言わずに付いて来てくれたことは本当に感謝しています。
また、前職が実績と名のある会社だったので、そのキャリアを借用して仕事を発注してくださったお客様もいらっしゃいましたが、独立して間もないころは会社としての実績がなかったため、なかなかすぐに仕事をいただけず苦労しました。私自身あまり営が得意なほうではないこともあり、自分たちが手掛ける工事の出来栄えやコミュニケーション能力が営業の役別を果たせるようにしなければいけないと、起業して改めて思い知らされました。

設立当初から会社を支え、今は経営管理を担当するロモ氏と。「彼女がいなかったらこの会社はありません」と言い切る

 

ー メキシコ市場の競争と、最近の動向は。

建物の修理や生産設備のオートメーション化など市場は常にありますが、それにどうアンテナを張るか、また、どうやって限られた市場のなかで他社と競争して仕事を獲得していくかがポイントだと思っています。トライ&エラーで改善を重ねることでお客様の信頼を得ていかなければなりません。また、今年はアメリカのトランプ大統領の関税政策に振り回され、製造関連でメキシコに拠点を持つ企業は現時点では投資を控えているところが多い印象です。ただ、弊社には約40人の従業員がいますので、既存顧客にオートメーション化の提案をするなど、自ら利益を産むシステムをつくり出して社員のモチベーションを保っています。また、私たちの事務所そのものをショールームにするプロジェクトが進行中の他、事務所の裏に工場を建てて、建築資材や工場のオートメーション化など必要な弊社オリジナル製品をデザインする計画もあります。

 

刈谷氏の理想を詰め込んだ新しいオフィス。サラダやフルーツなど、無料の食事提供も

 

ー ショールームの詳細は。

「こういう仕上げにできます」というのをお客様に実際に見ていただくため、オフィス自体をショールームにするというコンセプトで建設を進めています。カフェを併設し、2階にはジム、バー、サウナ、ゴルフシミュレーター、ゲームコーナーを設けるなど、一般的なオフィスよりも遊び心を加えているのが特徴です。私自身、独立前はサラリーマンでしたが、「こんなところで働きたかった」と自分が思い描いたイメージを、このオフィスで実現させています。オフィス環境が良いと自然と仕事に行きたくなりますし、空間が快適だと作業効率が上がりますよね。コロナ以降は以前よりもオフィス環境が重視され、仕事をするだけのオフィスでは従業員が定着しにくくなっています。特に若い世代は、私たちの世代とは違って仕事と並行して人生の豊かさを求めています。仕事とは別に楽しめる場所を提供し、健康で楽しく過ごせるオフィスを理想としています。

 

日墨の現場で感じる違いは。

日本はレベルの高い協力会社や優れた建築資材が豊富にあり、作業はシステム化、マニュアル化されていることが多く、仕事の進め方がある程度確立されています。一方で、メキシコでは未だ確立されていません。日本や他国では簡単に入手できる資材もないため似たようなもので代用するなど、何においても工夫を要する点が大きな違いです。隣国のアメリカから輸入するとお客様の予算に合わなくなりますので、メキシコ流になってしまいますが、なければ自分たちでつくることもあります。メキシコの現場では、「完成度をいかにお客様のニーズに近づけられるか」が重要です。ときにはスタッフが資材を調べて「ない」と報告があっても、本当にないのかどうかを調べ直すこともあります。これもメキシコではよくあることです。

 

ー 社員教育については。

以前に比べ各従業員に手取り足取り教える暇がなくなったため、足りないものがあれば私が探して彼らに頼むという流れで仕事を進めています。実務だと、道具の使い方から効率の良い作業方法まで、私が実演して見せながら教えています。一旦は私のやり方を伝えますが、それを一方的に押し付けるのではなく、同時に彼らの意見も聞いて、柔軟な判断をするようにしています。重要なのは、双方のアイデアを取り入れながら着地点を見つけていくことです。メキシコ人は勤勉な人が多く、もちろん弊社のスタッフも例外ではありません。私たちはとても恵まれていると思います。

 

ー 他社との差別化は。

日系のお客様のところには私が直接赴いてニーズを聞くようにしています。また、経理の面でも私が決定権を持つため、複数の部署を通して長いプロセスを待つ必要がありません。スピーディーな決断と小回りが効くサービスを提供することで他社との差別化を図り、お客様のニーズにより近づけることができると考えます。ときにはすぐにでも対応してほしいという緊急の案件もありますが、大手だと基本的にそのようなケースへの対応は難しいことが多いと思います。仮に水漏れの修繕の依頼があった場合でも、見積もりを取って、稟議を通して、といったプロセスを待っていたらその間ずっと水が漏れっぱなしです。そういう場面でスピーディーに対応できるのが、弊社の大きな強みだと思います。ちょっとタイルが壊れたとか、コスト的に競合の大手は受けないであろう小さな仕事でも、私たちは請け負います。

 

ー 最も印象的だったことは。

4年ほど前に知り合いの会社を吸収合併する形でオートメーション部門を設立したことです。当時その会社の経営に問題があり、私のところに「力を貸してくれないか」と相談があり、正直なところ悩みました。たくさんの人に相談し、その全員から反対されましたが、「人生一度しかないのでやってみよう」と決断し、従業員を全員引き取って吸収合併することに。なぜ建設部門とオートメーション部門という異なる事業を展開しているかというと、このような経緯があります。まさか他社を吸収合併するなど夢にも思っていませんでしたが、現在では両部門の売り上げが半々となり、結果的に吸収合併して良かったと思います。何をするにも必ずハッピーエンドで終わらせたいというのが、私のモットーです。

 

ー 課題と今後の目標は。

課題は常に、お客様の思いやニーズに近づけるために工夫を要することです。先日、ニューヨークで開催された建設工キスポに行きましたが、アメリカではあらゆる資材がそろっています。もし探しているものがなくても、それに近い商品が豊富にあります。それらを購入すれば作業はスピーディーかつきれいに仕上がりますし、一番の近道になりますが、それがないメキシコではどのようにして理想的な形をつくり出せるかが常に試されています。そして目標はそれに可能な限り近づけることです。また、会社としてただ生き残るだけではなく、楽しみながら挑戦し続けることです。守りに入っても仕方がないですし、これまですっと攻めの姿勢で臨んできました。そのやり方しか知りませんので(笑)。

 

Interviewer: Miho Kanai
Photographer: Alejandro Arredondo Castro
2025年3月18日取材