アメリカの確定申告 タックスリターン


【執筆】
田中会計事務所
公認会計士(米国・日本)/田中 力

ほとんどの方に申告義務

アメリカには、日本のように会社で行われる年末調整で完結する制度がなく、所得を得たほとんどの人が確定申告書を申告する必要がある。
英語では、申告書のことを“Income Tax Return”や、連邦の用紙の番号から、“1040(Ten Forty)”という。
確定申告は連邦、州、地方などの所得税を管轄する税務当局ごとに行わなければならず、働いている場所や住んでいる場所などで地方所得税の申告先が決まるため、注意が必要となる。
連邦や州は、所得額が多くなればなるほど税率が上がる累進課税で、地方は場所にもよるが一律の税率となっていることが多いようだ。
暦年(元旦から大晦日まで)の申告を概ね4月15日までに申告すると考えるとよい。日本は3月15日が期限なので、日本よりも1ヵ月余裕があるということになる。

所得税の払い方

税金を普通に納める方法には、源泉徴収、予定納税、確定納税の主に3つが挙げられる。

「源泉徴収」は、給与の支払いなどのように、支払う側が支払う前に天引きをし、代わりに払っておいてくれる制度で、受け取る側は何もしなくてもよいので便利である。

「予定納税」は、本人が自ら税務当局に所定の税金を払う制度で、各税務当局は、確定納税期限よりも前に少しずつ納めるよう要求をしている。その背景には、所得を得るにしたがって税金を納付せよ、という決まりがあるため。確定納税期限ギリギリまで税金を払わずにいると、場合によっては、予定納税遅延ペナルティーという金利が課せられることがある。連邦の予定納税の支払いの基本的なタイミングは、4月15日、6月15日、9月15日、翌年1月15日となっている。

そして最後の支払い方法は「確定納税」。確定申告書で最終的な税額が計算され、納付すべき金額が決まったら、その最終納税額を支払う方法である。小切手や場合によってはクレジットカードでの支払いが可能となっている。

所得の申告だけではない!

米国財務省は、国外金融資産の報告をアメリカ居住者などに要求している。日本の銀行口座を所持している方は、よほど預金残高が乏しい場合を除き、4月15日までに報告をしなければならないルールになっているのである。この要求は、マネーロンダリングなどの取り引きをモニターするためとされているが、結果的にアメリカ人によるスイスの口座の利息・配当所得などの未申告といった悪質なケースによる多額のペナルティーの徴収に発展している。
必要情報は、銀行名、銀行所在地、支店・口座番号、年間最高残高などであり、赴任前や日本に帰国した際、オンラインバンキングをセットアップしたり、通帳記入を依頼するなどの準備が必要になる。
また、自分が過半数の所有権を有する会社などが持つ国外金融資産も報告の対象となっている。
つまり、本人のコントロールの利く国外金融資産を報告するということである。

この報告は、“FinCen114”や、“FBAR”と呼ばれる。規定上、この報告書を提出しないとかなりのペナルティーが課されることになっている。
さらに、FinCen114と同様の情報を確定申告上も報告する。これは、国外金融資産についての配当・利息などの申告を勧めようとしたものと思われる。

この記事を見て、今まで報告をしていなかったという方がいる場合、過去に遡ってまとめて低廉のペナルティーを払い、自己申告をすることで、違法性を回避する方法もある。いわば、過去6年間にわたって「禊(みそぎ)」をするという制度である。

ソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SS番号)の有無は?

日本からアメリカに来られた方のほとんどがソーシャル・セキュリティー・ナンバーを持っている。しかし、駐在員の奥様やお子様のなかには、場合によってはソーシャル・セキュリティー・ナンバーの申請ができない方もいるはずだ。その場合は、納税者番号(ITIN)を税務当局に申請することができる。単身赴任者の奥様(日本在住)も申請することが可能だ。
納税者番号を取得するメリットは、奥様も申告書で報告できることになり、夫婦合算申告で低い税率の適用などを受けたり、お子様を被扶養者として加えることで標準所得控除や税額控除を受け、かなりの額の節税ができることである。
ITINを申請する方は必ず、申請期間を含む有効期限が十分にあるパスポートが必要となる。アメリカにいる方は、在米の日本大使館・総領事館でCertified Copy of Passportを入手することからはじめる。日本にいる奥様は、日本にある米国大使館・総領事館に予約を取り、入手することとなる。通常ITINの申請(Form W-7)はCertified Copy of Passportや確定申告書とともに書面で行う。数週間後、ITINレターの通知があるので、受け取った通知は大切に保管を。
もし、昔ITINをもらってしばらく使わなかったという方がいたら、その番号は失効しているかもしれず、再申請の必要があるかもしれない。

あなたは、居住者?非居住者?

あなたがアメリカの居住者か非居住者かは、重要事項である。
居住者は全世界所得を申告しなければならないが、非居住者は米国源泉所得のみを申告することとなる。しかし非居住者は、米国源泉所得に限定できる反面、税率が高め。居住者なら、標準所得控除が認められたり、夫婦合算が認められたり、税率が低くなるなどのメリットがある。

居住者の定義は、有効なグリーンカードを所持しているか、アメリカの過去3年の滞在期間が相当の日数に及んでいるかのどちらかの判定により認定される。
非居住者とは、居住者以外の方を指す。

下記の「居住者・非居住者の決定手順」は、大まかな判断手順を説明したもの。複雑なケースは専門家に任せることをおすすめする。

確定申告に必要なものは?

  1. 居住者と非居住者の判定
  2.  

  3. 必要書類(参考例)
  4. ▷W-2 Form(源泉徴収票)
    ▷Form 1099-INT(利息収入)
    ▷Form 1099-DIV(配当収入)などの支払調書
    ▷保険でカバーされなかった自己負担分の医療費の明細
    ▷賃貸所得、株式売買等所得の証拠資料
    ▷日本の確定申告書・銀行通帳コピーなど

  5. 控除項目を選ぶ
  6.  所得から控除できる項目を個々に列挙する項目別控除と、個々には列挙せず、申告者の区分(独身、既婚、老齢者など)などで認められる額で済ませる標準控除の2種類がある。非居住者や夫婦別申告では項目別控除だけが認められているが、そのほかの申告形態は、どちらか有利な控除額を選択できる。

    主な項目別控除は次の通り。
    ▶医療費
    医師による健康診断、治療、入院、手術、処方箋による薬品など(一定額以上)

    ▶税金 
    市・州の所得税、アメリカ国内外の固定資産税など

    ▶支払利息
    住宅ローンの利息、投資目的の借入金に対する利息など

    ▶寄付金
    教会、学校、病院、文化・教育団体などへの寄付

    ▶災害・盗難による損失
    洪水、ハリケーン、トルネード、火事、地震などの災害や盗難による損失(一定額以上)

    ▶勤務関係の諸経費
    会社負担外の出張費用、通信費、コンピューター、専門雑誌・業界誌の購読料、文房具、仕事用のユニフォーム、勤務関係教育費など(一定額以上)
    ※交際費はその内容に則して所得控除可能額が異なる

申告期限内に提出しよう

連邦への提出期限は、原則4月15日と考えた方がよい。非居住者のなかには6月15日の期限の場合もあるが、4月15日までに申告を終わらせるようにすると安全である。
また、確定納税額はその申告期限までに納付をしなければならない。延長申請をして申告期限を延ばす方法もあるが、納付期限は延長できない。

申告関係書類の保管について

申告のための書類やデータは、税務調査などのリスクのために保管するようにしよう。連邦は一般的に申告書を提出した日と確定の税金を最後に払った日のいずれか遅い日から3年で時効となる。十分余裕をもって保管期間を考えてほしい。

〈おことわり〉
本文は、便利帳の様式に則り「で・ある」調にて執筆しております。ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

用語ミニ解説

予定納税 Prepaid Income Tax
個人事業主や雇用主に課せられる納税方法。企業に務めている方は、基本的に予定納税の必要はない。雇用主は、源泉徴収という形で当局に支払いを行う。

国外金融資産 Foreign Financial Assets
アメリカでは、国外にある報告対象資産の年間合計最高残高が一定を超える場合、確定申告時に開示・報告義務が発生する。対象資産は、預貯金、社内預金、住宅積立や年金積立金など。

標準所得控除 Standard Deduction
アメリカの税控除には、標準所得控除と項目別控除がある。標準所得控除は、申告者の家族構成により一定額の控除が認められ、具体的な経費項目を提示する必要がない。