【アメリカ雇用法と日米の働き方の違い】知っておきたい雇用のこと

仕事観の違いー日米のギャップー

アメリカで働くに当たり、日本とアメリカの働き方・仕事観のギャップに驚いた方も多いのではないだろうか。「組織を重視する日本人」と、「個人主義のアメリ カ 人 」に は 文 化 的 な ギ ャ ッ プ が あ る 良 く 言われる。さまざまな分野を経験させて「会社
全体を見渡せる人材を育てたい」日本企業とメリカ従業員という商慣習のギャップもある。異なる文化・社会的背景を持つ人びとが働く 職場では、与えられた仕事の捉え方、日常会 話やメールの文面、会議の仕方、フィードバッ クの仕方など、ひとつの文化で「常識」だと考 えられていたものが通用しないことも多々あ る。この記事では、日本の常識とは異なるア メリカの主な連邦雇用法を簡潔に説明したう えで、日米の働き方の違いを検討し、アメリカ で働く際に気をつけてほしい点を紹介する。

アメリカ雇用法ー日米比較も併せてー

1、統一的法規制の不在

アメリカには、日本の労働基準法のような 労働関係全般に関する統一的法規は存在し ない。したがって、各従業員の背景、置かれた状況、任された職務、そしてその他の要素( 雇 用 契 約 、組 合 と の 労 働 協 約 な ど )によって個々の雇用関係のルールを詳細に定め、双方理解・合意しておくことが推奨される。

2、随意雇用 (Employment at-will)の原則

この原則は、日本の労働法と大きく異なる。随意雇用の原則とは、雇用者・従業員のどち らからでも、いつでも、いかなる理由でも、理 由がなくても自由に雇用契約を解約できると いう原則をいう。しかし、その反面「納得でき ない、不利な雇用処置を受けた」と思う従業 員 は 、「 い つ で も 、い か な る 理 由 で も 、理 由 がなくても」提訴することが可能。その訴訟 は主に次の例外にあたるかどうかが焦点と なる。

例外①差別禁止法などの法規制

採 用 、昇 進 、解 雇 に お け る 、人 種 、皮 膚 の 色 、宗 教 、性 、ま た は 出 身 国 に よ る 差 別 の 禁 止(公民権法第7編)、年齢による差別の禁止(雇用における年齢差別禁止法)、障がいに よる差別の禁止(障がい者差別禁止法)など に違反した、と提訴することは雇用関連訴訟 の定番である。企業側は、採用の応募書類 や面接でこれらの情報は収集しないことが 重要。また、職場での会話においても、上述 要素に触れ、差別と解釈されうることになら ないよう、気をつける必要がある。

例外②③④

契約などによる解雇制限の合意(例外2) は、雇用契約に解雇を制限する条項を設ける。また、労働協約による解雇制限(例外3) は、労組が強い業界でよく見られるものであ る。パブリックポリシー法理に反する解雇(例 外4)は、違法行為をするよう会社に指示さ れ、それを拒否したことを理由に解雇された 場合などに適用される。

3、公正労働基準法 (残業代・最低賃金など)

公正労働基準法(Fair Labor Standards Act:FLSA)は、残業代や最低賃金などの従 業員の給与に関して各種規定した法律であ る。最低賃金は、連邦政府と各州政府によっ てそれぞれ定められており、最新情報は、連 邦 労 働 省(US Department of Labor)の ウェブサイトで確認できる。また、残業代に ついては、基本的に週40時間を超えた労働 時 間 に 対 し て 、時 給 の 1 .5 倍 の 以 上 の 割 増 賃 金 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い と FLSA で 定められている。 残業代適用か否かの判断は、会社側が決 めることではない(例:「固定給と決められ た従業員には適用しない」は誤解)。残業代 計算が適用される職務にいる従業員に適用 されるのはもちろん、時間給制の従業員だけ ではなく固定給(サラリー)制の従業員にも 適用される場合がある。ただし、法令に定義 される管理職、専門職または運営職で、週給 455ドル以上の従業員(このような従業員は

「 エ グ ゼ ン プ ト( E x e m p t )従 業 員 」と 呼 ば れ る)については最低賃金及び残業代は適用 されないこととなっている(注:2019 年 3 月時点では、基準となる週給を679ドルに引き 上げるルール改正が検討されている)。 FLSAに基づく未払い賃金請求の時効は2年(雇用者の意図的違反の場合は3年)で あり、未払いについて正当な理由がない場合 は、未払い賃金の2倍の賠償金の支払いが雇 用者に命じられることとなる。従業員側が勝 訴した場合、従業員側の弁護士費用も雇用者 の負担となる。このように、FLSAは労働者 側に手厚い法律となっており、違反した場合 は雇用者側にとって負担となることから、雇用 者は、FLSA改正法を遵守した給与支払いシ ステムを採用することが重要となる。

日本の働き方の違いーアメリカで働く際に気をつける点ー

もちろん、例外 はあるものの、日米の働き方の一般的な違い を意識し、適宜フォローを行うことによって、 誤解やコミュニケーション不足を最小限に抑 え、スムーズで快適な職場環境を形成するた めに起用するとよい。 たとえば、自らの専門分野を大切にするア メリカ人は、日系企業に採用されて、自分の 専門と異なる部署や担当を任された場合に 困惑することがよくあり、この点はフォローが 必要である。また、顧客への対応の速度や優 先順位は、日米の文化や考え方の違いが最も よく表れる場面であり、この違いについて話 し合い、互いに理解することが必要である。 アメリカで働く、雇用を行う際は、以上の内容 に十分気をつけ、円滑にビジネスを進めたい。

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【監修】
小島清顕
弁護士 スミス・ガンブレル & ラッセル法律事務所