【Japan Pride 注目企業エグゼクティブインタビュー】クイックUSA ダラス拠点長 山岸健 アトランタ拠点長 堀之内理朗

ダラス拠点長
山岸 健(やまぎし・たけし)
Quick USA, Inc. ダラスオフィス
5525 Granite Pkwy, Ste 640, Plano, TX 75024
スペインの高校・大学を卒業後、大手建設機械メーカーでの海外営業を経て、オーガニック農業生産法人にて海外進出・新規市場開拓を経験。2015年に日系企業のダラス支店立上げに事業責任者として赴任。クイックUSAに入社しダラスオフィス開設を主導。

アトランタ拠点長
堀之内 理朗(ほりのうち・としあき)
Quick USA, Inc. アトランタオフィス
303 Perimeter Center N, Ste 300, Atlanta, GA 30346
人材紹介業でのキャリアコンサルティングおよび教育業でのコンサルティング業務に携わったのち渡米。2023年1月にクイックUSAのダラスオフィスに入社し、同年9月にアトランタオフィス開設を担当。趣味は旅行とお酒、ランニング。

世界中から人材をリクルートし、企業と候補者をつなぐ架け橋に

日系企業への転職・就職をサポートする転職・就職エージェンシー、クイックUSA。2022年に北米3番目の
拠点として開設されたダラスと23年に7番目に開設されたアトランタ、それぞれの拠点長2人が語るアメリカでの役割とは。

 

ー事業概要と拠点を増やした理由は。

 (堀之内)日本の株式会社クイックのアメリカ法人として1999年にニューヨークに進出しました。「関わった⼈全てをハッピーに」をグループの経営理念に、現在メキシコを含めた北米8拠点で、企業様の採用と個人の方の転職のお手伝いをしています。以前からリモートでテキサス州や中西部、南東部などのお客様のサポートも行ってきましたが、エリアによって企業様の望まれる人材や、候補者様の働き方も異なるため、リモートでのサポートには限界があるなと感じていました。そうしたなか日系企業様の進出も増え、お客様をしっかりサポートしたいという思いからテキサス州とジョージア州にも拠点開設を決めました。この2州に本社があり工場がメキシコにある、またその逆の企業様もあり、2国間にまたがる企業様をサポートできる拠点が必要であったことも理由の1つです。

左から、ダラス拠点/柴田京子氏、ジャンビエアー身江子氏、シュワルツ麻美氏、山岸 健氏、アトランタ拠点/堀之内理朗氏、中野真輔氏、ダドリーひろみ氏

ー開設して良かったと感じたことは。

 (堀之内)アトランタに拠点を持ったことで、地元の企業様と候補者様双方から期待されている、求められていることを肌で感じることができました。地元の方々からも「身近にある地元の会社」という認識を持っていただき、少しずつ地域に貢献できる土台ができつつあるなという感覚があります。
(山岸)私たちの行うサポートは、空きのあるポジションに人材を見つけることだけではありません。企業様に実際に足を運び、お困りごとやお悩みごと、事業の未来への展望などのお話を伺い、そのなかから採用のニーズを的確に把握し「こんな人材を採用してはどうですか」とポジション自体を提案することもよくあります。企業様と対面できる距離にいて、すぐにお話ができることは、私たちにとっても非常に重要だと改めて実感しています。

 

ー最大の強みは。

 (山岸)オフィスは北米8拠点ですが、実はスタッフは全米各地に散らばっています。そのため、現地に住んでいないと分からないリアルな情報をお伝えすることができます。企業様は、優秀な人材をリロケーションも含めて求めていますが、候補者様にとって仕事内容や待遇などの条件が良かったとしても、見知らぬ土地に引っ越して働くことは大きな不安要素です。その際、私たちスタッフがその地に生活して得た情報をお伝えすることで、不安を解消し候補者様の最終判断の助けになることも多くあります。また、アメリカに近いメキシコに拠点があることも大きな特徴です。アメリカで募集が出たときに、メキシコのチームでも迅速に人材を探すことが可能で、その逆もあります。クイックグループは現在、日本をはじめ中国、ベトナム、タイ、メキシコ、イギリス、オランダに拠点があり、アメリカ国内はもとより、他国からも優秀な人材を確保することができます。世界各地に拠点を持つグループのネットワークを活かしたクロスボーダー採用が可能で、そこが私たちの最大の強みだといえます。企業様にとってもワンストップソリューションで採用が進められることは、手間やコストが省け大きなメリットだと考えています。

 

ーメキシコからの採用については。

 (堀之内)メキシコまたはカナダからアメリカで働く人のためのTNビザというものがあります。日系企業様の間ではまだあまり詳しく知られておらず、「取得プロセスが複雑で大変そう。面倒だし、費用もかかりそう」と敬遠する企業様も少なくありません。しかし、実際には取得のハードルはそこまで高くなく、非常に効果的なビザだと考えています。例えばダラスやアトランタの日系工場では、常にエンジニアが不足しています。一方、メキシコは製造業の強い国で、現地の日系工場で働いた経験があり、モチベーションの高いエンジニアの方がたくさんいます。そうしたメキシコの方々とまじめで優秀な人材を希望する日系企業様とは相性が良く、選考の段階からとてもスムーズです。実際にTNビザで働いている方の様子を現場に伺って拝見したことがありますが、一生懸命働いていらっしゃって、ご紹介したわれわれも非常に嬉しく感じました。TNビザの活用など、潜在的な需要があるのに知られていない情報を伝え、コンサルテーションすることも私たちの役割の1つです。

 

ー日系企業の採用の特徴は。

 (山岸)日系企業様は独自の魅力をたくさんお持ちですが、それが当たり前だと思い込み、アピールができていない場合がよくあります。例えば、勤務時間を8時〜16時半としている企業様がありましたが、通勤時の渋滞を避けるためや、お子さまの送迎時間に間に合わせるためなど従業員の要望から生まれた規定だそうです。従業員を大切にする企業姿勢を表した制度ですが、ウェブ上で勤務時間を見るだけではその成り立ちは分からず、残念ながら候補者様にも伝わりません。私たちはそうしたベネフィットや規定の背景までをくみ取って、各企業様の魅力や姿勢を候補者様にお伝えする架け橋となっています。

 

ー各エリアの魅力を教えてください。

 (堀之内)アトランタは、日本の福岡と似た気候です。春は桜、秋は紅葉と日本人には過ごしやすい気候だと思います。生活コストは比較的安く、地域によって多少差はありますが、日系の方が多く住む北部エリアは治安も良く、アジア系スーパーマーケットや日本食レストランもあります。もともと韓国系の方が多い地域ですので、アジアの文化や食事が浸透しており、生活面で困ることはほとんどないと思います。また、学区の評価も高く教育面でも安心です。
(山岸)ダラスはQOLが全米で一番高いエリアといわれています。テキサス州全体としては、個人への州所得税がないというメリットがあります。手取り賃金が他州と比べて高く、家賃や光熱費などの生活費が安いため、非常に住みやすい場所です。例えばフリスコという町は、生活費が安いうえに安全で教育水準が高いのが特徴。どの公立学校も優秀で子育て世代からの注目度が高く、アメリカ全土からの流入が増えています。日本語でのサービスも整っており、活気のある成長著しいエリアです。その他、テネシー州も同じく州所得税がなく、特にナッシュビル近辺は学区も良くおすすめです。アメリカ各地はもちろん、アジアや欧州からの移住も多いため、多様性がありリベラルな人々が多く暮らしやすい街ですね。

 

ー現在のアメリカの人材市場は。

 (山岸)コロナ禍を経た2022年は、少しでも給与が高い企業へと人が移動し非常に流動性の高い年でしたが、短期的、衝動的な転職も多かったように思います。しかし23年に入り、大手IT企業の大規模レイオフなどを経て市場の不透明感がアメリカ全体に流れたことで、人々が慎重になり、安易な転職が減り定着率が上がりました。その分転職の全体数は減少していますが、候補者様が将来を考えた前向きな転職活動を行うようになったこと、また企業様も5年先10年先を見据えた人材募集を行うようになったことで、質の高い転職が多かった年だと感じました。24年以降、今ある将来性の高いポジションに加えて、日本からの新規企業様の進出も予定されており、明るい未来に向けての転職が増えるように感じます。
(堀之内)日英バイリンガル人材のニーズは非常に多く、今後も伸びが予想されます。焦らず時間をかけて良い人材・良いポジションを得ることができる時期になっているように思われます。転職を考えている方は、まずは私たちのような人材紹介の会社にご相談ください。「今の会社に不満はないけれど、将来こうなりたい、こんなことがしたい」など、ご自身の思い描くキャリアを事前にお話しいただくことで、ふさわしいタイミングでふさわしいポジションをご提案できる機会が増えます。

拠点の枠を超えてサポートしあうという社風の通り、和やかな雰囲気で話をする山岸氏と堀之内氏


ー今後の展望は。

 (堀之内)アトランタの拠点は23年にスタートしたばかりですので、まずは多くの人にお会いし会話を増やすことで地域に密着すること。ノースカロライナを含む管轄5州に私たちの存在を知ってもらい、何かあれば「クイックUSAに!」と声をかけてもらえるようになることです。また、TNビザの情報をもっと広めてメキシコの優秀な人材と企業様とをつなぎ、アメリカ全体に紹介できるようになりたいですね。ダラスとアトランタは、アメリカとメキシコをつなぐ要所です。国や州をまたいで、皆がハッピーになれるようにしたいですね。

 

ー会社としてのミッションは。

 (山岸)「日本人コミュニティーを豊かにする」ことがわれわれの使命だと考えています。日本人、日系企業様だけでなく、日本と関わる米系企業の方、日本語を勉強する学生など日本に関心を持つすべての方々のサポートができたらいいなと思っています。現状、具体的には、各地で行われているキャリアイベントなどのボランティアやサポートなどを行っています。日本に興味を持ち日本に好意を持ってくださる方を増やして、日系コミュニティーを住み良く活発にすることが私たちの事業にとっても、非常に重要だと考えています。

Interviewer: Ai Kukita
Photographer: Masaki Hori
2023年12月14日取材

▼本誌掲載
アトランタ・テネシー・アラバマ・テキサス便利帳 Vol.20