【アメリカで活躍する日本企業インタビュー】TOTO USA., Inc. 副社長 山村 徹

日本ではトイレ、洗面器などの衛生陶器において市場シェア第1位のTOTO。同社ブランドのウォシュレットを、アメリカでも和食店や5ツ星ホテルなどで見かけるようになった。
日本生まれの高い技術を誇る各種水まわり商品の販売を全米でどのように広げているのか、山村徹副社長に話を聞くため、ニューヨークのTOTOオフィス兼ショールームを訪ねた。

日本発の技術でアメリカにより快適なトイレ文化を

TOTOの沿革を教えてください。

TOTOは東洋陶器株式会社という名で1917年に創業し、2017年でちょうど100周年を迎えました。
我が社はトイレから始まりシャワーや蛇口、ユニットバスなど水まわりの製品に焦点を絞って拡大してきました。
TOTO U.S.A., Inc. が創業したのは1989年のことで、(2017年)現在世界18ヵ国32都市に海外展開しています。

アメリカの本社所在地はどこですか。

本社はジョージア州アトランタに構えています。1991年に会社設立、その2年後には製造工場が完成しました。
現在北米の全従業員は600名ほどで、その約7割が製造部門で働くスタッフです。

アメリカでの販売商品を教えてください。

トイレなどの衛生陶器をはじめウォシュレット、シャワーや蛇口、浴槽などを販売しています。
総売上の5割以上を占めるのが衛生陶器です。ウォシュレットは総売上の約2割で、近年我が社が最も力を入れており、実際に販売数も伸びている商品です。

アメリカ国内外での競合はありますか。

トイレやシャワーに関しては、アメリカ並びにヨーロッパのブランドと競合しています。
多くの競合メーカーが、ウォシュレットのような、いわゆる温水洗浄便座を販売するようになりました。さらに新興メーカーの類似商品も増えてきました。
TOTOは1980年からウォシュレットを製造し続け、お客様の使い心地を想いながら改良に改良を重ねてきましたので、耐久性や快適性において、他社には追随できないという自負があります。

センサーで流れるトイレは近年アメリカでも多く見かけるようになりましたが、TOTOとしての取り組みを教えてください。

おもに空港や店舗のトイレでよく見られる商品ですね。センサー式の商品は、大便器、小便器向けのフラッシュバルブ、洗面器の自動水栓があります。我が社のこれらの製品はセンサーの反応の良さ、さらにいちばんの売りは電池も電源も必要としない自己発電機能を内蔵していることです。フラッシュバルブの中に水車があり、流す水の圧力で自己発電、蓄電します。
さらに、トイレもより少量の水で流せるよう、環境に優しい技術の開発を重ねており、利用者の多い空港や大型商業施設などでご採用いただいています。TOTOによるこの節水技術は、水不足が深刻なカリフォルニアなどでは圧倒的に高い評価を得ています。環境問題が重要視されている昨今、TOTOの強みのひとつになっています。

アメリカ国内でTOTOのトイレやウォシュレットを設置しているのはおもにどこですか。

トイレは、空港や商業施設、ホテル、それに個人の住宅まで幅広くご採用いただいています。
ウォシュレットも、日本食レストランのほかに、ホテル、オフィスなど、利用できる場が全米中に拡大していますが、いちばんご採用いただいているのは個人の住宅です。

実際に使ったアメリカの消費者からはどのような声が聞かれますか。

トイレはきちんと流れる、故障しにくいなど、性能を高く評価いただいています。
1992年にエナジーアクト法が施行され、これがTOTOの追い風になりました。この法律は、1.6ガロン(約6リットル)の水でトイレを流さなければいけないというものです。当時さまざまなメーカーが1.6ガロントイレを発売しましたが、多くのお客様から「一回の洗浄で流れない」という不満の声が続出しました。そんななか確実に汚物を排出できるTOTOのトイレが高い評価をうけ、それ以降高い品質を誇るブランドとしてTOTOが認知され続けていると考えております。
今は1ガロン(約3.8リットル)で流すトイレまで進化しましたが、ありがたいことに、今もなおお客様から技術を高く評価いただいています。
さらに壊れにくく長持ちし、見た目も美しいというようなお褒めのお言葉もよくいただきます。
海外から北米の水まわり市場に進出した衛生陶器メーカーで生き残っている企業はほとんど存在しません。そのような厳しい状況のなかで我が社が生き残った理由は、他社が真似できない高い技術力にあると思っています。
ウォシュレットは「とにかく気持ちがいい。使ったら欲しくなった」というお言葉をよくいただきます。

ニューヨークのスピード感に慣れていくことが大切だと日々実感しています

商品を体験してもらう場でもあるショールーム。全米にどのくらいありますか。

直営のショールームはニューヨークをはじめ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴと全米に4拠点あります。ニューヨーク店は2005年にソーホーに開設し、2016年9月に現在のフラットアイアン地区に移りました。
直営以外にも私どもの商品を展示し、価値を伝えてくださる販売店ショールームが全米に数々あります。

どのようなきっかけで人びとはショールームに足を運ぶのでしょうか。

ニューヨークのショールームにいらっしゃる方の半数以上はウォシュレットを見に来られます。ほとんどの方に共通しているのは、旅行で日本を訪れた際にウォシュレットを使って良かったからとおっしゃることです。
訪れる方の半数以上が一般のお客様で、残りが設計事務所のデザイナーや水道工事の建設関係の方などです。
ウォシュレットはその名が少しずつ認知されてきていると実感していますが、まだ知らない方や使ったことがない方も多いのが実情です。海外から日本を訪れた際に、またアメリカ国内でもホテルやレストラン、ご友人宅で製品の良さを体験していただければ、今後もっと多くの方に使っていただけるようになると期待しています。

アメリカ人のトイレ観についてお聞きしたいのですが、赴任後何か感じることはありますか。

日本と比べて人びとはあまりトイレに関心やこだわりがないのかなという印象を持っていました。不動産情報誌を見ても、バスルームの写真は掲載されているのにトイレの写真はほとんど掲載されていません。
しかし実際に会話をしてみると、デザインや機能などにこだわり抜いて選んでいる方がとても多いです。我が社で最も高級なウォシュレット一体型のトイレは1万ドル以上しますが、一度に複数台購入されるリッチなお客様も珍しくありません。

日系企業として、アメリカでビジネスをする強みは何だと思いますか。

我々が販売しているのはいわゆる日本製の商品ではなく、お客様の毎日を想った、快適と清潔を追求した技術です。その技術こそが我が社のいちばんの強みです。日本で培った技術をもとに、アメリカにはなかったユニークな発想で、かつ環境に優しく、人びとの生活を快適にするものが我々の商品です。

赴任して1年半。ニューヨーク生活はいかがでしょうか。

最初は慣れなくて大変なこともありましたが、今はとても充実しています。休みの日は極力、交通機関を使わずに街歩きを楽しんでいます。
またカメラが趣味なので、歩きながら風景写真を撮ることも多いです。ニューヨークは人も食べ物も多様性があり、どこを見て歩いても飽きない街ですね。

これからニューヨーク進出を考えている人や企業にアドバイスをお願いします。

とくにニューヨークは、ビジネスの変化やスピードをダイナミックに肌で感じられる場所です。
ニューヨーカーは個人の意見がはっきりしているため、決断を下すのが非常に早いです。お客様の決断も早く、会社もそれに対応し、次々に決めていかなければいけないことが多々あるでしょう。もしニューヨークで事業をするのであれば、そのスピード感に慣れていくことが大切だと日々実感しています。

TOTOショールーム所在地
20 W. 22nd St (bet 5th & 6th Aves)
TOTO
WASHLET

TOTO USA., Inc.副社長 山村 徹
昭和41年生まれ。長崎大学経済学部経済学科を卒業し、TOTO U.S.A., Inc.が創業した1989年、TOTO株式会社に入社。20年間、日本国内の営業部門を経験後、2011年TOTOアジア・オセアニア(シンガポール)営業本部長、2012年TOTOベトナム副社長を経て、2016年4月より現職。

Interview : Kasumi Abe
Photo (Portrait) : Shinji Murakami