アメリカの高校とビザ


【執筆】
マイケル・ダン法律事務所
マイケル・ダン弁護士

駐在員家庭にとって急きょ帰任を告げられる可能性があることは、常に大きな心配の種である。子どもが高校生ともなると、高校卒業資格、大学受験、大学進学など、子どもの将来に関わる問題を限られた時間で決断しなければならない。
起こり得る将来の事態に備え、具体的な相談例とともに説明する。

Q. 急な帰任辞令で3ヵ月以内に日本へ帰国することになりました。子どもが在留してアメリカの高校を卒業するには、どのような選択肢がありますか?

相談者・・・駐在歴:4年3ヵ月、家族構成:父・母・長男(15歳、ハイスクール9年生)、現在のビザの種類:E-2ビザ

A1. ボーディングスクール(寮のあるプライベートスクール)

子どものみ在留する場合、ビザ、生活の面で最も容易な選択肢です。学校からF-1(学生ビザ)申請に必要な書類I-20が発行され、卒業できる年度までの在留資格がまず問題なく得られます。東海岸は教育水準の高い学校が多く、選択肢も多いです。
反面、TOEFL、SSATもしくはISEEのテストスコア、学校からの推薦状、本人・保護者の面接予約など、準備にかなりの時間を要するのが難点。多くの学校の願書締め切りは1月中旬ごろまでで、上級学年になるほど入学枠は狭まります。平均して年間4~6万ドルと高額の学費(寮費含む)など、経済面も考慮に入れる必要があります。
※学費援助プログラムのある学校もあり

A2. 私立高校

ビザの面での容易さはボーディングスクールと同様です。この場合も十分な準備期間は必要ですが、学費は約1~6万ドルとさまざまで、学校数、入学時期など、ボーディングスクールより選択肢が増えます。
ただし、子どものみF-1ビザで在留する場合、ホストファミリー探しが必要となります。
母親も在留する場合は、子どものF-1ビザによるF-2ビザ(同伴家族)の申請は認められないため、母親が新たにその他の非移民ビザ(F-1、H1-Bなど)を申請する必要があります。

A3. 公立高校

教育水準が高く授業料がかからないという理由で、郊外の公立高校を選択する駐在員家庭は多いですが、子どものみ在留する場合、公立高校がいちばん難しい選択肢となります。なぜならビザの問題にくわえ、通学規定により決められた居住証明(Residency Requirement)の条件を満たすため、裁判所で認められた学区内に居住している法的保護者(Legal Guardian)を見つける必要があるからです。通常ホストファミリーだけでは不十分。
なお、1年以内に卒業見込みのある場合は居住証明なしでも無料で通学が認められる学校もあります。
そのほか、有料で学区外からの通学が可能なこともあるので確認を。

このほか、J-1とF-1ビザなどの特例もあります。

J-1ビザ(交換留学ビザ)

J-1ビザを認める学校は比較的多く、法的保護者でなくても居住区内ホストファミリーで通学が認められます。しかし海外からの交換留学生を対象としている点、F-1ビザの取得歴のない学生を対象としている点には注意が必要です。
授業料は無料ですが、1学年度のみの在留資格です。

J-1を認める学校例

ウエストチェスター:Ardsley High School、Edgemont High School
ロングアイランド:Syosset High School、Plainview-Old Bethpage JFK High School
ニュージャージー:Ridgewood High School、Paramus High School
コネティカット:Darien High School、Greenwich High School
※マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスでは原則認めていない

F-1ビザ(学生ビザ)

数は少ないですが、I-20を発行する学校を選べばF-1ビザを申請することも可能です。しかしF-1ビザを取得できたとしても、公立高校で在留できるのは1年間のみ。
また、ニューヨーク近郊の公立高校の場合、年間約1万8,000ドル~3万ドルの授業料を納める必要があります。

F-1を認める学校例(現在は、ウエストチェスターのみ)

Edgemont High School、Horace Greeley High School


以上、非移民ビザを前提に説明しましたが、今回の相談者のように保護者のいずれかがEもしくはLビザ保持者の場合、一定の条件を満たせば家族も一緒に永住権が取得できる可能性もあります。
子どもの将来を考え、就学就労が自由でアメリカの大学の奨学金対象になる永住権への切り替えを希望する場合は、早めの準備をおすすめします。

学校選びの参考ウェブサイト

NICHE
全米の公立・私立学校を、種類・地域・目的別に検索できる

TABS
全米のボーディングスクールの情報、募集要項が確認でき、カタログ請求もできる

リロ・リダック
子どものいる赴任家族向けの、学校情報に詳しい日本語のウェブサイト