理想のキャリアを築くためのポイント
人は人生のうち、多くの時間を仕事に費やし、仕事を通じて自己表現する。自分が望むキャリアを獲得するためにはどのようなステップを踏んでいけばよいか解説したい。
市場分析
市場が求める人材の分析を行うことが大切。
近年は、必要とされるスキルや資質が多様に変化している。型にはまった業務能力、専門知識、事務処理能力から、ユニークな創造力、戦力立案能力、ものごとを概念化して捉える状況判断能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ能力、交渉力などのヒューマンスキル(対人関係を円滑に処理する能力)が要求されるようになってきている。
自己分析
自分の能力を正しくアピールするためには、まず現在の自己価値を認識しなければならない。多くの人は根拠なしに自分を過大評価する傾向があるが、キャリアアップを成功させるためにも、きちんと自己分析を行うことは必須条件。
また、業務に関する知識やスキルがあれば人に認めてもらえると考えがちだが、そこにコミュニケーション能力が存在しなければ、実力を他人に理解してもらえないということを覚えておこう。
下記は能力をカテゴリー分けしたもの。自己分析を行い、自分がどの面に強く、またどの面に弱いか冷静に判断してみよう。
自己能力の測定
▶知識
・マーケティング、営業
・生産管理、オペレーション
・経営戦略、企画
・情報技術
・技術、研究開発
・財務、会計
▶スキル
・業務管理力
・職務遂行力
・コミュニケーション力
・指導力
・創造力
・問題発見力
・状況分析力
▶経験
・実績、成果
・ポジション、職務
・姿勢、価値観
・過程、職歴
目標設定
自分が本当にやりたいこと、つまり自分の目標と価値観を明確にすることは重要である。将来における人生設計のためにも、キャリアに対する価値観をはっきりさせたい。これは何が自分にとっていちばん大切かを見つめ直す絶好の機会でもある。
キャリアゴールを設定したら、達成するためのアクションプランを立案し、実行する。たとえば、資格取得、ビジネススクール、勉強会、ネットワークを広げるなど、自分の能力を高め、自らの市場価値を上げることが重要である。
企業が求める人材像
では、企業が求める人材とは具体的にどのようなものなのか。以下にまとめてみよう。
・前向きな人
・積極的な人
・責任感がある人
・限られた手段を有効に活用できる人
・成長業界で実績がある人
・状況判断能力がある人
・ほかの従業員に自分の「やる気」の波紋を広げ、よい影響を与えられる人
・仕事を完遂する粘り強さがある人
・業界に関する知識がある人
・自ら進んで、効率よく働くことができる人
・顧客のニーズを理解し、予測することができる人
・過去の経験ばかりに頼らず、目標を達成するために新しい方法を考案できる人
在米日系企業に限定してみると、日英バイリンガルの人材の採用にあたっては次の事項にも重点を置いている。
・目的意識を持っている(ビザサポートだけのために求職する人を企業は望んでいない)
・英語力かつ日本語力が高い
・日米での学歴がしっかりしている
・合法的に就労できる
・周囲との和を大切にし、協調性がある
英文レジュメを作成する
就職活動でまず重要なポイントは、いかにして面接までたどり着くかということ。人事担当者は毎日多数の履歴書(以下レジュメ)に目を通している。よって、どれだけ魅力的なレジュメを提出するかが最初の合否の分かれ目となる。
また、カバーレターには自分を売り込むための「願書」の役割がある。カバーレターには、①応募の動機、②その会社の求人を知ったルート、③自分のセールスポイントを簡潔にまとめ、レジュメに添える。
レジュメの書き方
- E-mailアドレスはビジネス用とプライベート用に使い分けるようにする。就職活動用にふさわしくない変わったE-mailアドレスは避けるようにする。
- 新卒の場合、一般的なObjectiveを準備するとよいが、ほかにもPosition別にObjectiveを使い分けることも大切。
- 新卒の場合、大学で取ったクラス(応募している職種と関連性のあるもの)を明記するとよい。
- 仕事内容は箇条書きにすると読みやすくなる。
- 正確な日付を記入する。
- レファレンスを用意している場合は、“Available upon request”を最後の行に入れる。
効果的な英文レジュメの作成ポイント
- レジュメは1枚で。職務経験のある場合、履歴書が2枚になってもよいが、新卒の場合は1枚にまとめるとすっきりする。ほとんどの人事担当者は2枚目まで目を通さないので、重要なことは1枚目に記載する。
- まちがいのない文章で記載する。短い慣用句を使用し、パラグラフは6行以内に収める。
- レジュメ用の書簡紙を使用。変わった形やスタイルはふさわしくない。
- 個人的な情報は、書き方によって応募者がそのポジションにより適しているかをアピールすることができるので、効果的に使いたい。応募ポジションに関係する技術や趣味などがあれば記載する方がよい(たとえば、コンピューターの知識や技術など)。年齢や婚姻状況、子どもの有無、健康状態などはレジュメに記載すべきではない。
- 過去に勤務したすべての会社の仕事内容を記載する。通常、面接担当官はいちばん最近の仕事内容に興味を持つ。ポジションによっては、関連性のある仕事内容について詳しく記載する。
企業側のレジュメの視点
▶その企業や応募しているポジションに合わせてカスタムメイドされているか。
→手当たり次第応募したように見えるのはマイナス。
▶レジュメに有効な表現例🅱が用いられているか。
→とくに米系企業あてのレジュメでは重要。
▶求職者の能力がポジションに適しているか。
▶会社を転々としていないか。
→その人の責任感や継続力の評価につながる。
▶現在勤務しているか、またしていない場合は何をしているか。
🅱レジュメに有効な表現例
・Finished job or project in 50% of the time specified
・Increased company revenue by $xxx
・Save company $xxx
・Discovered a way to improve xxxxxx and followed it through
・Excelled at problem-solving (list specifically)
・Performed in the position more efficiently and effectively by reducing costs, improving productivity, increasing revenue, and improving customer satisfaction
・Special award and recognition
・Key player in a successful project
・Self-financed 100% of education
就職活動と面接の注意点
思わぬ過ちが命取りとなる。「これだけはやってはいけない」主な項目は次の通り。
▷反応が遅い
企業や人材紹介会社への対応を素早く行う。対応が遅いと仕事も遅いのではと思われる可能性も。また、仕事に興味を持っていないと見なされることもあるので気をつけよう。
▷企業研究を怠る
事業内容や日本の親会社名、所在地、業務内容、設立年月日などは事前に調べておき、自分の経験と技能が役に立つと説明できるように準備しておく。
▷職場にそぐわない服装や髪型で面接に臨む
第一印象は非常に大切。一般的に面接には地味な服装が望ましい。原則はスーツ。意外に見落としがちなのは鞄や靴。全体的なバランスに注意すること。
▷面接に早く行き過ぎる
面接会場に早く着きすぎた場合は必ず近くで時間をつぶすこと。早ければよいということではなく、面接官の都合も考えて行動すること。面接時間の7分前くらいがよい。
▷面接に遅れる
これは論外である。少なくとも面接の7分前には到着しておきたい。万が一、交通機関の事故などで遅れる可能性が出た場合は、すぐに担当者に電話をかけ、事情を説明すること。
▷会社の受付に横柄な態度をとる
面接は会社の入り口から始まっている。ビルの下は社員が出入りをしているため、見られていることもある。たまたま面接官が通る事もあるので、タバコを吸ったり、大きな声で電話で話をするなどは避けるべき。
▷あいさつが満足にできない
面接官が日本人の場合、担当者が入室したら、立ち上がって一礼、アメリカ人の場合は立ち上がってしっかりと握手する。また、面接官に聞かれなくても自己紹介をきちんと行う。面接終了時には必ずお礼を述べ、帰宅後、お礼状“Thank you letter”を出す。
▷緊張する
緊張のあまり面接官の目を見ずに話をするのは印象が悪い。面接官が2名以上いる場合には、まんべんなく面接官とアイコンタクトを取りながら笑顔で話をすること。
▷経歴を間違える
数ヵ月でも経歴にずれがあると面接官に不信感を与えることになる。過去の経歴をしっかりと把握し、履歴書と間違いがないように話しをすること。
▷給与、残業、福利厚生ばかりを気にする
一次面接の時点で給与、残業、福利厚生についてのみの質問をすると、条件にしか興味がない候補者という印象を残してしまう。
▷話しすぎる
自分の長所や短所、セールスポイントは要約しておき、的確に答えられるように準備しておく。だらだらと長く説明をすると、場がしらけることもあるので気をつけよう。面接官がフレンドリーでも、くだけすぎるのは禁物。あくまでも面接ということを忘れずに。
▷否定的なコメントをする
現在や過去の雇用者や職探しにおいて苦労したこと、自分の経済状況や会社が行ったレイオフなどについて、否定的、消極的なコメントは控えること。あくまで面接を受けている会社に焦点を置くこと。たとえば会社を退職した理由についても「It’s not that I don’t like company XX, it’s that I want to be with a company that is on the fast track(とくにXX会社に不満がある訳ではないのですが、急成長している会社に勤務したいと考えています)」というようにポジティブに表現する。
▷言い訳をする
過去においてうまくいかなかったことを、他人や状況のせいにするコメントは避ける。自分がやってきたことや下した判断に関してはポジティブな答えを準備しておき、言い訳がましくならないように注意する。
▷質問をしない
面接で質問をしないと、面接官は仕事に興味を持っていないと見なすので、会社や仕事内容についての質問を準備しておく。質問内容についても、あらかじめウェブサイトやJob Descriptionにすでに載っているものだとリサーチをしていないと思われるので注意すること。
▷面接後の注意点
面接官から名刺をもらった場合は、面接のお礼状をE-mailで送信する。お礼状の誤字脱字はマイナスになるので、会社名や住所、面接官の名前に間違いがないように確認をすること。内容の薄いお礼状も逆効果になるのでしっかりとしたお礼状を送って印象アップを狙おう。面接終了後1日以内に送ると効果的である。
日本での就職を考えている場合
以前に比べて近年では、帰国し日本での就職を考えている人が多い。日本市場も外資系企業を中心に、アメリカの大学や大学院で学んだ専門知識、および英語力を活かせるポジション数が増加傾向にあるため、日本でのキャリアアップという選択もひとつの道として考えられる。
その際、日本とアメリカ間での就職活動を円滑に進めるために、とくに下記の点を把握しておきたい。
▷日本に戻れば、一律に給与が上昇すると期待するのは禁物。ポジションによるが、同じポジションであれば日本とアメリカとの給与はあまり差がないことを覚えておきたい。
▷PC環境の設定が必要。遠距離での就職活動となるため、対面面接の前にウェブカメラ等を使用したウェブ面接を行う場合がある。
▷アメリカ滞在中に、日本の案件を扱う人材紹介会社に相談をし、スムーズな就職活動を行う。とくに、和文履歴書や職務経歴書の用意は万全にしておくこと。
帰国前から就職活動を行うことで、早期の内定を勝ち取ろう。
【執筆】
マックス・コンサルティング・グループ
社長/名倉 学
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