【アメリカで活躍する日本企業インタビュー】アビームコンサルティングアメリカ マネージング・ディレクター 渡辺 光

日本発、アジア発のグローバル・コンサルティングファームである、アビーム・コンサルティング
企業のグローバル化や経営変革をサポートする「リアル・パートナー」として、数多くのクライアントを支援している。
アメリカに進出する日本企業と現地の架け橋として発展を続けるアビームのアメリカ本社、ダラスのオフィスを訪ねた。

コンサルティングファームが提供するサービスは、モノではなく「ヒト」。だからこそ、人材の育成には力を入れています。

まずはアメリカでの業務内容について教えてください。

アビームは、北米やメキシコ、ブラジルなどの中南米に進出する日本企業のクライアントを中心に、現地で抱えるさまざまな課題を、日本人と現地人のハイブリット体制で対応するコンサルティングファームです。
言語や文化、習慣や考え方の違う土地で、製造や販売を行うことは失敗もリスクも大きい。また、海外で優れた人材を育てるには時間も費用も必要なだけに、幅広い専門性とさまざまなノウハウを併せ持つコンサルティングファームの需要は大きいです。
クライアントの課題やゴールを深く理解し、フレキシブルなオーダーメイドの提案を行なっています。

アメリカでの沿革について教えてください。

2003年にアメリカに進出、2006年にアメリカのコンサルティングファームQIS社を買収したのが現在の地盤になっています。
2015年にはアルゼンチンに本社を構えるGrupo ASSA社という中南米のコンサルティングファームと業務提携をしたことで、ブラジル、メキシコなど中南米へのサポートも強力になりました。
言語が異なる場所では、やはり現地コンサルティングファームのサポートの必要性は大きいですね。

現在アビームでは世界10の国と地域に19の拠点を構えており、アビーム・アメリカではアメリカ本社のダラスを中心に、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ブラジルにオフィスがあり、今後はメキシコにも進出予定です。

拠点をダラスにした理由は何ですか。

実は、買収したQIS社のオフィスがたまたまダラスだった、というのが理由です。先見の明があったわけではありません(笑)。
ダラスを中心に北米や中南米を飛び回っているので、今となっては利便性の良さがありがたいですね。
駐在員は基本的にダラス本社に集結させ、戦力をあまり分散させないようにしています。その方が、プロジェクトごとに最適な人材を配置できるという強みがあります。

アメリカでの社員規模と日本人社員数について教えてください。

サブコントラクターを含めた社員数は現在約100名、日本からの駐在員が16名です。
現在、アビーム全海外拠点のリーダーは、すべて日本人で統一しています。以前は現地社員のリーダーが中心でしたが、各拠点ごとの独立した経営体制をとっていると、全体としての意思決定がスムーズにいかないこともありました。「グローバル一体運営」として、日本本社とグローバル各拠点が一体となって運営することで、機能的かつ効率的に動ける。アビームの売りである、日本と同等のサービスを提供することができるというのが理由です。

また、若手社員も積極的に採用して、新しい意見をどんどん取り入れられるような環境にしていきたいと思っています。

若手社員を積極的に採用とのことですが、具体的にどのような取り組みをされていますか。

アビームでは、2016年からGTA(グローバル・トレー ニング・アサインメント)という1年間のプログラムを実施しています。これは社内公募制のグローバル研修制度で、海外のオフィスで1年間の経験が積めるというもの。30歳未満の若手の人材を対象に、海外でチャレンジしたいという希望者を募り、書類審査と面接による選考を行います。
2016年は3名、2017年は5名が選ばれ、ダラスに研修に来ました。
その土地でのビジネス感覚を掴むのはもちろん、語学研修も行なっており、語学力を養うこともできます。また研修終了後は、駐在員として海外へ赴任し、即戦力として活躍することも期待されています。若手社員のモチベーション向上にも繋がっているようですね。
コンサルティングファームが提供するサービスは、モノではなく「ヒト」。人がもつ知識や経験を売っているからこそ、人材の育成には力を入れています。

今アビームで人気のある旬なサービスについて教えてください。

ここ数年、IT業界で旬なものに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)があります。これは、データ集計・抽出・入力など、人が行っているパソコンの定型処理をロボットが代行し、効率化していくというものです。アウトソーシングに頼るのではなく、ロボットに代替することで人件費を節約し、業務改善につながります。
アビームが提供するRPAを活用した業務改革サービスが「2017年日経優秀製品サービス賞最優秀賞日経産業新聞賞」を受賞し、多くの引き合いをいたただいています。
企業のどの業務にRPAを活用するのかといった診断やツール選定、開発から導入後の運用支援、さらには技術者の育成まで一環して行っています。
アメリカに拠点を置く日系企業でも興味がある会社が多いので、今が売り時だと準備を進めているところです。

アメリカの経済は、今とても元気。世界中が改めて注目していると感じます。

苦労されたこと、難しさを感じたエピソードなどはありますか。

日本のアビームでは、お客様が絶えることはあまりありません。年間で700から800ほどのプロジェクトが存在し、クライアントを探すのに苦労をしたことがありません。
しかし、アメリカでのアビームの認知度はまだ発展途上。クライアントと契約を結ぶことが大変です。何度もクライアントのもとへ足を運び、まずはアビームについて知ってもらう。良い関係性を構築し、提案する機会を得るところからのスタートです。

そもそもアメリカ発祥のコンサルティングサービスを、日本流にアレンジして、本場アメリカで提供するというのは、ある意味大きなチャレンジです。
アメリカには大きなマーケットがありますが、その分大きなコンサルティングファームもたくさんある。生半可な覚悟で勝ち抜くことはできません。

日本にあるコンサルティングファームの多くは、欧米のビジネスモデルを踏襲する組織が多いですが、アビームでは新しいスタイルの確立を目指しています。
日本の企業が海外で事業を展開するとき、日本本社の意志を尊重しつつ、それぞれの国や地域の事情を踏まえたうえで、グローバル化を推進することを大切に考えてきたからこそ、今のアビームがあると思っています。

日系企業がアメリカで事業を行う難しさは何だと思いますか。

単純な言語の違いよりも、仕事に対する考え方、進め方が違うところから、ミスコミュニケーションが発生することです。アメリカでは助けてほしいときは助けてと言わなければならない。受け身の姿勢では誰も助けてくれません。

しかし現在、アビームの現地社員たちは、細部にまでこだわる日本企業独自のカルチャーや日本流のコミュニケーションを理解してくれています。決定までのプロセスや時間がかかることにも慣れていますし、ジョブディスクリプション以外のことはしません、という姿勢もない。
これは積極的に意思表示を繰り返し、信頼関係を構築してきたからこその成果です。

同様に、日本からの駐在社員も、その地域の作法をしっかりと理解して取り組む必要もあると感じています。日本とアメリカ両方の文化をよく理解したうえで、お互いの良いところを出し合っていけたらと考えています。

これからの展望、アメリカでの事業展開についてお聞かせください。

アメリカの経済は、今とても元気です。世界中が改めて注目していると感じます。
そして世界最大のコンサルティングマーケットのアメリカにおいて、アビームの認知度にはまだまだ成長の余地があります。アビームの今後のグローバル成長を考えると、アメリカでの規模拡大は必須なので、将来性を感じられる事業です。
日本と違い、ビジネス環境が整っていないと感じることも多いですが、その分自分たちで道を切り開くおもしろさもあります。これから大きく伸びる可能性を秘めています。

アビームの全社員数は2018年1月現在、4,600名。世界最大のマーケットであるアメリカで100人そこそこの社員規模というのには、全く満足していません。
いずれは大手コンサルティングファームを脅かす存在の規模になり、他社にはアビームがいるときは気をつけろ、というポジションでありたい。NO.1グローバルチャレンジャーになりたいと考えています。
どんな困難な状況に直面しても、最後まで責任を持って成し遂げ、成果をもたらす「リアルパートナー」として、そして日本発、アジア発のコンサルティングファームとして、グローバルのリーダーになることがアビームの使命であると考えています。

ABeam Consulting Americas Holdings Ltd.
ABeam Consulting (USA) Ltd.

Managing Director 渡辺 光

1999年にアビーム入社、製造業のクライアントを中心にコンサルティングを行い、2007年に製造業、流通業の統括としてプリンシパル(執行役員)に就任。2014年からマネージング・ディレクター としてアメリカへ駐在。日本企業のアメリカでのグローバル化、現地化を進めている。
※2018年2月インタビュー時点

Interview:Kana Kobayashi