【アメリカで活躍する日本企業インタビュー】サッポロ U.S.A., INC. 葛原社長

アメリカにある和食店や居酒屋ではすっかり定番となっている、サッポロビール。都市圏の米系スーパーやデリなどでも気軽に購入でき、アメリカ中にそのブランド名が着実に浸透してきている。全米でサッポロビールの販売網を広げているのがサッポロ U.S.A., INC.である。
葛原義人社長に話をうかがうため、ミッドタウンにあるニューヨーク本社を訪ねた。

自社ブランドの持つ特性やユニークさをとことん磨いて武器にしていく

サッポロU.S.A.の成り立ちから教えてください。

サッポロビールがアメリカにビールの輸出を始めたのは1964年のことです。これがサッポロU.S.A.の起源で、会社を設立したのは1984年です。
現在アメリカ国内ではニューヨークとロサンゼルスの2都市にオフィスがあり、従業員は54名、ニューヨーク本社には8名が常勤しています。

アメリカにおけるビール業界全体の売り上げなど、現状はいかがでしょうか?

アメリカにおけるビール全体の売上は、ほぼ横ばいか若干マイナスという状況です。
これまでアメリカ市場の大手3ブランド(バドワイザー、クアーズ、ミラー)をはじめとする主力だったメインストリーム系のビールの売上低下が大きく関係しています。そのほか世界的な流れとして、近年スピリッツやワインなどアルコール類の多様化が進んでいるため、消費者がビールからそのほかのアルコール飲料に移りつつあり、アメリカも例外ではありません。

多様化が進むというのは、ビールのカテゴリーでも起こっていることですか?

そうですね。ビール全体の売上は横ばいと申しましたが、そのなかでも輸入ビールの売上は順調に伸びているのが現状で、2016年の統計によると6.8%の上昇率を記録しています。
またここ10年間でクラフトビールが一気に浸透してきました。昨年における売上の上昇率は6.2%で、全米に存在する5,000社を超えるビール会社のほとんどが小規模なクラフトビール会社が占めているといわれています。

クラフトビールがこれだけ流行っていることにより、御社のような大手企業への影響はありませんか?

アメリカ市場のなかで見ればサッポロビールはまだなお売上拡大に向けたチャレンジ段階にあります。そういう意味で、弊社ではクラフトビールのもたらす我々へのマイナスの影響はとくに感じていません。
逆に、ひと昔前までの大手米系ビールしか選択肢がなかった時代から比較すると、近年消費者が「いろんなビールを試してみよう」と、選択肢を広げほかの商品にも目を向けてくださるようになったので、そのような風潮が弊社にも追い風になっていると感じています。業界全体にとってもいいことだと思います。

アメリカ市場で、サッポロビールは「プレミアム」という評価がされているように思います。

ありがとうございます。もともとアメリカに輸出し始めたのも、日本の高品質なビールをアメリカで広く紹介したいという思いからでしたので、そのような評価は光栄です。『ビアハンドブック』という業界誌の統計でも、弊社は31年以上アジア系ビールブランドの首位を保っております。アメリカ在住の日本人の方々はもとより、アメリカでより多くの方々に飲んでいただけていることに感謝しています。
近年、日本食店や日本企業の方々が品質の高いジャパンブランドを広めていますが、弊社もアメリカ市場進出以来、日本を代表するビールとして恥じないように努めてまいりました。それが実ってきたのであればうれしいです。
市場規模で見ればまだ小さいブランドですが、売上は順調に伸びているので、もっとブランドを磨いていきたいです。

アメリカにおける消費者の嗜好が多様化している風潮がサッポロビールの追い風になっていると感じています

アメリカでの販売銘柄をご説明ください。

おそらく店頭などでよく見るのは「サッポロ・プレミアム」だと思いますが、ほかにスムースでクリーン、ライトな喉越しの「サッポロ・プレミアム・ライト」、麦芽100%の「サッポロ・リサーブ」、そして2016年9月に発売したばかりの「サッポロ・プレミアム・ブラック」があります。ブラックというとスタウトのような真っ黒で濃厚なビールのイメージを持つかもしれませんが、サッポロ・プレミアム・ブラックは、ダークラガータイプで、黒麦芽のうまみを生かしたホップのほろ苦さによる豊かな味わいが楽しめます。
また弊社では、カナダにスリーマン・ブリュワリーズというグループ会社があり、ベルギータイプのビール「ユニブルー」を製造しており、アメリカ国内での「ユニブルー」の販売もしております。

2017年8月、サッポロホールディングスがアンカー・ブリューイング社を買収したということで話題になりました。どういうビール会社なのですか?

アンカー・ブリューイングは1896年にサンフランシスコで設立された醸造会社で、クラフトビールの先駆け的な存在であり、おもに西海岸で非常に高く評価されています。このような老舗ビール会社とタッグを組むことで、今後のアメリカ市場においてお互いにウィンウィンの関係をもたらし、あらゆるビジネスチャンスが広がるだろうと期待しているところです。

赴任されてからこの1年、ニューヨークの印象はいかがですか?

ニューヨークにはテレビや映画でも舞台となったランドマークが溢れています。例えばエンパイア・ステート・ビル、セントラルパーク、メトロポリタン美術館など、街を歩くと今まで写真や映像で見てきたものが実際に目の前にあって「アメリカを実感」できるところです。車のクラクションやサイレンなどの騒音も含めて「大都会のダイナミックさ」を実感することができますね(笑)。

週末はどのように過ごされていますか?

ジョギングが好きなのでセントラルパークを走っています。先日は自宅からマンハッタン南端のバッテリーパークまで2時間ほど走り、いい汗をかきました。気になる店を発見できたり、地下鉄で移動するよりいいものですよ。

普段はどのような店に行かれますか。またお気に入りのバーがあれば教えてください。

サッポロビールをお取り扱いいただいている飲食店様へのお礼も兼ねたご挨拶としての訪問が中心です。本当に多くの飲食店様にお取り扱いいただいており、大変感謝しております。これからも1軒でも多くの飲食店様にお伺いできるようにしていきたいと考えています。
また、ニューヨークに来てまだ1年ですので、情報誌に掲載されているような話題店にも、たまには勉強のために行ってみることもあります。お気に入りのバーのようなものはまだありませんが、是非そのようなお店もこれから探していきたいですね。

最後に、アメリカ進出を考えている日本企業やビジネスピープルに対してメッセージをお願いします。

アメリカはとにかく広い市場ですので、その分競合他社も多いです。
サッポログループではよく「ブランドを磨く」という言葉で表現しますが、自社ブランドの持つ特性やユニークさをとことん磨いて武器にしていくことが大切なのではないでしょうか。ブランドを磨いてクオリティーを磨いてその個性をアピールしていくことが、お客様に愛され続ける秘訣であると思います。

サッポロ U.S.A., INC. 社長 葛原義人
昭和40年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業し、1989年サッポロビール(現サッポロホールディングス)に入社。同社中四国本部マーケティング部長、ワイン洋酒部企画担当グループリーダーなどを経て、2015年サッポロホールディングス欧州担当グループリーダーとなり、2016年1月ロンドン駐在員事務所長に就任、ロンドン事務所を立ち上げた。2016年10月より現職。

Interview : Kasumi Abe
Photo (Portrait) : Shinji Murakami